日々是売買~トレードへの道

第138回「FRBに喧嘩は売るな 15年ぶり協調介入か」

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ドル円、週末の日米協調介入で157円台前半まで急落

 

今週のドル円は米連邦公開市場委員会(FOMC)をこなし、週末の日銀金融政策決定会合の結果を踏まえて今後の動き・・・と考えていたところに「意表をついた」介入で急落する展開となりました。ファンダメンタルズ的にもテクニカル的にも上サイドにブレイクし、7月23日には163.99円と1986年11月以来39年8カ月ぶりの高値を更新。今週は164円突破を伺う水準で「高止まり」する展開だったにもかかわらず、週末にいっきに円高に振れています。

 

米連邦準備理事会(FRB)は28-29日に開いたFOMCでFFレートの誘導目標を9対3の賛成多数で3.50-3.75%に据え置くことを決めたと発表。据え置きに反対したのはハマック米クリーブランド連銀総裁、カシュカリ米ミネアポリス連銀総裁、ローガン米ダラス連銀総裁の3人で、今回の会合でFF金利を0.25%引き上げることを主張。声明では「中東情勢の紛争などに起因する不確実性が高まっているものの、経済活動は堅調なペースで拡大している」「インフレ率は目標の2%に対し依然として高い水準にある。これは、エネルギーを含む一部のセクターの価格上昇を引き起こした供給ショックを部分的に反映したもの」と指摘し、「委員会は物価安定を実現する方針」と強調しています。

 

また、ウォーシュFRB議長はFOMC後の会見で「議論は協調的かつ建設的だった」「経済は目覚ましい回復力を見せている」「我々は物価の安定を実現する」と述べたほか、「今後はインフレ関連のデータを注視していく」「私自身の判断としては、今は慎重に見極めつつ検討すべき時期にある」などと発言しました。この結果を受けてマーケットでは米株式・債券・通貨が売られる「トリプル安」の様相が強まりました。市場では「FRBの金融政策運営を巡る不透明感が高まった」との声が聞かれています。

 

*Trading Viewより

 

こういったこと(特に米長期債の下落=米長期金利の上昇)も考慮されたのか、なんと週末には異例の「日米協調介入」が実施されたようです。米財務省は週末31日、円市場に介入する可能性を事前通告。「米財務省はニューヨーク連銀を通じて本日、複数の銀行に円買い介入がある可能性を伝達。各行は『今後の措置』に備えるべきだと通知した」といいます。フィナンシャルタイムズ紙(FT)によると、「ニューヨーク連銀はドルではなくユーロの準備高を切り崩して円を購入。ゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーを通じて、財務省の代わりにこれらを実行した」とのこと。

 

なお、日本政府は30日=日銀金融政策決定会合の結果公表前日の海外市場で円買い介入を実施したようです。当日22時30分頃から大規模な円買い・ドル売り注文が断続的に入ると23時30分前には一時157.98円と5月14日以来約2カ月半ぶりの安値を更新しました。市場では「1時間ほどで5円近く円高方向に振れたことから、政府・日銀による為替介入の可能性が高い」との声が聞かれていました。日銀が翌31日公表した当座預金残高の見通しによると、政府・日銀は30日夜に円買い・ドル売りの為替介入を実施し、介入規模が6兆~7兆円程度に上るとみられています。為替介入は4~5月以来約3カ月ぶり。

 

これを受けての31日です。当初は「米財務省はニューヨーク連銀を通じて本日、複数の銀行に円買い介入がある可能性を伝達」との報道が伝わったり、「ニューヨーク連銀がドル円だけでなく、ユーロ円でもレートチェックを実施」と伝わったりしたことで、「ベッセント米財務長官の強力な援護射撃」とか「これが精神的支援を超える支援か」との声が聞かれていましたが、「米当局の実弾介入」と分かるといっきに報道が過熱。週末には多くのメディアが様々な記事を配信、報じています。

 

 

 

「To Do Buy Japanese Yen(JPY) $5-10bil」

 

「日米協調介入」は2011年の東日本大震災直後以来15年ぶり。円買いでの協調介入は1998年の金融危機時以来で28年ぶりとなります。

 

