FX やるならお得に

【FX、やるならお得に】第21回 資源国通貨(豪ドル)

豪ドル(AUD)はオーストラリア領土以外でも、ポリネシアのナウル・ツバル・キリバスで用いられています。

 

豪ドルの歴史

1966年にそれまでのオーストラリア・ポンドからオーストラリア・ドルに置き換えられるまでは、オーストラリアの貨幣は英国通貨を中心としたポンド通貨圏に属しレートも基本的に英国に連動していました。

 

1967年に英国が米ドルに対してポンドの切り下げを行った際、オーストラリアはオーストラリア・ドルを英国ポンドに連動させる政策をとらず、ポンド通貨圏から離脱することとなりました。

 

豪ドル、資源国通貨の代表

オーストラリアは世界第6位の広大な土地を持っており、ら金、鉛、ニッケル、ウラン、亜鉛、鉄鉱石などを産出する天然資源が豊富な国です。全輸出の5割以上を鉱物資源が占めていることから、豪ドルは資源国通貨という側面を持っています。

 

中国がオーストラリアの最大の貿易相手であり、輸出全体の30%以上が中国向けです。そのため、豪ドルは原油・金・鉄鉱石などの商品価格や、中国の要因の影響を受けやすいという特徴があります。中国の太平洋への進出によって豪中関係に変化があると、大きな悪影響が出る可能性があります。

 

2003-2007年の新興国の成長による「資源ブーム」の時に、オーストラリア経済も好調で、豪ドルは金利が高く、投資家の人気を集めました。しかし新興国経済が減速した2016年以降は、経済成長が伸び悩み、金利も低下傾向でした。

 

資源の輸出量は非常に多いものの、実は鉱業がオーストラリアのGDPに占める割合は1割超とそれほど高くはありません。GDPの約7割は金融や公益事業、消費関連などの内需関連セクターが占め、オーストラリア経済の主役となっています。

 

高金利通貨の側面も

オーストラリアは歴史的に先進諸国の中ではインフレ率が高くなりがちなことから、金利も他の先進諸国よりも高くなる傾向があります。世界的に政治・経済が安定している時には金利狙いの資金が集まりやすく、豪ドルも高くなる傾向があります。

 

かつては高金利通貨とされ、2008年3月には政策金利が一時7.25%まで引き上げられました。その後は低下傾向が続き、コロナ禍の2020年には0.10%まで引き下げました。2022年5月から金融政策の引き締めに転換し、今年の11月には2.85%まで引き上げています。

 

また、豪ドルは市場のリスクオン、リスクオフの影響を受けやすい傾向があり、投資家がリスク選好を強める(リスクオン)場合は上昇しやすく、逆に投資家がリスク選好を弱める(リスクオフ)場合は下落しやすい通貨です。突発的な混乱が生じると、一気に資金が流出して豪ドル安となることもあります。

 

FX取引で人気

オーストラリアは経済的・政治的にも不安要素も比較的少なく、輸出取引が活発で天然資源にも恵まれているため、FXでも依然人気の通貨です。


今年の豪ドル

今年は日米政策金利の違いを意識され、ドル円が急伸。全般ドル高・円安が進むなか、豪ドル/ドルは10月に2020年4月以来の安値水準となる0.61ドル後半まで弱含み、豪ドル円は9月に2014年12月以来の高値水準となる98円後半まで上昇しました。

豪ドル円

豪ドル/ドル

この連載の一覧
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
【FX、やるならお得に】第22回 米国と結びつきが深い通貨(加ドル)
【FX、やるならお得に】第21回 資源国通貨(豪ドル)
【FX、やるならお得に】第20回 変動幅が大きい通貨(ポンド)
【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
【FX、やるならお得に】第18回 取引量が第2位の通貨(ユーロ)
【FX、やるならお得に】第17回 取引量が最も多い通貨(ドル)
【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
【FX、やるならお得に】第15回 順張り・逆張り
【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
【FX、やるならお得に】第9回 外国為替市場と為替レート
【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
【FX、やるならお得に】第6回 FX、利益を得る仕組み
【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

金 星の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております