米政府、強いドルは国益
ドルが世界ナンバーワンの実力を発揮する時代が長らく続いています。もちろん、その一番の要因は、ドルが外国との貿易や資本取引などの経済取引において、その決済手段として用いられる基軸通貨で、各国通貨の価値基準となっているからです。
また、1990年代から米政権が為替相場でドル高に保つ政策、つまり「強いドル政策」を打ち出し、その後も「強いドルは国益」と歌い続け、ドル高を国の政策として挙げてきたのも大きな要因となります。
何で「強いドルは国益」?
米国にとって「強いドルは国益」になる要因は米経済が内需(国内の消費)中心であり、旺盛の個人消費が経済の柱であるからです。旺盛な消費は海外からの輸入に頼っている部分が大きく、強いドル(ドル高)であれば、輸入品を安く仕入れることができます。
また、輸入品を安く仕入れることができると、商品の販売価格が下がり国民の日常生活にかかわる物価も抑えられ、米国民にとっても大きなメリットがあるからです。ただ、輸入が増えると当然ながら貿易赤字が鮮明になるので、米国は膨大な貿易赤字国となっています。
米国は貿易赤字でも大丈夫?
国の貿易赤字が増えると、その国の通貨がどんどん海外に流出することになります。貿易収支が黒字か赤字か、貿易黒字の減少・増加、貿易赤字の減少・増加は、 通貨に対する需要の増減につながるため、為替レートにも影響を及ぼします。貿易赤字が深刻になれば、その国の対外純資産、所得収支などが減り、経済の悪循環が始まるので深刻な問題に陥る危険があります。
米国は貿易赤字に加え、国家の収入を支出が上回るという財政赤字も抱えています。貿易赤字と財政赤字の二つの赤字の「双子の赤字」を抱えながらも米国が繁栄を続けられるのはドルが基軸通貨であり、米政府が「強いドル政策」を続けているおかげです。米政府は収入の足りない分と貿易赤字に米国債を発行して投資家に買ってもらい穴埋めしています。基軸通貨であるドルと強い米経済への安心感から、経常収支が赤字でも外国から投資がなされるのであります。
ドル安の米経済への影響
米政府が「強いドル政策」を放棄すると、ドル安が進むのは一目瞭然です。ドル安になると、海外からの輸入品の価格が上昇し、米国内での消費が落ち込み、米国債の魅力は薄れ、海外の投資家は米国債を買わなくなります。米経済は成長が弱まり、米政府の資金調達手段もなくなります。
ドルの信認低下
近年はドルに対する信認が揺らいでいます。中国経済の急成長や、これまで目をつむってきた双子の赤字問題への警戒感などで、外貨準備に占めるドルの割合を引き下げたり、貿易の決済通貨にユーロや人民元を取り入れるグローバル企業が増えたり、ドル離れの動きが見えています。