中国株への投資を始めてみたいけど、どんな銘柄に投資していいか分からない――。そんな場合は、香港市場を代表する株価指数であるハンセン指数の構成銘柄の中から探してみるのが基本中の基本。ハンセン指数に選ばれる銘柄の中には、世界的な大企業もあれば、個性的で魅力的な銘柄もたくさん集まっています。このシリーズでは、香港市場の主要銘柄をハンセン指数の構成銘柄の中から選んで紹介していきます。今回もBYD(比亜迪:01211/002594)の続きです。
▼参考
・意外と身近にある中国株、街中で探してみた(5) 電気自動車の王者BYD、日本で販売台数を伸ばす「夢を実現する会社」
・香港市場の主要銘柄:BYD(1) 中国電気自動車の王者、創業者・王伝福会長を支えた見返りを求めない兄夫婦の愛情
・香港市場の主要銘柄:BYD(2) 王伝福会長の決意と従兄の支援、深センで電池メーカーとして創業
・香港市場の主要銘柄:BYD(3) 電池メーカーが自動車メーカーを買収の衝撃、03年に自動車事業に参入
・香港市場の主要銘柄:BYD(4) 第一号車は大失敗、トヨタ「カローラ」のコピー車で急成長
・中国株の銘柄選び 中国株ビギナーがまず選ぶのはこれ!ハンセン指数は基本中の基本
トヨタの背中を追って垂直統合の生産モデルを導入
自動車メーカーとしての初期のBYDは、自動車のデザインから技術、会社の経営モデルまでさまざまなことを、王伝福会長が尊敬しているというトヨタから学びました。垂直統合の生産モデルもその一つです。原材料の調達から部品の製造・加工、組み立て、販売、アフターサービスまで、自動車の製造・販売にかかわるすべての工程を自社が担ったのです。コスト削減が最大の目的ではありましたが、デザインを他社に任せて失敗した「316計画」の苦い経験も影響したようです。
こんなエピソードもあります。ドイツの自動車部品大手ボッシュからブレーキシステムを購入しようとしたところ2000元と強気の提示を受けます。値段が高過ぎます。困ったBYDは仕方なく自社で作ってみます。するとボッシュからの提示額が800元に下がったというのです。部品を他社に頼るだけでは製造コストは下げられない。交渉材料を持つことの重要性を痛感させられる出来事でした。
戦略目標をバッテリー車に転換、25年に世界1位の目標を掲げる
2007年8月9日、一つの大きな戦略を打ち出します。その戦略とは、自社のバッテリー生産チェーンを基盤にハイブリット車や純電気自動車の分野に進出することでした。そして、2つの目標も掲げます。2015年に自動車で国内販売1位、2025年に世界1位を目指すというものです。BYDが打ち出した目標に対する市場の反応は冷ややかでした。この時点でBYDは国内19位です。それが国内1位や世界1位を語るのですから当然です。

マンガー氏が「エジソンとウェルチを合わせたような人物」と評価
しかし、ここにBYDの王伝福会長を高く評価する人物が現れます。米国の投資会社バークシャー・ハサウェイの副会長を務め、バフェットの右腕と呼ばれたチャーリー・マンガー氏です。王伝福氏について「彼は(発明王である)エジソンと(GEの伝説的経営者である)ウェルチを合わせたような人物だ。エジソンのように技術的な問題を解決し、ウェルチのように物事を成し遂げることができる。私は今までこのような人物を見たことがない」と語っています。最大限の賛辞です。

投資の神様バフェット氏がBYDに出資
投資の神様と称されるバフェット氏もマンガー氏がそこまで評価する王伝福会長に興味を持ちます。2008年7月、バフェット氏は傘下の電力会社ミッドアメリカン・エナジーの会長デービッド・ソコル氏を中国に派遣します。ソコル氏は当時バフェット氏の有力な後継者と目されていた人物です。信頼するソコル氏にBYDを視察させたのです。
ソコル氏は4日間にわたってBYDを視察。実際に工場も見学し、王伝福会長をはじめ経営陣からも話を聞きます。ソコル氏はBYDの研究開発能力と製品化能力の高さに衝撃を受けたと言います。
ソコル氏の帰国後、バフェット氏はBYDへの出資を決断。王伝福会長に5億米ドルの投資をしたいと伝えます。経営陣はバフェット氏からの出資の申し出に喜びます。しかし、5億米ドルとなると当時のBYDの発行済み株式の20%に相当します。もちろん経営陣の支配力が弱まってしまいます。王伝福会長は悩んだ末にこの出資を断ります。
断られるとは思ってもいなかったバフェット氏は驚きます。しかし、出資を断るのは自社の経営への強い自信の表れでもあります。BYDへの確信を深めたバフェット氏も簡単には引き下がりません。
そして交渉の末、2カ月後の2008年9月、バフェット氏傘下の米ミッドアメリカン・エナジー社を通じて2億2300万米ドルを出資することで合意したのです。バフェット氏は当時の株価8HKドルでBYDの株式2億2500万株を取得します。出資比率は当初提示のほぼ半分に当たる10%です。こうしてバフェット氏によるBYDへの出資が実現したのです。
バフェット氏による中国企業への投資は、ペトロチャイナ(中国石油天然気:00857/601857)に続く2社目。世界の投資家の目がBYDに向いた瞬間でした。
バフェット氏がBYDに出資 出所:BYDホームページ
次回もBYDの続きです。お楽しみに。
まとめ:今回紹介した香港市場の主要銘柄
今回紹介した銘柄は、主に自動車と電池を手掛けるBYD(01211/002594)で、香港証券取引所メインボードと深セン証券取引所A株市場に重複上場しています。
【中国の自動車・電池メーカー】電池を祖業とし、03年に自動車事業に参入。22年3月にガソリン車の生産から撤退し、純電気自動車とプラグインハイブリッド車に完全シフトした。自社開発のリン酸鉄リチウム系の「ブレードバッテリー」は米テスラなどにも供給。都市軌道交通事業も手掛ける。子会社のBYDエレクトロニック(00285)を通じてスマホや電子機器の受託製造サービスも展開。米著名投資家のバフェット氏の出資で脚光を浴びた。




