東野幸利のチャート道場

【東野幸利のチャート道場~住友不動産】

先週末の日経平均の下落幅は4ケタに拡大

先週末12日の日経平均の下落幅は4ケタに拡大し、5日移動平均線(41521円 7/12)を下回るほぼ安値引けに近い動きとなりました。前日の米国市場で市場予想を下回る6月消費者物価指数(CPI)を受けて10年債利回りが大きく低下。これまで相場上昇をけん引してきたグロース株が材料出尽くしで大幅安となったほか、金利低下を受けてドル円相場が円高・ドル安に振れる展開となり、主力大型株も総じてさえない展開となりました。


東証プライム市場の売買代金は概算で5兆2,300億円。値上がり銘柄数1020に対して、値下がり銘柄数は573と、指数が大きく下げた割には値上がり数の方が多かったのが特徴的でした。業種別では不動産、水産・農林、サービスなどが上昇した一方、保険、電気機器、海運などが下落しました。


売買代金上位では、ディスコ(6146)や東京エレクトロン(8035)など半導体株が軒並み大幅安。米国の長期金利が大きく低下したことから、三菱UFJFG(8306)などの銀行株や東京海上HD(8766)、第一生命HD(8750)などの保険株が軟調。円高進行を受けてスズキ(7269)やSUBARU(7270)など自動車株も売りに押されました。

一方、米国で住宅株が買われたことを手がかりに、米住宅販売に強みを持つ住友林業(1911)が大幅上昇。金利低下の恩恵を受けるとの思惑から三井不動産(8801)や住友不動産(8730)など不動産株が軒並み高となりました。


週足でみる住友不動産の株価推移

図表は、住友不動産(8830)の2019年11月ごろからの週足のローソク足に加え、13週・26週・52週移動平均線を挿入したチャートです。



大局的な動きでは、新型コロナショック後の安値となった2020年3月安値(2,171.5円)を起点とした綺麗な「N字」波動による上昇相場が確認できます。

2023年6月高値(4,190円)では2021年6月高値(4,222円)を超えることができず、一時的に26週移動平均線まで押し戻される場面がありましたが、同線をサポートに反転上昇が再開し、2021年6月高値を超えたことで「N字」波動を初めて確認したことになるわけです。


日本発で有名な相場分析手法に、一目均衡表という体系的な分析手法があります。その理論の中には、「N字」波動を確認したあとの基本的な4つの値幅観測法が存在します。この値幅観測法とは、過去に生じた値幅を用いて将来発生しうる均衡点(目標値)を探るものです。4つの値幅観測法というのは、N計算値、V計算値、E計算値、NT計算値です。その中でもE計算値は最も高い均衡点(目標値)が算出される計算方法です。


例えば、住友不動産の場合、2020年3月安値から2021年6月高値までの上昇幅は2,050.5円でした。この上昇幅を2021年6月高値から上値に当てはめた水準6,272.5円がE計算値となります。E計算値は全持ち株を利食う水準ともいわれているぐらい重要な水準です。

実際の株価は今年4月に6,062円まで上昇しました。計算値通りにピッタリと高値をつけることもありますが、概ね計算値の前後になるケースが多く見極めが難しくなります。


今年の4月高値から大きな反落を強いられています。2023年3月安値からの上昇相場における短期的な調整は26週移動平均線までにとどまってきましたが、足元の調整は同線をあっさり下回っていることがうかがえます。


調整が深くなったことで、13週移動平均線が上向きから下向きに明らかに変化しています。つまり、株価は52週移動平均線の手前から自律反発の局面にありますが、13週移動平均線で目先的には頭打ちになることが予想できます。


13週移動平均線を目先的に上回ることができない場合でも、直近6月安値(4,571円)を下回ることなく横ばいで推移できれば、いずれ13週移動平均線が再び上向きになるタイミングなどで4月高値を目指すような動きに進展していくシナリオは想定できます。

一方、13週移動平均線の下向きはしばらく続くことが予想され、その間に直近6月安値を下回ることになる場合、52週移動平均線が次の下値メドとなり、それも下回ると2021年6月高値(4,222円)を起点とした概ね水平線に近い下値支持線まで下落余地は拡大することになるでしょう。


高値からの初動の調整幅が大きくなればなるほど、それまでのトレンドの終焉を示唆しています。E計算値に近い水準まで上昇したことで、高値からの調整幅が以前に比べて大きくなったといえるかもしれません。


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日本株情報部 チーフストラテジスト

東野 幸利

証券会社情報部、大手信託銀行トレーダー、大手銀行などの勤務を経て2006年に入社。 マーケット分析やデリバティブ市場のコンテンツを担当。世界主要指数や個別株を対象にテクニカル・ストラテジーの提案。 日経CNBC「夜エクスプレス」、日経チャンネル「マーケッツのツボ」、テレビ東京「モーニングサテライト」、ラジオ日経(金曜後場マーケットプレス)など 会社四季報プロ500、ダイヤモンド・ザイ、日経マネー、株主手帳など 金融機関向けコラム「相場一点喜怒哀楽」 IFTA国際検定テクニカルアナリスト(MFTA) 日本テクニカルアナリスト協会理事 CFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務) DCアドバイザー(確定拠出型年金教育・普及協会)

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