ポジションの偏りと為替相場
マーケットのポジションがどうなっているか、まだそれによって為替相場の動きがどう変わるのかは、ポジションの偏りよって分かることがあります。
中長期的に大きな買い材料、あるいは売り材料が出るとポジションに大きな偏りが出てきます。ドル円は2021年後半から大きくドル高・円安が進んでいますが、これは日米金融政策の格差という大きな手がかりがあるからで、ドル円のポジションはドルロング・円ショートの積み増しが進みました。
新規にポジションを持つ時は、慎重にポジションメイクしますので、マーケットへのインパクトはあまりありません。それが徐々にポジションに傾きが大きくなると一つの手がかりにロスカットと、ストップロスを巻き込んだ動きとなり、損失を最小限に抑えようと、売りなり買いなりが集中的にマーケットに出ますので、非常に大きな破壊力となり、値を飛ばす原因となります。
そして、買戻しが一巡すると短期的にマーケットにショートもロングもない、ほぼスクエア(ノーポジ)の状態になります。また、ショートの買戻しが一巡し短期的にほぼスクエアな状態になると相場は高止まりし、ロングの投げが一巡しほぼスクエアな状態になると底値圏で相場は停滞します。
そして、時間の経過とともに、新たな思惑からポジションができ、再びできたポジションの偏りの逆に相場は動きやすくなります。高値圏や安値圏で、ロングが新たにできると買っても上げづらく、ショートが新たにできると下げづらくなることで、ある程度ポジションの偏りはわかります。
ポジションの偏りの確認
市場がよく参考にしているのが、商品先物取引委員会(CFTC)が発表する主要な先物のポジション状況です。CFTCは米国の先物行政を行う政府機関であり、投機筋の取引動向の統計が毎週発表されており注目されています。ただし、原則として火曜日の取引終了時点の数値が金曜日の取引終了後に発表されるので、情報の遅れを考慮する必要があります。
ドル円は11月13日に151.91円まで上昇し、昨年10月21日に記録した1990年7月以来の高値151.95円に迫ったが、その後は米感謝祭(今年は11月23日)を控えるなか、ポジション調整の動きが活発になり、11月21日は147円前半まで下落しました。この時にドル売り・円買いの新規材料が出たわけではありませんが、CFTCが発表した円ショートが13万249枚と約6年ぶりの大きい水準になっていることが話題になりました。ポジションの偏りがドル円の値幅を伴った動きにつながったわけです。
CFTC発表の円ネット・ポジション(単位:千枚)
また、今月の7日には植田日銀総裁の発言をきっかけに日銀のマイナス金利解除への思惑がくすぶり、円買いが強まりましたが、ドル円は1日で高値から5.50円超の暴落となりました。米感謝祭前にショートポジションの調整が進んだものの、円ショートポジションはまだ大きく残されているなか、ロスカットを巻き込んで大相場となりました。
為替相場のマーケットはとてつもなく大きく、特定の大口による影響は限られますが、ポジションの偏りはやはり注目した方が良いでしょう。