日銀、来週の会合で「マイナス金利解除」に踏み切るか
来週の18-19日に日銀の金融政策決定会合を控え、世間では「マイナス金利解除」に注目が集まっています。植田日銀総裁はこれまで日銀政策修正の前提として「賃金と物価の好循環」とし、春闘の動向が「大きなポイントとなる」と強調してきました。
本日15日に発表した第1回・回答集計の平均賃上げ率は5.28%と昨年の3.80%を大幅に上回りました。平均値上げ率は最終集計との比較で1991年以来33年ぶりの高水準となり、日銀は来週の会合で「マイナス金利解除」について議論を行うことが確実視され、マイナス金利の解除に踏み切る可能性が高まっています。
日本も「金利のある世界」へカウントダウン
日銀が来週の会合で「マイナス金利解除」を先送りしても4月会合で実施する可能性は非常に高いです。植田日銀総裁は「マイナス金利解除」した後も緩和的環境が当面維持される見通しを示しており、「日銀の次の一手」が注目されますが、異次元の金融緩和が10年余り続いた日本で「金利のある世界」へのカウントダウンが始まるとの認識が高まりつつあります。
「日銀の次の一手」はいつになるか
日銀が「マイナス金利解除」に踏み切っても、次の利上げまでの間隔が相当に空くとの見方が強く、次の利上げは早くても秋になるかもっと先延ばしされるとの思惑が少なくありません。この見方に変化がない限り、日銀の金融政策正常化による円高は限られると見込まれます。米利下げ観測が後退するのであれば、ドル円は再び150円台を回復し、一段と上値を試す動きもあり得ます。
人手不足や企業利益の高さから、今年の大幅賃上げに持続性があると判断され、「所得から生産活動」「賃上げから消費増」への確信が高まると「日銀の次の一手」が早まるとの期待が強まり、本格的に円高トレンドがスタートする可能性があります。
賃上げを起点に購買力が強化され企業の値上げが円滑に進めば、深刻な人手不足に対応した設備投資の活発化などで生産性が上がり、それがさらに企業の生産性を高めて賃上げ原資の確保につながる好循環が生まれることも期待されます。
個人消費の回復がカギ
日銀が今後利上げ姿勢を強めていけるかどうかは、個人消費の回復も大きなカギとなります。日銀が緩和姿勢に固持する大きな要因の一つが消費のデータに弱さにあります。1月家計調査でも2人以上の世帯の実質消費支出は前年同月比-6.3%と11カ月連続で減少しました。今年1月までに実質賃金が22カ月連続でマイナスとなり、消費者はなかなか財布のひもを緩めていません。日銀は賃上げと6月に予定されている1人当たり4万円の定額減税が消費マインドの回復につながることを期待しています。
日銀金融政策正常化の影響
一概には言えないが、金利の上昇で大きな公的債務を抱える日本政府は債務返済額が増加するでしょう。低金利下で収益力が落ちた地方銀行などにとっては「マイナス金利解除」は好機になり得ます。また、日銀の金融政策正常化は住宅ローン負担増につながり、国内の不動産市況や景気を冷やす要因になる可能性もあります。
「マイナス金利解除」による日本株や円相場への影響は限られそうですが、日銀が引き締め姿勢を強めるとの観測が高まれば、日本株の下落と円高が警戒されます。