ドル円、24年も政策相場が続くか
来年もドル円相場に大きな影響を与えるのは間違いなく、日米両国の金融政策です。メインシナリオはFRBの利下げ開始と日銀の金融政策正常化への転換となり、ドル売り・円買い予想が多いです。
FRB
基本的にはこのシナリオ通りになる可能性が高いですが、懸念が残るのはFRBの利下げが市場予想ほど加速しないことや、インフレ懸念が再燃し高い金利水準の長期化観測が台頭することです。
12月FOMCでのドット・プロット(金利予測分布図)によると、2024年に3回の利下げ、2024末のフェデラルファンド(FF)金利誘導目標は4.65%(4.50-75%)と見込まれていますが、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、利下げ開始は2024年3月FOMC、12月FOMCでは6回目の利下げでFF金利誘導目標3.75-4.00%が予想されるなど、FRBと市場のギャップが大きいです。どっち方向に修正されるかによって、ドル円に動意づくでしょう。
インフレだけではなく、景気動向もFRBの政策決定に大きな影響を与えそうです。現時点では米経済のソフトランディング期待が強いですが、景気懸念が強まるとFRBが利下げを急ぐ可能性があります。
日銀
市場では日銀が来年の4月にマイナス金利の解除に動くとの見方が強いです。一部では1月にマイナス金利解除に踏み切るとの声もありますが、1日の能登半島地震の影響で日銀の早期の政策転換思惑は後退しています。植田日銀総裁は政策変更に来年の春闘で「はっきりとした賃上げが続くかが重要なポイントだ」と強調しており、4月が妥当と言えるでしょう。
注意しないといけないのは、日銀がマイナス金利の解除を決定したとしても、マイナス金利解除=利上げではない点です。日銀が目指す賃金と物価の好循環を実現に、かなり厳しい状況が続くと想定され、日銀の利上げ期待が高まらない限り、円買いの反応は限られるでしょう。日銀がマイナス金利の解除に動いても利上げ期待が高まらない限り、ドル円の売り戻しは135円程度にとどまると見込まれます。
日米の金融政策転換で、近年のドル高・円安トレンドが変わるとの見方が多いですが、FRBの引き締め長期化や日銀の利上げ期待後退などの思惑が再燃すれば、ドル円は2022年10月22日につけた1990年7月以来の高値151.95円を上抜けして160円近辺まで上昇基調を強める可能性も警戒したいです。
ドル円、世界経済情勢の影響
世界経済情勢にも注目です。主要国で続いた利上げの累積効果がこの先一段と顕在化する可能性が高く、年前半は経済の緩やかな減速が続くとの見方が多いです。ただ、年央からは主要国中銀が利下げに踏み切る可能性が高く、金融政策が成長を支える可能性があります。米景気に関して、ソフトランディングを予想する声が多いです。
国際通貨基金(IMF)は来年の世界GDP成長率を+2.9%と、今年からわずかに景気が鈍化するとの見通しを示しています。また、経済協力開発機構(OECD)も来年の世界GDP成長率は+2.7%と今年からの鈍化を予想しているが、景気減速への懸念は多くありません。インフレとの闘いに勝利宣言ができるかどうかが重要です。
大きく懸念材料になるのは中国経済です。2023年の中国経済はコロナ禍からの回復が予想より鈍いままとなりました。不動産不況の影響も大きいです。中国当局が経済の回復に力を入れており、来年は経済の立て直しを期待したいところですが、不動産危機を上手く回避できるかどうかが大きなポイントになります。中国経済動向は世界経済に大きな影響を与えており、中国の経済状況に注目です。世界経済に睨んだリスクオン・オフがドル円の動きにも影響を与えるでしょう。
米大統領選
2024年は米国で4年に一度の大統領選挙が行われます。今のところ、バイデン現米大統領とトランプ前大統領の間で争われる可能性が高いです。選挙の年は、景気浮上策を狙った経済政策をとるため経済成長率が高くなる傾向があります。その結果、ドル高を誘引することや、選挙終了後は心理的にドル買い安心感が広がり、大統領選の年とその翌年はドル高になることが多いといわれています。
特にトランプ前大統領には現役時代にその言動に金融市場が大きく振り回されたこともあり、その保護主義者のトランプ氏が共和党指名候補者の間で圧倒的なリードを保っていることを踏まえれば、潜在的な貿易関税が通貨に及ぼす影響も注目され、「関税リスクの再燃はドルにプラスになる」可能性があります。