イラン情勢に振り回されるも、円は弱いまま
2月末に米・イスラエルがイラン攻撃を実施してから中東情勢に振り回される相場が続いています。米・イランが2週間の停戦に合意し、中東リスクをめぐる過度な緊張感は緩んだが、市場が想定していた戦争激化やホルムズ海峡を通じたエネルギー供給のさらなる混乱といった最悪の事態はひとまず回避されたことに過ぎません。これから戦争終結に向けて交渉に入るが、両国の停戦条件に隔たりは大きく楽観視することはできません。終戦に迎えるかどうかはトランプ米大統領の「TACO(トランプはいつも尻込みして退く)」次第になるでしょう。
イラン戦争による「有事のドル買い」で、ドル円は2月末の155円半ばから一時160円半ばまで上昇しました。160円超えでは日本当局の円買い介入警戒感の高まりが上値を抑える要因となりますが、ドル円の先高観が根強く依然として押し目買いが旺盛です。戦争終結の期待感が高まればドル買いが緩み、上昇圧力は一つ解消されることになりますが、円安基調は変わっておらず、市場は引き続きドル円の一段高を警戒する声が少なくありません。最近はドル主役の戦争相場となり、クロス円の方向感が鈍っているものの、ほとんどの主要通貨は対円で高値圏を維持しています。つまり、円は弱いままです。「ドル離れ」など、ドルの評価が下がらない限り、ドル円の上昇トレンドは変わらないかも知れません。
「日本」への低評価も円安要因
円安の要因は、金利差、インフレ率、経済成長率、貿易収支、政治的安定性などいろいろあります。
円安の背景には、日本経済が抱える構造的な問題も深く関わっています。その一つが、貿易赤字の常態化です。かつては輸出大国として貿易黒字を計上してきた日本ですが、資源価格の高騰、国内生産拠点の海外移転などにより、近年は貿易赤字が続いています。貿易赤字では、海外から輸入する際に円を売って外貨を調達する必要があるため、円安が進行しやすくなります。
また、少子高齢化の進行とそれにともなう社会保障費の増加、そして長期にわたる財政赤字も、円安の後押しとなります。健全な財政運営への懸念は、海外投資家から見た日本経済への信頼感を低下させ、円の売却につながる可能性があるためです。
「インフレと通貨」で見ると、近年の米国の物価はかなり大きく上昇しているので、ドルの価値は大きく低下したと言えます。一方、日本では米国ほどは物価が上昇していませんから、円の日本国内での価値は、米国ほど低下していないのです。普通の状態であれば、円の価値はドルに対して上昇しているはずです。しかし、現実は大幅なドル高・円安になっています。つまり、日本国内だけで見れば円の価値はそれほど低下していないにもかかわらず、それが国際的に評価されなくなっているのです。
本来であれば、日本のモノやサービスが買われたり、日本への投資が行われたりする結果、為替相場は円高に振れるはずです。しかし、そうした調整が行われなくなっています。これは、国際的に「円」というより、「日本」そのものが評価されなくなっていると言わざるを得ないかも知れません。
1ドル=360円時代よりも円安
1970年のドル円は1ドル=360円でした。これだけ見ると、当時に比べて現在1ドル=150円の方が圧倒的にドル安・円高と言えますが、1970年代に比べ現在米国の物価は日本より大きく上昇しています。「購買力平価」で換算してみると、当時の1ドル=360円より、1ドル=150円という今のほうが「円安水準」とも言えます。
「購買力平価」:両国で同じものが同じ価格で買える相場を示す指標です。





