FXで有名な格言
「うわさで買って、事実で売る」―為替取引の世界で最も有名な格言の一つです。何の意味かと言うと、取引で儲けを狙う場合に「うわさが流れる段階で買っておいて、事実として結果が判明した時に売った方がいい」ということです。つまり、「うわさレベルで行動しないと儲からないよ」とする格言です。
重要な経済指標や注目のイベント、例えば米雇用統計、米連邦公開市場委員会(FOMC)などを控えて銀行・証券各社やロイター、ブルームバーグなど情報ベンダーは市場予想を公表します。また、マスコミは有名人の憶測記事を配信したり、関連の記事を流したりしますので、投資家はこれらを参考に事実が判明する前に結果を見込んで行動します。これが「うわさで買う」ということであり、結果が出る前に「織り込み済み」状態になっていることです。
例えば、米雇用統計の結果が良いという予想が多ければ、実際の結果が発表される前にドルを買う人が増えます。ドル円としてはドル買い・円売りポジションを持つ人が多くなり、ドル高・円安の方向に動きます。実際の結果が予想通り、もしくは予想を上回る高結果となれば、一段とドル高・円安が進む可能性がありますが、いったん「材料が出尽くした」ということで利益確定のドル売り・円買いとポジション解消の動きが活発になる可能性があり、「事実で売る」との言葉通りにポジションをいったん手仕舞うのも一つの良い選択になるとのことです。
「うわさで買って、事実で売る」事例
2022年3月から米連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ高を抑制するために利上げに踏み切り、5月会合では0.50%の利上げを実施しました。また、この会合でパウエルFRB議長は6・7月会合で0.50%の利上げを仄めかし、0.75%の利上げに否定的な見解を示しました。
ところが6月10日に発表された米5月消費者物価指数(CPI)が予想を大きく上回ると、市場は一気に0.75%の利上げを織り込み始め、ドル円も135円半ばまでドル買い・円売りが進みました。また、FRBの金融政策に精通している人物)として有名なウォールストリート・ジャーナルの記者が、自分が書いた記事でそれまでの0.75%の利上げはあり得ないからあり得ると変えたことも市場の大幅利上げを織り込む動きを加速させました。
実際のところ、日本時間16時午前にうわさ(市場予想)通り0.75%が利上げを発表されました。大幅利上げにもかかわらず、発表後のドル円は利食いの売りやポジション解消の動きに押され、133円半ばまで急落し、翌日には一時131円半ばまで一段と下落しました。典型的な「うわさで買って事実で売る」展開と言えるでしょう。
ドル円 2002年6月チャート
もちろん、為替レートに影響を与えるのは様々な要因があり、「うわさで買って事実で売る」というのは一つのケースに過ぎず、うわさ通りの結果になった時に一段と上昇し、結果からみれば「事実で売る」のではなく、もう少しポジションをキープすればよかったとなる時もあります。大事なのはしっかりした自分の取引ルールを作ることです。