1998年6月の協調介入ではドル円は介入直前の146.78円から133.69円まで13円超急落しました。ただ、米国側の限定的な参加にとどまったことなどを受けて、2カ月後の8月には147.66円まで上昇し、介入前の水準を超えています。もっとも、その後の米利下げやロシア金融危機などを受けて、結果的には円高トレンドにシフトしています。2011年の東日本大震災後の介入後も円安トレンドにシフトしていることから、協調介入後はトレンドが転換する(理由はどうあれ)と言えそうです

 

なお、ベッセント米財務長官の「To Doリスト」にはご丁寧に「日本円を50億ドルから100億ドル相当購入する」と書かれていたことが分かっています。ロイター通信が撮影した写真には、ベッセント米財務長官のメモ帳に「To Do Buy Japanese Yen(JPY) $5-10bil」と記されていました。米財務省は、メモの内容や実際に為替介入を行ったかどうかについては正式にコメントしていませんが、そもそもこんな重要なメモを記者や写真撮影係の目に付きやすい場所に置くでしょうか?これが所謂、「精神的支援を超える支援」でしょうか。

 

 

 

投機筋の円売りポジション、2年ぶり高水準

 

米商品先物取引委員会(CFTC)が31日(日本時間8月1日早朝)に発表した7月28日時点の建玉報告によると、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)の通貨先物市場で非商業部門(投機筋)の円の対ドル持ち高は16万3412枚の円売り越し(ドル円のロング)となり、前週から1万11287枚増えました。これは2024年7月以来2年ぶりの高水準となります。

 

*CFTCのデータを基にDZHフィナンシャルリサーチ作成

 

前週までは「『政府・日銀による為替介入の効果は一時的』との見方が依然として根強い中、構造的なドル高の地合いが強いなかでは、再び介入が実施されて急落する局面があっても、押し目を拾われる可能性が高い。『介入で下落したときは、絶好の買い場』と考えていました。実際、このように考えていたトレーダーは私だけではないはず。

 

ただ、今回は「日米協調介入」です。こうなると話は変わります。ウォール街の有名な相場格言に「Don't fight the Fed(FRBに逆らうな/喧嘩は売るな)」とあります。我が家の格言にも「長い物には巻かれろ」とあります。しばらくは押し目買いはやめ、今後の成り行きをしばし静観したいところです。


 

なお、週明け3日の月曜日には片山財務相が「為替介入など一連の円安是正策を説明する方針」です。介入が3営業日括りだと最後のチャンスであり、月曜早朝の介入に警戒する声が多く聞かれています。日経新聞によると、「ロンドンやNYのトレーダーも東京時間の月曜早朝から臨戦態勢で臨む」といいます。「日曜夕方から出社し、いつ介入があっても対応できるよう待機するつもりだ」とのこと。休日返上で警戒に当たるトレーダーが目立つようです。

 

日曜夕方もしくは月曜早朝から出社する方々には心から敬意を表したいと思います。もちろん、弊社の東京番の方々にも頭が下がる思いです。

 

 

 

【免責事項・注意事項】

 

本コラムは個人的見解であり、あくまで情報提供を目的としたものです。いかなる商品についても売買の勧誘・推奨を目的としたものではありません。また、コラム中のいかなる内容も将来の運用成果または投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。最終的な投資決定はお客様ご自身の判断でなさるようにお願いします。

