FX取引には多くのプロ、素人が参戦しています。プロは当然ながら持っている知識や情報量が素人に勝る時が多いですが、必ずしも「プロが勝って、素人は負ける」とは限りません。マーケットの長い歴史のなかでは、結果として素人がプロの判断より正しかったケースがしばしばあります。
プロと素人の違い
プロのトレーダーになりたいとの夢を持っているFX初心者も少なくありません。では、プロと素人の決定的な違いは何でしょうか?
プロトレーダーは一般的に、専業トレーダーとして投資のみで生活している人や機関投資家として企業で実績を上げている人(証券会社のような為替ディーラーやヘッジファンドのトレーダーなど)を指します。
プロトレーダーと素人の違いは、単純にFXで稼いでいるという点だけではありません。トレードルールを独自に生み出し、それを継続して貫いているという点です。トレードの時間帯、資金管理の方法、トレード手法などを確立できなければトレードはいつまでもギャンブルの域を超えられません。素人がプロになるには、勉強と検証を重ね取引のルールを確立し、自己管理を徹底することができなければなりません。
プロトレーダーになるためにはある程度多くの資金が必要となり、安定したトレード手法の確立が大事になります。短期取引か長期取引か、ファンダメンタルズ分析かテクニカル分析か、裁量取引か自動売買かなど自分に合ったトレードスタイルを見つけなければなりません。
素人がFXに慣れかけた時に要注意
FXを始めてしばらく経ち、トレードに慣れてくると「過去に似たような値動き」と感じる場面が増えてきます。この時の誤った思い込みが大きな損失を招くことがあります。大きく相場が動いたときに「そろそろ反転するだろう」と根拠もなく逆張りのポジションを持とうとする人がいます。思い込みによるトレードが習慣づくと、自分では考えているつもりなのに、なかなか結果に結びつかない、という苦難に直面します。
また、思い込みによるトレードは、考え方を固執させる傾向があり、変化が激しい相場を柔軟に捉えることを阻害します。その結果、なかなか損切りができずに、どんどん含み損を膨らませてしまう、というケースに陥ります。
相場の動きには経験が通用しない動きが多くあります。よって、いつも経験に頼ろうとせずに実際に起きていることに着目してトレードすれば、暴落・暴騰時でも利益を上げることができます。
素人は含み損が膨らむと正常な判断能力が阻害され、ひとつの考えに固執してしまう傾向があります。このような状態に陥ると、間違っているとわかってはいるのに、一度自分のなかで立てた「思い込み」を強く信じて、ほかの戦略に移ることができなくなってしまいます。勝つために自分の思い込みに気づき、適切で合理的な判断を下し、相場の流れについていく必要があります。
素人がプロより判断が正しかった例
・1990年10月末の「ワイド騒ぎ」
当時、三重日銀総裁はバブル景気を抑え込むために政策金利の引き上げを続けていました。この影響もあり、利付金融債で運用する金融商品「ワイド」の利回りが年9.6%台と非常に高い水準となりました。プロトレーダーの多くは政策金利がもっと上がるとの見方が支配的でしたが、素人のなかでは金利は今がピークとの判断も多く、この商品を買い求めに人が殺到しました。実際、プロの見方とは逆に素人の判断に沿った動きとなりました。
・為替取引でも、2008年12月にプロの間では円キャリートレードの解消継続で一段の円高を見込む声が多かったが、円高ピークと判断した素人に円を外貨に換える動きが強まったが、素人の判断通りに1年近く円高はピークを迎え、円安方向への動きとなりますた。
「プロが負けて、素人が勝つ」という現象が起きるのは、情報が多いプロが特定の情報にこだわって視野が狭くなってしまう時があるところや、素人はプロみたいに相場と年中向き合っておらず、少し距離を置いて状況を冷静に見られるところなどが一因となりそうです。