米国、1980年代の双子の赤字
双子の赤字は貿易赤字(経常赤字)と財政赤字が並存していた状態を指します。
1980年代に米国はレーガン政権の下で莫大な貿易赤字(経常赤字)と財政赤字と、双子の赤字となりました。双子の赤字はドルの信用力低下と、ドル安を招いた過去があります。
また、経済学者らは米国の双子の赤字が深刻な経済危機をもたらす恐れがあると警告し、当時の双子の赤字が維持可能であるか否かという問題提起を行い、全世界に衝撃を与えました。
双子の赤字は、1990年代のクリントン政権によって一旦は解消された。ただ、2000年のITバブルの崩壊、2001年の同時多発テロ、ブッシュ政権時のイラク戦争などをきっかけに、再びアメリカの財政赤字は増加し始め、現在も米国の赤字体質は一向に改善する兆しを見せていません。
最近も双子の赤字は深刻
2022年の貿易赤字は9453億ドルの赤字と過去最大を記録しました。今年もインフレ抑制を目的とした政策金利の引き上げによる消費と企業投資の伸びの鈍化で、大きな改善は見られていません。
また、2023会計年度(22年10月-23年9月)の財政収支が1兆6950億ドルの赤字になったと公表されました。赤字額は前年度から23%拡大し、新型コロナウイルス禍以降で最大となります。歳入が減少する中、社会保障費やメディケア費、連邦債務の利払い費が記録的水準に達しました。
米国の双子の赤字、ドルへの影響は限定
新興国で経常収支、財政収支の悪化は自国通貨売りにつながる大きな要因となっていますが、ドル相場を注視する人々の視野に、米国の経常赤字と財政赤字が入っていたのはもう随分と昔のことになっています。
双子の赤字は当面ドルを左右する一番の要因にはならなさそうです。その役割を務めるのは金利差で、米国が主要国のなかで景気の良さが目立っているもドルに有利に働いています。
構造問題が突然、ドルに打撃を与えそうにないとみなせる重要な理由はほかにも2つあります。1つ目は米国の「例外主義」。つまり、ドルが準備通貨の地位を得、米国債が世界の金利の指標となり、米国が世界の金融市場を主導しているということです。よって、米国の経常赤字は他のどの国の経常赤字とも同列に扱うことはできません。
もう1つは為替レートの「適正価値」モデルにおいて、対外収支の流れは長期的に大きなウエートを占めるものの、短期的な相関性は弱いことです。
ただ、財政刺激策がなくなっても経常赤字が大幅のままであれば、対外収支を均衡させるために最終的にはドル安が必要になる可能性があります。