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第84回 加中銀とその金融政策

カナダ中銀(BOC)

カナダ中銀(BOC)は1935年、カナダ銀行法の基づきカナダ経済と金融の健全な発展を目的として設立されました。国内唯一の発券銀行としてカナダ銀行券の発行およびカナダドルの管理を行います。


BOCは、インフレ率を1-3%以内に抑えることが義務化されています。BOCは1998年以降に加ドルの為替レートに対する管理・介入はほとんどなされていません。

 

BOC理事会メンバー

BOC理事会は総裁と5人の副総裁、計6人で構成されています。総裁の任期は7年で、理事会で選ばれます。政府に解任権はありません。政府と中央銀行の協定に大きく反した場合にかぎり、財務大臣は中央銀行に対し政策を変更するよう書面で指示を出すことができますが、これまでこの権利が行使されたことは一度もなく、実際は政府から独立して総裁が金融政策を決定しています。

2024年BOC理事会メンバー

2024年、BOC政策金利発表日程

・1月24日 政策金利を5.00%に据え置き

・3月6日

・4月10日

・6月5日

・7月24日

・9月4日

・10月23日

・12月11日

 

近年の政策金利

2020年3月にコロナ感染拡大の対策として2回の緊急利下げを含む3回の利下げを行い、政策金利を1.75%から2010年6月以来の低水準となる0.25%まで引き下げました。


そして、世界中でインフレ高への警戒感が高まるなか、2年後の2022年3月会合から利上げを開始し、2023年7月には2001年4月以来の高い水準となる5.00%に引き上げました。その後の会合で政策金利の据え置きが続いています。

今年1月のBOC会合

1月会合では4月連続で政策金利を5.00%に据え置くことを決定しました。声明ではこれまでの「必要に応じ政策金利を引き上げる用意がある」という文言が削除され、基調インフレは依然懸念材料としつつも、今後の焦点は追加利上げの必要性ではなく、利下げ開始時期にシフトしつつあるとしました。


ただ、マックレム総裁は「新たな動向がインフレを押し上げれば、なお利上げが必要となる可能性はある」とし、追加利上げの可能性を排除していないことを強調しました。また、「経済がおおむねわれわれの見通しに沿って推移すれば、政策金利をどの程度の期間5%に維持するかが今後の議論になる」という見通しを示しました。

 

今後の政策見通し

次回の3月会合では政策金利の据え置きが織り込まれています。1月会合後に発表された、カナダの1月雇用データは、新規雇用者数が予想を大きく上回る3.73万人増となり、失業率は5.7%と予想以上に改善されました。一方で、1月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.9%と昨年12月の+3.4%から予想以上に鈍化し、伸び幅は昨年6月以来の低水準となりました。

 

消費者の需要低迷が見られ、市場ではBOCが4月にも利下げを開始するとの思惑がくすぶり、6月までの利下げ開始の確率は8割以上に高まっています。ただ、インフレの先行きに対する不透明感は極めて高く、今後の経済データを確認しながらの判断になります。

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第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
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第68回 FXにも山・谷がある
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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