FX取引には数多くの通貨ペアがあり、投資家もそれぞれ自分が好む通貨や通貨ペアがあります。また、当然ながら各通貨は各自の個性があり、各通貨の特徴を前もって把握するのは重要です。
これまでも言及しましたが、FX取引でまだドルの取引が圧倒的に多いです。その後、ユーロと円が続いており、為替相場の全体像を確認するうえでこの3大通貨の動きが注目されます。
・ドル
中国の影響力拡大やユーロの台頭で、これまでの米国のモノすごいパワーやドルの圧倒的な地位は低下傾向でありますが、依然として米国は経済・軍事力で世界の中心に立っており、この先も相当長い期間にドルは魅力的な通貨であり続けるでしょう。
米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で2022年3月から続いた利上げをいったん停止することを決定しました。ただ、7月会合で利上げを再開し、今年に2回の追加利上げ(0.25%×2回)の可能性が示唆されました。一部では年末にも利下げに転じるとの思惑もありますが、大方の予想では来年からFRBが利下げに動くとの見通しとなっています。現在の政策金利は5.00-5.25%となっています。
・ユーロ
1999年に欧州の統一通貨としてユーロが誕生し、2年間の実質的な移行期間を経て現在ユーロを導入して国は20カ国に拡大しています。ユーロの動向が為替相場に与える影響が増し、基軸通貨ドルの立場を脅かす存在となっています。
欧州中央銀行(ECB)は6月理事会で0.25%の利上げを決定し、昨年7月から8会合連続の利上げを実施しました。7月会合で追加利上げに踏み切る可能性が高く、9・10月会合での利上げ姿勢を見極める展開となっています。現在の政策金利は4.00%となっています。
・円
これまでの円はドル、ユーロに次いで流動性が高い通貨として、日本の金融システムが安定していること、日本が経常黒字、低いインフレ率が続いていることもあり、市場リスクが高まるような場面では安全資産として、選好される傾向があります。円安の影響もあり、昨年日本の貿易収支は21兆7284億円の赤字と赤字幅は過去最大となりました。
世界中の多くの中銀がインフレ対策として利上げが相次ぐなか、日銀は異次元の緩和策を継続している。市場では金融政策正常化への期待感が強まっていたが、4月に日銀総裁に就任した植田氏が緩和策の継続を強調し、政策修正への観測が後退しています。日銀は2016年1月から政策金利残高に対する0.1%のマイナス金利を実施し、今まで継続しています。
・ドル円
ドル円は昨年10月に151.95円まで約32年ぶりの高値を更新しました。その後は米利上げ終焉や日銀の金融正常化期待で今年1月には127円台まで買い戻しが入りましたが、米引き締め長期化や日銀の緩和継続でこの6月には145円台まで切り返しています。
日米金融政策の格差を意識したドル高・円安の流れは当面続きそうで、ドル円は日本政府の円買い介入を警戒しながら上値を試す動きが想定され、145円台を上抜けると再び150円台回復も視野に入りそうです。今後、いずれは米利上げ終焉と日銀の金融正常化が進むと予想され、ドル円の上昇トレンドに変化を迎える日が来るでしょうが、足もとで再び上昇基調を強めており、どの水準まで上値を切り上げるかが注目です。
今後、日米金融政策の修正や世界景気鈍化懸念でのリスク回避の円買いなどがドル売り・円買い要因になり得るが、日銀が金融政策の修正に動いても引き締めを強める可能性は低いことや日本の膨大な貿易赤字をかんがみると円買いが大きく進む可能性は低いと見ています。
・ユーロドル
米欧の金融政策スタンスの違いやロシアのウクライナ侵攻で、昨年はドル買い・ユーロ売りが先行し、昨年9月には0.95ドル台まで下落しました。その後はECBが引き締め姿勢を強めたことを受けてユーロに買い戻しが入ったが、米引き締め長期化思惑も根強く上値は限られ、今年は1.05-1.10ドルのレンジを中心に狭いレンジ内での動きが続いています。
米欧ともに利上げサイクルは遅くても今年後半に終焉に向かうとの見方が強く、ユーロドルは一方向に大きく傾きにくいと想定されます。ロシアのウクライナ侵攻が続いており、今後その情勢次第でユーロに大きく動意づく可能性はあります。また、ユーロは同盟国通貨であり、まだユーロ圏各国の経済格差が改善されていないこともあり、加盟国一カ国の経済情勢によってネガティブ反応も出やすいことにも注意が必要です。域内貿易改善が続けば、ユーロの支えとなりそうですが、上値は限られると見ています。