この連載の一覧
第138回「FRBに喧嘩は売るな 15年ぶり協調介入か」
第137回「止まらない円安・ドル高 ドル円は39年8カ月ぶり高値」
ドル円、1週間の値幅は1円未満も・・・
第135回「不意打ち介入なら24時間スマホが手放せず」
第134回「ドル円、高値更新も値幅は極狭」
第133回「押し目待ちに押し目なし」
第132回「いよいよ来週は新議長のもとでのFOMCが開催」
第131回「米雇用統計上振れで株急落・ドル高 FRB利上げ観測」
第130回「介入効果!?ドル円はこう着状態に 値幅1円未満」
第129回「ドル円、介入あれば絶好の買い場!?」
第128回「今週も米イランヘッドライン相場」
第127回「ホルムズ海峡『開放』表明で原油急落・株高・円高」
第126回「投機筋の円売りポジション、2024年7月以来の水準に拡大」
第125回「“Headline Fatigue”から“Cautiously Optimistic”へ」
第124回「ドル円は160円突破 為替介入はあるか?」
第123回「中銀ウィーク通過 各国利上げ観測が高まる」
第122回「ドル円、160円目前 中東情勢の混乱は継続」
第121回「世界的株安・米原油2年半ぶり高値・有事のドル買い 中東緊迫」
第120回「円安は進みやすく、円高は進みにくい?」
第119回「日本の『トリプル高(株高・債券高・通貨高)』は続くのか」
第118回「日経平均先物、夜間取引で2000円高の急騰 自民圧勝期待で」
第117回「為替介入は『なし』、ドル円急落はレートチェック」
第116回「日米当局、レートチェック お上に逆らうな(為替介入)」
第115回「ドル円、衆院解散で160円突破か!?」
第114回「ドル円、1年ぶり高値 衆院解散を検討との報道」
第113回「ドル円、2026年上昇予想が増加」
第112回「ドル円、年初来高値158.87円が視野」
第111回「来週はいよいよ日銀金融政策決定会合」
第110回「米感謝祭ウィークで商いは低調 来週に期待」
第109回「ドル円、10カ月ぶり高値 利上げや介入への警戒高まる」
第108回「米利下げ確率、1カ月前の94.4%から45.8%まで低下」
第107回「高市トレード(円売り・株買い)継続」
第106回「終わってみればサナエノミクス」
第105回「VIX(恐怖指数)、半年ぶりの高水準を更新」
第104回「忘れた頃にやってくるトランプ砲、でもTACOか?」
第103回「米政府機関の一部閉鎖で投機筋ポジション発表されず」
第102回「ドル円、ついにレンジをブレイクか!?」
第101回「サナエノミクス!ジャパン・イズ・バック!に期待」
第100回「上サイド突破を期待しながらポジションを追加」
第99回「ドル円、結局1カ月前と同様の結果に」
第98回「ドル円、パウエル発言伝わると急落」
第97回「投機筋の円買いポジション、縮小が続く」
第96回「上サイド突破を期待しながらポジションを維持」
第95回「イベント満載の1週間 ドル円は上値重い展開」
第94回「夏休み前、傾いたポジションは整理される傾向に」
第93回「参院選後も円安の流れは変わらずか!?」
第91回「ポジションを切るかどうかの瀬戸際」
第90回「ドル円、来週以降は買い増しを検討」
第89回「投機筋の円ロングポジション、縮小が続く」
第88回「投機筋の円ロングポジション、縮小」
第87回「ドル円、140円割れを目指す展開か!?」
第86回「米国『トリプルA』格付け失う 来週は為替協議の思惑も」
第85回「投機筋の円買いポジション、やや拡大 過去最大を更新」
第84回「投資家心理は改善 恐怖指数=VIXは順調に低下」
第83回「注目は24日予定の日米財務相会談 為替について協議」
第82回「ドル円『1日の値幅は3円超』 売っても買ってもやられる相場」
第81回「虎の子だったはずのポジションが見事に粉砕」
第80回「円買いポジションの解消に伴う急速な円安・ドル高圧力」
第79回「投機筋の円買いポジション、いよいよ巻き戻しスタートか!?」
第78回「来るか!?行き過ぎた『ポジションの偏り』の反動」
第77回「投機筋の円買い過去最大 行き過ぎた『ポジションの偏り』」
第76回「投機筋の円買いが過去最大に 偏り警戒160円超えを指摘する声も」
第75回「投機筋の円買いポジション、再び6万枚超まで拡大」
第74回「投機筋の円買いポジション、5万4615枚に拡大」
第73回「ドル円、テクニカル的にも売りが出やすいか」
第72回「投機筋、ポジションはほぼフラットに」
第71回「28-29日のFOMC、利下げ見送りが濃厚」
第70回「日銀の追加利上げは織り込み済み」
第69回「ドル円は半年ぶり高値 ロングは維持したい」
第68回「やっぱり7月3日の高値161.95円突破を狙いたい」
第67回「ドル円、またまた160円台を目指していくのか」
第66回「日銀の年内利上げ観測後退 1月すらも怪しい」
第65回「感謝祭ウィーク週末のNY午後(日本の夜中2時)」
