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【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】

FX取引には数多くの通貨ペアがあり、投資家もそれぞれ自分が好む通貨や通貨ペアがあります。また、当然ながら各通貨は各自の個性があり、各通貨の特徴を前もって把握するのは重要です。

 

これまでも言及しましたが、FX取引でまだドルの取引が圧倒的に多いです。その後、ユーロと円が続いており、為替相場の全体像を確認するうえでこの3大通貨の動きが注目されます。

 

・ドル

中国の影響力拡大やユーロの台頭で、これまでの米国のモノすごいパワーやドルの圧倒的な地位は低下傾向でありますが、依然として米国は経済・軍事力で世界の中心に立っており、この先も相当長い期間にドルは魅力的な通貨であり続けるでしょう。

 

米国連邦準備制度理事会(FRB)は6月の連邦公開市場委員会(FOMC)で2022年3月から続いた利上げをいったん停止することを決定しました。ただ、7月会合で利上げを再開し、今年に2回の追加利上げ(0.25%×2回)の可能性が示唆されました。一部では年末にも利下げに転じるとの思惑もありますが、大方の予想では来年からFRBが利下げに動くとの見通しとなっています。現在の政策金利は5.00-5.25%となっています。

 

・ユーロ

1999年に欧州の統一通貨としてユーロが誕生し、2年間の実質的な移行期間を経て現在ユーロを導入して国は20カ国に拡大しています。ユーロの動向が為替相場に与える影響が増し、基軸通貨ドルの立場を脅かす存在となっています。

 

欧州中央銀行(ECB)は6月理事会で0.25%の利上げを決定し、昨年7月から8会合連続の利上げを実施しました。7月会合で追加利上げに踏み切る可能性が高く、9・10月会合での利上げ姿勢を見極める展開となっています。現在の政策金利は4.00%となっています。

 

・円

これまでの円はドル、ユーロに次いで流動性が高い通貨として、日本の金融システムが安定していること、日本が経常黒字、低いインフレ率が続いていることもあり、市場リスクが高まるような場面では安全資産として、選好される傾向があります。円安の影響もあり、昨年日本の貿易収支は21兆7284億円の赤字と赤字幅は過去最大となりました。

 

世界中の多くの中銀がインフレ対策として利上げが相次ぐなか、日銀は異次元の緩和策を継続している。市場では金融政策正常化への期待感が強まっていたが、4月に日銀総裁に就任した植田氏が緩和策の継続を強調し、政策修正への観測が後退しています。日銀は2016年1月から政策金利残高に対する0.1%のマイナス金利を実施し、今まで継続しています。

 

・ドル円

ドル円は昨年10月に151.95円まで約32年ぶりの高値を更新しました。その後は米利上げ終焉や日銀の金融正常化期待で今年1月には127円台まで買い戻しが入りましたが、米引き締め長期化や日銀の緩和継続でこの6月には145円台まで切り返しています。

 


日米金融政策の格差を意識したドル高・円安の流れは当面続きそうで、ドル円は日本政府の円買い介入を警戒しながら上値を試す動きが想定され、145円台を上抜けると再び150円台回復も視野に入りそうです。今後、いずれは米利上げ終焉と日銀の金融正常化が進むと予想され、ドル円の上昇トレンドに変化を迎える日が来るでしょうが、足もとで再び上昇基調を強めており、どの水準まで上値を切り上げるかが注目です。

 

今後、日米金融政策の修正や世界景気鈍化懸念でのリスク回避の円買いなどがドル売り・円買い要因になり得るが、日銀が金融政策の修正に動いても引き締めを強める可能性は低いことや日本の膨大な貿易赤字をかんがみると円買いが大きく進む可能性は低いと見ています。

 

・ユーロドル

米欧の金融政策スタンスの違いやロシアのウクライナ侵攻で、昨年はドル買い・ユーロ売りが先行し、昨年9月には0.95ドル台まで下落しました。その後はECBが引き締め姿勢を強めたことを受けてユーロに買い戻しが入ったが、米引き締め長期化思惑も根強く上値は限られ、今年は1.05-1.10ドルのレンジを中心に狭いレンジ内での動きが続いています。

 

米欧ともに利上げサイクルは遅くても今年後半に終焉に向かうとの見方が強く、ユーロドルは一方向に大きく傾きにくいと想定されます。ロシアのウクライナ侵攻が続いており、今後その情勢次第でユーロに大きく動意づく可能性はあります。また、ユーロは同盟国通貨であり、まだユーロ圏各国の経済格差が改善されていないこともあり、加盟国一カ国の経済情勢によってネガティブ反応も出やすいことにも注意が必要です。域内貿易改善が続けば、ユーロの支えとなりそうですが、上値は限られると見ています。

この連載の一覧
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
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第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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