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第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に

自民党総裁選、石破氏が新総裁に

過去最多の9人が立候補した今回の総裁選は石破氏、高市氏、小泉氏の三つ巴の戦いでした。第1回投票では、国会議員票との合計で高市氏が181票、石破氏が154票、小泉氏が136票を獲得し高市氏、石破氏の2人による決選投票になりました。


そして決選投票は国会議員票367票と、都道府県連票47票を合わせた414票で争われ、石破氏が215票、高市氏194票で石破氏が逆転で勝利しました。来月1日には臨時国会が召集され、石破氏が新たな首相に指名され新内閣が発足します。



石破氏の勝利要因

43歳の小泉進次郎・元環境相や、初の女性首相への期待が高まった高市早苗・経済安全保障相に比べ、今回が5度目の総裁選への出馬となったベテランの石破氏には不利な面もありました。ただ、高市氏の「右寄り過ぎる」、小泉氏の「経験不足」の評価が「悪さ加減の選択」とも言われた選挙戦で、石破氏への消去法的な支持が積み重なり、大逆転の勝利となりました。


総裁選は「選挙の顔」を選ぶ意味合いを持ち、石破氏の勝利は、次期衆院選や来年の参院選をにらみ、旧安倍派などの裏金事件で傷付いた党のイメージ回復を期待した国会議員らの危機感の表れとも言えます。


また、立憲民主党の代表に野田佳彦元首相が選ばれたことで、政策的に一定の安定感のある石破氏に票が集まったとの見方もあります。

金融市場は乱高下

第1回投票で「アベノミクス」の継承を掲げ、日銀の利上げに否定的な見解を示していた高市氏が1位となり、株買い・円売りで反応しました。日経平均が900円超高の39829.56円と高値引けし、4万円大台回復への期待が高まり、ドル円は146円半ばまで急上昇しました。


ところが、決選投票で石破氏が高市氏に大逆転勝利とサプライズの結果となり、株高・円安は急速に巻き戻されました。ナイト・セッションの日経平均先物は大証終値比2200円超の急落となり、ドル円は一時142.80円まで売りに押されました。


ドル円

石破ショックの円高・株安は一時的か

石破ショックの円高・株安が進みました。財政再建を重視し、株式の売却益などに課す金融所得課税の強化に意欲を示す石破氏の政策スタンスへの警戒感で来週もこの流れが続く可能性があります。経済政策運営で明確な財政再建重視姿勢を示し、物価高で国民生活が大変なときに増税を打ち出すと、一気に反発を受ける可能性もあります。


ただ、市場の目線は徐々に衆院の解散・総選挙にシフトし、野党支持層や無党派層の支持も期待できる石破氏が世論調査で高めの支持率を得ることができれば、結果的に石破氏の政策を評価する声も増えてくる可能性があります。石破氏が新総裁に選ばれたことで、総選挙で自民党が大負けするリスクは低下したとの見方も多く、「新政権の安定した政策運営が期待できる」との声も少なくありません。


石破氏は今回の候補者の中でもタカ派発言が目立ったが、これから金融政策を巡りどのようなスタンスを持つかは大きなポイントになります。金融政策は石破氏がそこまで傾倒している分野ではないので、日銀の判断に任せるというスタンスになりそうです。市場では日銀の次の利上げは12月と予想していますが、総裁選の結果は影響を与えないでしょう。


石破氏の当選で、日銀の金融政策を含めて現在の岸田政権から大きく方向性は変わらないと見られ、市場の焦点は再び今後の日銀の利上げ時期、米国の大統領選及び利下げの行方など、総裁選以前のテーマに集まりそうです。

この連載の一覧
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
【FX、やるならお得に】第22回 米国と結びつきが深い通貨(加ドル)
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【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
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【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
【FX、やるならお得に】第9回 外国為替市場と為替レート
【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
【FX、やるならお得に】第6回 FX、利益を得る仕組み
【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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