米共和党予備選、トランプ氏5連勝
11月の米大統領選に向けた共和党の予備選で、トランプ前大統領は対抗馬でサウスカロライナ州知事を務めたヘイリー元国連大使の地元を制し、5連勝で党候補の指名獲得に近づいています。
また、世論調査では本戦で再対決となる公算の大きいバイデン大統領の支持率をわずかながら上回る状況となっており、2017年に第45代米大統領に就任し世間を振り回したトランプ氏再選への警戒感が強まっています。
トランプ氏、第45代米大統領としての実績
・外交
「アメリカ・ファスト」を公約に第45代大統領に就任したトランプ氏は性格が災いとなり、外交知識に乏しいこともあり、大きな成果はあげられませんでした。
中国に対して敵対姿勢を強め対中関税を引き上げ、2018年に米中貿易戦争が勃発しました。米国内では評価する声もすくなくありませんが、数次にわたる追加関税の引き上げは世界経済への懸念を高め、米国経済の勢いも削ることになりました。
・経済
ダウ平均は1.6倍、ナスダックは2.3倍上昇しました。株価の上昇が全てトランプ政権の成果というわけではありませんが、大型減税が納税額の大きい大企業や富裕層ほどメリットが大きく、結果的に米国の株価上昇に大きく貢献しました。
一方で、トランプ政権の「保護主義」は世界の製造業にダメージを与えた結果となりました。
・コロナ対策
パンデミックに対する反応は遅く、脅威を軽視して保健当局者からの多くの勧告を無視して証明されていない治療法・検査の利用の可能性について宣伝するなどしました。
トランプ氏の再選リスク
世間は共和党候補としての選出が濃厚なトランプ氏が大統領に返り咲けば、世界が再び混乱の渦に巻き込まれることは必至と戦々恐々しています。米大統領は2期までと合衆国憲法で定められているので、次の選挙を見据えていた1期目とは違って、「どうせ最後だから」と、より過激な政策を打ち出すことも十分考えられます。
トランプ氏は今回の大統領選では減税策を公約に掲げておらず、8年間の時限措置であった個人所得減税を延長することを主張しているだけであり、市場では「保護主義」の強化が警戒されています。同氏の米国第一主義が先進国の結束を再び揺るがせてしまうこと、先進国の軍事的な連携を弱めることでロシアなど米国と対立する国を利することになり、地政学リスクを高めてしまうことが懸念されています。
また、輸入関税の導入が物価環境を再び悪化させ、ドル安政策や財政拡張路線が金融市場を不安定にし、米連邦準備制度理事会(FRB)との間で金融政策を巡る対立が強まり、通貨の信認を損ねてしまうことなどが大いに懸念されています。
今後の米大統領選の予定
・3月5日:スーパー・チューズデー(テキサス州やカリフォルニア州などで一斉に予備選挙実施)
・7月15日-18日:共和党全国大会(ウィスコンシン州ミルウォーキー、ファイサーブ・フォーラム)
・8月19日-22日:民主党全国大会(イリノイ州シカゴ、ユナイテッド・センター)
・11月5日:一般有権者による投票および開票(11月第1月曜日の次の火曜日)
・12月16日:選挙人による投票(12月第2水曜日の次の月曜日)
・2025年1月6日:大統領および副大統領当選者が正式決定(合衆国法典第3編第15条)
・2025年1月20日:大統領就任式(憲法修正第20条)