誰もが生きていると悪いことも良いことも経験した思います。長い人生のなかで、良いことも悪いこともずっと続くわけではなく、人生はその繰り返しです。
経済も同じです。景気には波があるが、好景気と不景気が交互にやってきます。好景気のときは、人々の購買意欲は増加しモノが売れ、企業の業績が上がり、社員の賃金も上昇します。企業はモノの生産を増やすために設備投資を増強し、いつかは過剰供給となり、物価が下がります。モノが売れなくなると、企業の在庫が増え生産量は下がり、賃金も削減されるから、人々の購買意欲も減るから経済は不景気に入ります。
モノの値段がいつまでも下がり続けるということはなく、消費も生活するために最低限必要な量は維持されているので、再び消費が上向いてくる時がきます。消費が上向くと企業も生産量を上げて、設備などを増強していく。景気はこのように循環していきます。また、好景気や不景気になると、政府も対策を講じるので、これも経済の循環につながります。
為替レートも上がり続けることや下がり続けることはありません。第65・66回で言及しましたが、為替レートは、基本的には「購買力平価」を反映して動きます。購買力平価とはそれぞれの国の通貨価値と考えられます。実際の購買力平価は、個々の商品価格を比較するのではなく、国別に集計した企業物価指数(卸売物価)や消費者物価指数などマクロの物価指数の変化を比較することで購買力平価を決めます。
もちろん、政治・経済的要因から国力の弱い国では通貨価値が大きく変化していることは今も起きています。1997年のアジア通貨危機では、東南アジアの通貨が一時50%以下に減価し、ハイパーインフレーションと経済の崩壊でジンバブエ・ドルは2015年に通貨としての廃止が決定されました。
山と谷を意識
「歴史は繰り返す」という言葉は為替相場でも通用します。為替相場は上がる時もあれば下がる時もあるという当たり前のことを常に意識しておく必要がありますが、為替レートの山と谷を見極めることが大事です。
FX取引は預けたお金よりも大きい金額(レバレッジ)で為替取引をすることができますので、場合によってはものすごい勢いで稼げることがあり、自分の取引を過信することが警戒されます。何回も繰り返すが、為替レートも上がり続けることも下がり続けることはありませんので、上げ局面で大きな利益を出したが、冷静になり、警戒感を持たないと下げ局面に転じた時は場合によって損失が利益を上回ることも何の不思議ではありません。自分の取引スタイルに合わせた時間軸を考え、その時間軸での山と谷を見極め、利食いと損切りの戦略を練るのはとても大事です。
ドル円の山は?
日米金融政策の違いを意識したドル買い・円売りのトレンドが続き、昨年10月にドル円は約32年ぶりの高値となる151円後半まで上昇しました。その後は米利上げサイクルの終焉や日銀の金融政策修正への期待もあり、今年1月には127円前半まで下落したが、米引き締め長期化観測を背景とした米長期金利の上昇に伴ったドル高と日銀の緩和策の修正がまだ先になるとの見方が強まったことで日米金利差が拡大し、10月には再び150円台を回復しています。足もとで一段のドル高・円安を阻止する材料としては日本当局の介入だけに頼る感じになっています。
ドル円のこの150円超え水準が山になるかどうかは、日米金融政策の修正に関わっています。介入はあくまでも一時的な効果にしかならず、日米金融政策の見通しに変化がなければ、今後一段のドル高・円安が進む可能性が高いです。ただ、今後米国は引き締め姿勢を修正する一方で、日銀は金融政策の正常化に向かう非常に高く、この今後がいつになるかを見極めることになります。個人的には来年当たりで両国の金融政策姿勢に変化が見られ、ドル円も山がみられるのではないかと思っています。