9月2日の東京外国為替市場では、日銀の高田創審議委員によるタカ派的な発言をきっかけにドル円は一時円買い戻しを強める場面が見られました。しかし、米国の根強いインフレ懸念や長期金利の高止まり、さらにはエネルギー価格の上昇といったドル高要因も根強く残ってします。「高田発言」による円買い戻しが本格的なトレンド転換につながるかについては慎重に見定める必要があります。
「高田発言」で利上げ加速意識
8月下旬のドル円相場は、米国の各種インフレ指標が高止まりを示したことや、ウォーシュ米連邦準備理事会(FRB)議長による積極的な金融引き締め姿勢を背景に、強含みの展開が続いていました。さらに、中東情勢の緊迫化に伴う原油価格急騰も「有事のドル買い」を誘発し、9月2日午前に一時1ドル=160.39円と約1カ月ぶりのドル高・円安水準をつけています。
こうした円安進行のなか流れを変えたのが、札幌での金融経済懇談会における「高田発言」です。高田審議委員は講演や記者会見にて、従来の半年ごとの引き締めペースにとらわれず「機動的に利上げを行う新たな局面」に入ったとの見解を表明。さらに「一定の利上げ間隔や幅にとらわれない対応が必要」とし、連続利上げの可能性にまで言及したことが市場に強いインパクトを与えました。
タカ派と受け止められた発言を受け、9月中旬の日銀決定会合での追加利上げ観測が高まり、ドル円は一時159.44円へ下振れました(図表参照)。マーケット参加者は、日銀の姿勢変化と捉えたようです。

依然として立ちはだかる円安要因
しかし、「高田発言」をきっかけとした円買い戻しの動きがそのまま中長期的な円高トレンドへ定着するかどうかは難しいところです。ドル高・円安を支える複数の構造的要因は打ち消されていません。
第1に、日米の圧倒的な金利差です。米国では長引くインフレ圧力を背景に米10年債利回りが4.8%台まで上昇しており、日銀が追加利上げに動いたとしても、両国間の絶対的な利回り差が急激に縮小するわけではありません。第2に、原油先物価格の急騰による日本の貿易収支悪化懸念や、財政悪化に対する警戒感が、根強い円売り圧力として残っています。
「高田発言」によって9月の利上げ織り込みを意識した下振れが先行したものの、相場が160円近辺まで押し戻される場面も見られるなど、上値の重さと下値の堅さが交錯する状況となっています。今後のマーケット参加者の視線は、米雇用統計をはじめとする重要指標の内容や、日米両中銀の政策決定会合がマーケットへ与える影響へと移行しており、円買い戻しの持続性を冷徹に見極める局面が続きそうです。



