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第85回 トランプ氏の再選リスク

米共和党予備選、トランプ氏5連勝

11月の米大統領選に向けた共和党の予備選で、トランプ前大統領は対抗馬でサウスカロライナ州知事を務めたヘイリー元国連大使の地元を制し、5連勝で党候補の指名獲得に近づいています。


また、世論調査では本戦で再対決となる公算の大きいバイデン大統領の支持率をわずかながら上回る状況となっており、2017年に第45代米大統領に就任し世間を振り回したトランプ氏再選への警戒感が強まっています。

 

トランプ氏、第45代米大統領としての実績

・外交

「アメリカ・ファスト」を公約に第45代大統領に就任したトランプ氏は性格が災いとなり、外交知識に乏しいこともあり、大きな成果はあげられませんでした。

中国に対して敵対姿勢を強め対中関税を引き上げ、2018年に米中貿易戦争が勃発しました。米国内では評価する声もすくなくありませんが、数次にわたる追加関税の引き上げは世界経済への懸念を高め、米国経済の勢いも削ることになりました。

・経済

ダウ平均は1.6倍、ナスダックは2.3倍上昇しました。株価の上昇が全てトランプ政権の成果というわけではありませんが、大型減税が納税額の大きい大企業や富裕層ほどメリットが大きく、結果的に米国の株価上昇に大きく貢献しました。

一方で、トランプ政権の「保護主義」は世界の製造業にダメージを与えた結果となりました。

・コロナ対策

パンデミックに対する反応は遅く、脅威を軽視して保健当局者からの多くの勧告を無視して証明されていない治療法・検査の利用の可能性について宣伝するなどしました。

 

トランプ氏の再選リスク

世間は共和党候補としての選出が濃厚なトランプ氏が大統領に返り咲けば、世界が再び混乱の渦に巻き込まれることは必至と戦々恐々しています。米大統領は2期までと合衆国憲法で定められているので、次の選挙を見据えていた1期目とは違って、「どうせ最後だから」と、より過激な政策を打ち出すことも十分考えられます。

 

トランプ氏は今回の大統領選では減税策を公約に掲げておらず、8年間の時限措置であった個人所得減税を延長することを主張しているだけであり、市場では「保護主義」の強化が警戒されています。同氏の米国第一主義が先進国の結束を再び揺るがせてしまうこと、先進国の軍事的な連携を弱めることでロシアなど米国と対立する国を利することになり、地政学リスクを高めてしまうことが懸念されています。

 

また、輸入関税の導入が物価環境を再び悪化させ、ドル安政策や財政拡張路線が金融市場を不安定にし、米連邦準備制度理事会(FRB)との間で金融政策を巡る対立が強まり、通貨の信認を損ねてしまうことなどが大いに懸念されています。

 

今後の米大統領選の予定

・3月5日:スーパー・チューズデー(テキサス州やカリフォルニア州などで一斉に予備選挙実施)

・7月15日-18日:共和党全国大会(ウィスコンシン州ミルウォーキー、ファイサーブ・フォーラム)

・8月19日-22日:民主党全国大会(イリノイ州シカゴ、ユナイテッド・センター)

・11月5日:一般有権者による投票および開票(11月第1月曜日の次の火曜日)

・12月16日:選挙人による投票(12月第2水曜日の次の月曜日)

・2025年1月6日:大統領および副大統領当選者が正式決定(合衆国法典第3編第15条)

・2025年1月20日:大統領就任式(憲法修正第20条)

この連載の一覧
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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