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第190回 原油高・ユーロ安

ユーロ、中東紛争次第

2月末に米・イスラエルがイラン攻撃を開始してから1カ月以上が経過しましたが、終戦の目処は立っていません。金融市場全般は神経質な動きが続いているが、中東リスクを背景に原油高と「有事のドル買い」が目立っています。

 

原油相場の上昇は石油や石油関連製品の純輸出国である米国に貿易収支の改善をもたらします。そこに基軸通貨への買い安心感も連動するかっこうで、「有事のドル買い」が鮮明になっています。

 

イラン戦争が勃発するまで、ユーロは対ドルで昨年から堅調な動きとなりました。ユーロがトランプ米大統領の関税政策などを嫌気した「ドル離れ」の受け皿になっていたことや、欧州中央銀行(ECB)の利下げサイクルの終焉と米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ継続観測を背景とした金利見通しの格差を意識した動きなどで、ユーロドルは1月に2021年6月以来のユーロ高・ドル安水準となる1.20ドル台に上昇しました。戦争が始まる2月末も1.18ドル台と高い水準を維持していたが、原油価格の急騰も重しに3月には1.14ドル前半までユーロ売り・ドルの買い戻しが進みました。

 

ユーロドル 日足チャート


多くのユーロ圏諸国は、原油や天然ガスなどのエネルギー資源を域外からの輸入に頼っており、エネルギー価格の上昇は域外への所得移転につながりやすいです。一部は企業部門が吸収し、企業収益の悪化を通じて設備投資と雇用の減少につながり、一部は消費者に価格転嫁され、家計の実質購買力の低下により消費が抑制されます。中東情勢を巡る先行き不透明感の高まりで、経済活動が手控えられる恐れもあります。紛争激化による金融環境の引き締まり、貿易活動の停滞、サプライチェーンの混乱につながれば、景気への悪影響が増幅します。ユーロが対ドルで上昇トレンドに戻せるかどうかは中東紛争次第となります。

 

財政拡大がユーロ圏の景気を支える

昨年1月に第2次トランプ米政権が発足し、関税政策で世界中を悩ませたが、ユーロ圏経済は、米国による関税引き上げ前の駆け込み輸出の反動減を乗り切り、回復基調を続けています。2025年の成長率は+1.5%と過去2年の低成長を脱し、潜在成長率並みに復帰しました。欧州復興基金からの資金拠出、観光需要、移民の流入増加、多国籍企業による経済活動などに支えられ、構造不況に陥ったドイツもインフラ投資や防衛費を中心に大規模な財政拡張に舵を切り、マイナス成長を脱しました。

 

欧州を取り巻く安全保障環境の変化を受け、今後はドイツ以外の欧州諸国による防衛費拡大も本格化します。復興基金は年末で打ち切られるが、公共投資の一巡後も資金受領に必要な構造改革の効果が景気を押し上げる可能性があります。

 

戦争の長期化懸念が高まれば、ECBは早期利上げも

欧州ではガスの在庫水準が例年に比べて低く、ホルムズ海峡の封鎖が長期化すると、ガス価格に一段の上昇圧力が及びやすいです。エネルギー価格の上昇が他の物価に波及するかどうかが、様子見姿勢を続けるECBの今後の金融政策判断の決め手となります。

 

ユーロ圏の2 月の消費者物価指数(HICP)は、食料品価格の下落をエネルギー価格の上昇が上回って 1月の前年比+1.7%から同+1.9%に加速した。コア指数も同+2.4%に上昇しました。ガソリン価格の大幅上昇を受けて、3月HICPの伸び加速が見込まれます。4月に発表されるインフレ関連指標で大幅な上昇が確認されれば、ECBの利上げ期待は一段と高まりそうです。


この連載の一覧
第190回 原油高・ユーロ安
第189回 ドル円は160円台回復、今後は?
第188回 イラン戦争、中国への影響
第187回 スイスフラン、なぜ強い
第186回 中東情勢に主要通貨の反応
第185回 経常収支の黒字は過去最大も、円安続く
第184回 中国・全人代、3月5日に開幕
第183回 ドル円、ドルの信認低下も重し
第182回 トランプ関税圧力と加ドル
第181回 円相場のカギは日本国債
第180回 2026年世界10大リスク-米調査会社
第179回 25年の中国貿易黒字、初の1兆ドル超え
第178回 金の台頭、ドルの支配に影響
第177回 人民元は堅調
第176回 FRB、来年の政策運営はなお不透明
第175回 円安、結局は再び介入との勝負か
第174回 円安、メリットとデメリット
第173回 実質為替レート 1ドル=270円
第172回 インフレと円安
第171回 予算案控え、慌ただしい英政府
第170回 トランプ氏、米中をG2と表現
第169回 ヘッジファンド資産、過去最高
第168回 通貨スワップ協定
第167回 カナダ経済は厳しい
第166回 自動売買のメリット・デメリット
第165回 FX活用の為替ヘッジ
第164回 利下げ再開、米経済は?
第163回 市場とFRB、来年以降の見通しにかい離
第162回 自民党総裁選と金融市場
第161回 英国の財政懸念
第160回 FRB理事の解任騒動
第159回 11人の次期FRB議長候補
第158回 「基調的な物価上昇率」
第157回 中国の政策金利
第156回 今年後半の米経済
第155回 日米合意、今後のドル円は?
第154回 トランプ氏、人民元の影響拡大の引き立て役になるか
第153回 香港ドル、キャリー取引が活発化
第152回 英国でもトリプル安
第151回 中東リスクに円買いではなくドル買い
第150回 悪いドル安
第149回 FX、マイルールを徹底
第148回 FX詐欺の手口
第147回 信認低下のドル、売り圧力が継続
第146回 半導体を制するものが世界を制する
第145回 米中会談、過度な期待は禁物
第144回 加ドル、米加首脳会談に注目
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第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
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第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
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第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
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第100回 円安・円高の影響
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第94回 FX、初心者に多い失敗例
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第92回 基軸通貨のドル、強い
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第90回 米長期金利とドル円
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第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
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第84回 加中銀とその金融政策
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第80回 人民元の基準値
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第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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