中国は主要国との摩擦も多く、何だかんだ話題が多いですが、中国の経済はこの30年急速に成長し、世界の第2経済大国となり、発言力や影響力は強まる一方です。米国は世界の覇権争いで中国を最大の敵と警戒しています。中国の通貨、人民元も認知度を高め、取引量が増え、その地位が強化しつつあります。
人民元の歴史
計画経済体制下での人民元
中国は1949年に建国し、長らく政府の計画経済体制が続きました。この時の外貨取引はすべて政府が手掛けていました。1955年からドルペッグ制の固定相場続けたが、ニクソン・ショックでブレトン・ウッズ協定の崩壊後の1973年から「通貨バスケット制」に移行しました。
二重相場制
1981年からは公定レートを1ドル=1.5元、貿易決済内部レートを1ドル=2.8元とする、これまでの公定レートに貿易決済内部レートを新設して並行させる二重相場制の為替政策を実施しました。1984年からこれまでの計画経済から市場経済への改革の必要性を意識し、物価制度を見直しました。また、その一環として1985年から二重相場制の廃止を発表し、人民元為替レートを一本化しました。
管理変動相場
1998年には外為調整センターでの取引レートと公定レートの二重相場と再び二重相場制に入ったが、2005年7月に人民元の対ドル固定相場制に終止符を打ち、「通貨バスケットを参考に調整する」管理変動相場へ移行しました。バスケット通貨はドル、ユーロ、円を中心に中国の国際経常収支の主要相手国・地域の通貨を取り入れました。
オンショア人民元(CNY)とオフショア人民元(CNH)
オンショア人民元(CNY)は中国国内市場で流通するものを指し、オフショア人民元(CNH)は香港、シンガポール、イギリスなど中国本土外の居住者が取引する国外(オフショア)市場で取引される人民元を指します。2010年から香港において人民元の取引を解禁され、国外の投資家はこの資本市場の誕生によって人民元の本格的な自由取引が可能になり、人民元建て貿易決済ができるようになりました。
人民元、SDR通貨バスケット構成比率
2016年11月30日、国際通貨基金(IMF)は特別引き出し権(SDR)の構成通貨に人民元を加えることを正式に決めました。当時のSDR通貨バスケットの構成比率で人民元は10.92%でしたが、2022年5月には12.28%まで引き上げられました。
人民元、国際化を目指す
米中対立も深刻化するなか、中国は人民元の国際化を重要視しており、クロスボーダー取引における人民元の使用率向上に向け、資本取引の自由化を進めること、人民元の為替レートの柔軟性を高めることに前向きであります。
人民元のデジタル化
中国人民銀行は2014年にデジタル通貨(中央銀行デジタル通貨)の研究開発を世界で最初に開始しました。2016年に一部商業銀行との間で実験的な取引を行い、2020年10月から初の公開実験として深セン市でデジタル通貨を発行しました。デジタル人民元の正式導入のスケジュールは決まっておらず、現在も実証実験は進められていますが、2022年2月に行われた北京五輪において外国人向けに初めてデジタル人民元が提供されました。人民元の国際化実現の一環として、デジタル人民元の実証実験が着々と進んでいます。
CNH、今年の動き
ドル/CNH
米中金融政策の格差から米中金利が逆転し、ドル買い・CNH売りが優勢となりました。中国の「ゼロコロナ」政策による景気鈍化も人民元の売り圧力を強め、ドル/CNHは10月にオフショア開設以来のCNH安となる7.3元台まで上昇しました。
CNH円
ドル高・円安・人民元安となり、今年のクロス円全般が堅調な動きになるなか、CNH円は10月に過去最高値となる20.90円まで上昇しました。ただ、最近はドル円が調整の売りに押されたこともあり、CNH円も19円近辺まで押し戻されました。