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第117回 ドル円 8/1以来の150円台

ドル円 約2カ月半ぶりの150円台回復

最近のドル円は底堅さを維持する一方で、149円台で上値が抑えられていたが、米経済指標の好調な結果が続くなか、今週8月1日以来と約2カ月半ぶりに150円大台を回復しました。



9月の米雇用統計に続き9月米消費者物価指数(CPI)も市場予想を上回り、今週も9月米小売売上高が予想比上振れる結果になるなど、米経済指標の強い結果が目立っています。米国の良好なファンダメンタルズを背景に米利下げペース見通しに修正が入り、ドル高が進んでいます。

 

ドル円 今後も日米金融政策格差がポイント

今後、中東情勢の緊迫化などを背景とした投資家のリスクオン・オフの動きは引き続き要注意も、ドル円は日米金融政策格差が大きなポイントになることは変わらないでしょう。

 

●11月FOMCでの利下げ見送りの高まりに注意

市場では米連邦準備制度理事会(FRB)が9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)に続いて11月会合での大幅利下げが警戒されていたが、最近は0.50%の利下げ思惑はほぼなくなり、0.25%の利下げ確率が9割程度に高まり、一部では追加利下げの見送り見方も台頭しています。米経済のソフトランディング観測、FRBの利下げペース鈍化思惑の高まりはドルの支えとなります。今後の米経済指標の結果次第では11月FOMCでの利下げ見送りの可能性が一段と高まる可能性があります。


●日銀、早期の追加利上げ観測の台頭に注意

植田日銀総裁の「政策判断にあたり時間的な余裕がある」との発言や、石破首相の「現在、追加の利上げをするような環境にあるとは考えていない」の発言などで、日銀による早期の追加利上げ思惑は後退しました。ただ、石破政権の経済政策運営の中枢である赤沢経済再生相は「現在の政策金利 0.25%は物価上昇を考慮した実質ベースではマイナスで十分緩和的」と発言しており、政権と日銀との対話が進み、金融政策正常化への理解が進んでいることを伺わせました。

 

また、日銀は 9 月の決定会合では、円安の一服で、金融政策判断を慎重に行う時間的余裕があるとしたが、そこからドル円が 10 円近く上昇し、余裕は小さくなっています。消費の評価も高まっていることで、日銀は金融政策正常化に自信を深めつつ可能性があり、早期の追加利上げ思惑が再燃することが警戒されます。

 

ドル円は150円台を回復したが、ここから急速に上値を引き上げる動きになる可能性は低く、足もとのドル高・円高地合いのなかで値動きが小さくなりそうです。テクニカル的には日足一目均衡表・雲の上限(本日151.05円近辺)や200日移動平均線151.32円近辺が目先のレジスタンスとして意識されやすいでしょう。

 

今後の注目材料

ドル:引き続き米経済指標の結果を睨みながら利下げ幅や利下げペースを見極める展開となります。また、投票日まであと一か月を切った大統領選も意識されそうです。ごく足もとでは、一部調査でトランプ氏優勢と伝えられる。同氏の勝利となれば中長期金利の上昇、ドル高が想起されるため、この点ではドル高地合いは継続しやすいです。

 

円:10月27日の衆院選で自民党が過半数を維持できるか、政治リスクへの警戒感が強まるかなどに注目です。また、石破首相は今月に賃上げ支援などを盛り込んだ総合経済対策の策定を閣僚に指示しており、11月ごろに発表見込みの経済対策にも注目です。

日銀に追加利上げ判断の鍵となるのはやはり賃金上昇の流れが定着するかどうかであり、賃金関連のヘッドラインに要注意です。

この連載の一覧
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
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【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
【FX、やるならお得に】第9回 外国為替市場と為替レート
【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
【FX、やるならお得に】第6回 FX、利益を得る仕組み
【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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