米国による「グリーンランド領有問題」は、外交上のリスクにとどまらず、金融マーケットにおけるリスク要因として注目を集めています。米金利が上昇する局面でもドル買いが進まず、むしろ米国資産全体を売る動きが意識され、急激にドル安へ振れる場面もありました。ドル円は足もとで落ち着きを取り戻しつつありますが、今後も神経質な上下を繰り返す可能性は残されたままです。マーケットは米欧対立の深刻度を見極めようとしており、警戒感が拭えない状況です。
米金利上昇も米国資産売り意識でドル安
トランプ米大統領は17日、グリーンランドを巡って欧州8カ国に追加関税を課すと発表しました。週明けの東京マーケットではリスク回避の動きが先行し、ドル円は一時157.43円まで下落しました(図表参照)。
動きはいったん落ち着いたものの、19日のキング牧師生誕日に伴う米休場明けとなった20日の欧州入りにかけ、ドル円は158.60円まで戻りを試したところから、前日安値に迫る157.48円へ大きく押し返される不安定な振れに見舞われました。
足もとのマーケットの特徴は、米金利が上昇しているにもかかわらず、ドルが買われなかった点にあります。通常であれば金利上昇はドル高要因ですが、今回は事情が異なりました。「グリーンランド領有問題」を巡る米欧関係の緊張が、米国そのものの信用リスクとして意識されたためです。
実際、20日のNY入りにかけて、デンマークの年金基金が米国債投資からの撤退を検討しているとの報道が伝わると、「米国資産売り」の反応が一気に広がりました。米国の株式、債券、通貨が同時に売られる、いわゆる「トリプル安」が進行しました。
金利だけで為替が決まるわけではないという点を、改めて印象づける事象となりました。政治リスクが高まると、「その国の資産を持つこと自体が不安」と受け止められ、金利差よりも信用不安が優先されることがあるのです。
緊張緩和期待と残る火種
もっとも、マーケットが一方的に崩れたわけではありません。米欧が歩み寄る可能性があるとの見方も浮上し、ドル円は158円を挟んだレンジで次第に動意を落ち着かせました。トランプ米大統領が武力行使に否定的な姿勢を示したことも、過度な警戒を和らげる材料となりました。
しかし、根本的な問題が解決したわけではありません。デンマーク政府は、グリーンランド取得を巡る米国の交渉要求に対し、引き続き強硬な姿勢を維持しています。このためマーケットでは、対立が再燃・激化するリスクと、外交的な打開が図られる可能性の双方を見極めきれず、不安定な値動きが続いています。
今後の金融マーケットは、グリーンランド問題が外交的に沈静化するのか、それとも新たな摩擦を生むのかに大きく左右されるでしょう。投資家にとっては、経済指標だけでなく、国際政治の動きにも目を配る局面が続きそうです。