第64回「投機筋のユーロ売りポジション、再び5万枚に迫る」
第63回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?その2」
第62回「クリスマスラリーに向けて仕込み時か!?」
第61回「投機筋、円買いポジションを大きく縮小」
第59回「投資の格言『損切りは早く、利は伸ばせ』」
第58回「円安予想で投機的ポジションを再び積み増し!?」
第57回「高市氏勝利を期待したポジションが含み損」
第56回「残暑厳しくも年末ラリーを期待する季節」
第55回「ドル円は年初来安値 歴史的な円安進行は終わり!?」
第54回「ブラックマンデーの再来!?!?(1カ月ぶり2度目)」
第53回「いろいろ底打ち? 日経平均は1カ月ぶり高値」
第52回「ドル円、二番底確認か?底割れか?」
第51回「投機筋のポジション、まさかの円ロングに」
第50回「株も為替もセリング・クライマックス」
第49回「植田総裁が突如タカ派路線、円高と株急落招く」
第48回「投機筋の円売りポジションが10.7万枚まで大幅に減少」
第47回「ヘッジファンドによる円売りポジションが急減」
第46回「ドル円、ピークアウトか 押し下げ介入?のサプライズ」
第45回「ドル円、またまた37年半ぶりの高値を更新」
第44回「ドル円、37年半ぶりの高値 当面は円安・ドル高基調か」
第43回「ドル円、34年ぶりの高値160円に接近 介入は困難か」
第42回「注目のFOMCを通過、今年の米利下げ予想1回に」
第41回「米雇用統計でFRBの年内利下げ観測が後退」
第40回「ドル円、介入規模は過去最大 ただ効果は1カ月」
第39回「ドル円、再び157円台に 介入は困難!?」
第38回「投機筋の円売りポジションが急減 介入受け」
第37回「政府・日銀、投機筋との攻防は長期化の可能性」
第35回「個人投資家の円買いvs投機筋の円売り」
第34回「介入期待もあってユーロ円のショートは維持」
第33回「久々のリスク・オフのムード 株安・原油急騰・円高」
第32回「ドル円、嵐の前の静けさか? 今週の値幅は1円未満」
第31回「中銀ウィークを無事通過!? ドル高・円安を期待」
第30回「ドル円ロングは維持、ストップは付かずに切り返す」
第29回「ドル円、上値重く 日銀の政策修正観測高まる」
第28回「【祝】日経平均株価、史上最高値 ドル円もそろそろ」
第27回「日経平均株価、史上最高値まであと少し」
第26回「ドル円、上値試すか 昨年11月の151円台も視野」
第25回「注目のFOMCタカ派寄りもドルは下落」
第24回「ドルと円、それぞれの買い要因が綱引き」
第23回「ドル円ショートは損切り 円安とドル高のダブルパンチで」
第22回「ドル円、1カ月ぶり146円台 追加でショート」
第21回「ドル円、年始の悪夢 1月3日のフラッシュクラッシュ」
第20回「ドル円、売りシグナル点灯 さらなる下落に期待」
第19回「ドル円、140円割れが視野に」
第18回「米債ロングは利食い FRB議長発言を前にポジションはなし」
第17回「米長期金利、2カ月ぶり低水準 上昇リスクにはなお注意」
第16回「米国債のロングポジション、含み益が拡大」
第15回「米国債のロングポジション、含み損から含み益に」
第14回「米10年債利回り、16年ぶりに『5%』を突破」
第13回「米国債、下落止まらず 利回りは2007年7月以来の高水準」
第12回「初めての米国債(CFD)買い、そろそろ底打ちかと思ったら・・・」
第11回「下手な難平(なんぴん)、素寒貧(すかんぴん)」
第10回「日経ロングはキープもリスク高い週末 米政府機関の閉鎖はほぼ確実に」
第9回「日経225ロング、含みゾーン(損)に突入!」
第8回「日経平均、レジスタンス突破でいよいよ3万4000円台乗せか!?」
第7回「日経平均、9連騰ならず テクニカル的には・・・」
第6回「日経平均をロング トレンドは友達(Trend is your friend)」
第5回「重要イベント通過もポジション取れず・・・相場は乱高下」
第4回「朝起きたらポジションが全てなくなっているという悲しみ」
第3回「ドル円、ストップロス水準に接近 祝日のため円安けん制発言も期待できず」
第2回「前週のドル円ショートはあえなくストップ 懲りずに再in」
第1回「ドル円、乱高下のあと何故か全戻し 戻りは叩く」

為替情報部 アナリスト

中村 知博

鹿児島出身。2007年国際金融情報サービス会社に入社。 外国為替取引会社・金融機関への24時間リアルタイム金融情報サービスの為替記者として従事。市場動向や見通しなどを解説する動画サービスの業務も経験。 2017年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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