管理変動相場制
中国では計画経済体制の下で長らく外貨取引はすべて政府が手掛けていました。2005年7月21日に、中国政府は「市場経済を基礎に、通貨バスケットを参考に調整する管理変動相場制」を導入すると通貨制度改革の実施を発表しました。
「管理変動相場制」は為替レートを市場メカニズムに任せる形をとるものの、その国の政府・中国人民銀行(中央銀行)が介入して為替レートを管理する制度です。ドル固定相場制に終止符が打たれ、人民元は毎日一定の幅で変動することになりました。
人民元の基準値
人民銀は日本時間の午前10時15分に人民元の基準値を発表します。人民銀は基準値に対し人民元を一定の許容範囲内での変動を許可しています。「管理変動相場制」を導入した2005年7月の許容範囲は±0.3%でしたが、現在はプラス圏で%に拡大しています。人民銀は今後も一段と拡大させる意向を示しています。
基準値は「前日の終値+通貨バスケット調整+逆周期因子調整」で決まると考えられています。逆周期因子による調整は、相場の過度な変動を抑えることを目的としていますが、詳しい内容は明らかにされていません。また、複数の通貨からなるバスケットに連動させるものであるが、通貨バスケットの中身は公表されていません。人民銀は「基準値を元安方向にも元高方向にも設定できる」相応の裁量があり、介入手段としても使用されています。
人民元のオンショア・オフショア市場
前も言及したことがありますが、人民元を取引する市場は二つあります。
一つは、中国本土の居住者が取引する国内(オンショア)市場(上海外国為替市場)で流通するものを「オンショア人民元(CNY)」といいます。もう一つは、香港、シンガポール、イギリスなど中国本土外の居住者が取引する国外(オフショア)市場で取引されるもので、オフショア人民元(CNH)といいます。
2つの市場は分断されており、為替レートも2つ存在します。CNHは中国国内の規制が適用されず、自由に売買できるため、中国本土のCNYに比べてより市場実勢に近いレートだといわれています。
人民元は危機に強い
人民元は危機に強い通貨と言われています。その理由として、
1. 中国が世界で上位の経常黒字国であること。経常収支の黒字はその国の通貨高要因になることがあります。
2. 外貨準備高が大きいこと。中国の外貨準備高は3兆ドルを超える世界トップであり、その外貨準備高は2位の日本を大きく引き離しています。
3.国際通貨として存在感が向上していること。世界全体の人民元の取引高はまだ低いものの、外国の企業や金融機関による人民元建て資金調達の増加とともに、中国の外為市場の取引額も増加しています。また、2015 年 11 月には、国際通貨基金(IMF)が人民元を SDR(Special Drawing Rights)に加えることを決定し、現在SDR構成比ではドル、ユーロに次ぐ第3位となっています。