●米連邦公開市場委員会(FOMC)
7月30-31日に開催されたFOMCでは、政策金利を8会合連続で5.25-5.50%に据え置くことを参加者12人の全会一致で決定しました。
声明文
声明文では、物価の上昇ペースが幾分緩和されたとし、米連邦準備理事会(FRB)の物価目標の2%達成に向けて進展があったとし、インフレ率が低下傾向にあるとの認識を示しました。
また、雇用情勢に関しては雇用者数について前回の「力強い増加を維持」から「緩やかに増加」に下方修正し、労働市場が緩和しているとの認識を示しました。
パウエルFRB議長の会見
7月末のFOMC後、パウエルFRB議長は会見で「今回の会合でも利下げすべきかどうか議論があった」と述べ、「インフレ率を引き下げるためにこれ以上労働市場を冷え込ませる必要はない」との見解を示しました。
また、9月利下げの可否については「データ次第」としながらも「9月会合で利下げが議題に上る可能性がある」と含みを持たせました。
次回9月FOMCでの利下げ見通し
7月FOMCを通過し9月会合での利下げ観測が強まるなか、7月米雇用統計が弱い内容となり、景気後退(リセッション)懸念の高まりで大幅利下げを織り込む動きとなりました。
7月FOMC、7月米雇用統計を受けて、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」によると、9月FOMCでの利下げは確実視され、0.25%利下げ確率は5割程度、0.50%利下げ確率は5割程度となり、一部では9月FOMCを待たずに緊急利下げに踏み切るとの観測も出ました。
ただ、7月米消費者物価指数(CPI)、7月米小売売上高や新規失業保険申請の結果を受けて9月FOMCで0.25%の利下げにとどまるとの見方が強まっています。
8月下旬にはカンザスシティー連銀が主催するジャクソン・ホール会議も開催され、パウエルFRB議長も講演する予定です。同イベントなどで9月利下げを支持する内容が示されるのか、実施する場合の利下げスピードや利下げ幅などについてどのような示唆が得られるのかが注目されそうです。
●日銀金融政策決定会合
日銀は7月30-31日の金融政策決定会合で3月のマイナス金利政策の解除に続く追加利上げを決定し、政策金利を0.25%程度に引き上げました。また、長期国債買い入れの減額計画を公表し、原則毎四半期ごとに4000億円程度ずつ減額する方針を示しました。
主な意見
この会合の主な意見では、利上げ反対意見もあるなかで、物価の上振れリスクに対する懸念や、1%程度への段階的な利上げを提唱する意見などが出たことが明らかになりました。
また、物価目標の実現の確度はさらに高まったが、人手不足の結果、供給不足・需要超過の業種が増えており、物価の上振れリスクに注意する必要があるとし、海外のインフレやこれまでの円安による輸入物価の上昇に加え、タイトな労働需給や労働時間の上限規制の影響もあり、価格上昇圧力が続く可能性に懸念が示されました。
植田日銀総裁の会見
7月の日銀金融政策決定会合後、植田日銀総裁の会見で「実質金利は非常に深いマイナスにある」と何度も強調し、過去の利上げ局面において上限となった「0.5%の壁」も「特に意識していない」と語りました。
これまで慎重派イメージの植田日銀総裁の今後数回の利上げにも前向きな姿勢をにじませた発言に市場は驚き、市場では株安・円高が進みました。米景気減速への懸念が高まったことも拍車をかけて5日に日経平均は過去最大の下げ幅を記録し、大幅な円高となり、その翌日には日経平均が一転過去最大の上げ幅をつけて、円は大幅に売り戻されるなど、日本の金融市場は不安定な動きとなりました。
更に7日、今度はタカ派の印象が強い内田日銀副総裁が「金融資本市場が不安定な状況で、利上げをすることはない」と発言し、株式市場は急騰し、円が大きく売り戻されました。日銀の要人らが久々に存在感を示したが、不本意にもその発言は金融市場の不安定化につながりました。
日銀の追加利上げ見通し
次回の日銀金融政策決定会合は9月17-18日に予定されています。この9月会合を含め、年内に後3回の日銀会合が予定されています。9月会合では金融政策の据え置きが予想されています。
7月会合後、10月日銀金融政策決定会合での追加利上げ期待が高まっていたが、金融市場の不安定な動きも大きな懸念材料となり、年内追加利上げ期待は後退しました。ただ、年内追加利上げ・据え置きをめぐり思惑は交錯しており、今後も金融政策見通し関連のヘッドラインで円相場は神経質な動きが続く可能性が高いでしょう。