為替市場ではさまざまな通貨ペアがあります。それに一つの通貨は通貨ペアによって、逆の動きになることがあります。例えばドル円は上昇し、ドル高・円安となっているのに、ユーロ円は下落し、ユーロ安・円高になる場合があります。では、この時は円高、それとも円安のどちらでしょうか。
それを計るものが「実質実効為替レート」です。
実質実効為替レート
実質実効為替レートは、一般的には「通貨の実力」や「内外の物価格差を考慮した円の実質的な価値」などと説明されることが多いです。より厳密に言えば、実質実効レートとは、「自国の財・サービス価格の海外の財・サービス価格に対する相対比(割安・割高度)」を示すものであります。また、その状態をもたらしている為替レートのことと言い換えることもできます。
また、実質実効レートは普段目にする2国間の通貨の交換比率である「ドル円レート」などに、「実質」、「実効」という2つの要素を加味したものと言えます。
実質為替レート
実質為替レートは「自国の財・サービス価格のある外国の財・サービス価格に対する相対比(割安・割高度)」を示すものであります。一般的には外貨建て名目為替レートをベースに、基準時点を100として月次で計算されます。
つまり、内外物価変動による通貨の購買力(財・サービスを購入する力)の変化を名目為替レートに加味したものとなります。
1ドル=130円が、1ドル=100円になった場合、円サイドからみるとドルが下落しています。これを「ドル安」あるいは「円高」と表現することが多いです。
為替相場でドル円が130円から100円に下落した時、日本で物価の上昇が見られなかったとすると、円高が進んだ後の100円はその前の100円と同じ価値を持っていることになります。一方で、米国の物価が上昇したとすると(1ドル=100円)、新たに100円で購入できるようになった1ドルは、かつての購買力(価値)を持っていないことになります。
物価が10%上がったとすると、事前に1ドルであった財は、1.1ドルに値上がりしており、事後では1÷1.1ドル単位しか購入できません。つまり100円で購入できるドルは、実質的には1÷1.1ドルの価値なので、130円から100円までの値下がりとはなっていません。
このように、物価の変化まで考慮に入れた為替レートが実質為替レートです。
実効為替レートは、ドル円やユーロ円など特定の為替レートをみるだけでは判断できない通貨の総合力を示す指標です。日本の株取引では市場の平均的な状態を示す日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)などがありますが、為替市場でそれにあたるのが実効為替レートです。
具体的には、ある国の貿易額における相手国別の割合をウェイトとして用いて、当該国とそれぞれの国の通貨との間の為替レートを加重平均して算出します。こちらも、外貨建て名目為替レートをベースに、基準時点を100として計算されるのが一般的です。
実効為替レートのうち、物価上昇率を加味しないものを名目実効為替レート、物価上昇率を加味したものを実質実効為替レートといいます。名目為替レートだけではなく、相手国の物価上昇率も考慮した実効為替レートを見ることで、より正確に通貨の相対的な競争力を見ることが可能になります。
名目為替レートは比較する2国間の通貨の交換比率を表します。米国と日本円の通貨を比較した場合、米国に日本よりも経済的な好材料があるなどでドルの需要が高まれば、名目為替レートは円安・ドル高になり、米国よりも日本に経済的な好材料があれば名目為替レートは円高・ドル安に向かいます。
しかし、名目為替レートはあくまでもドルと円の2国間で比較しているにすぎません。
日本が米国よりも好景気で、円高・ドル安が続いていたとしても、それは日本と米国の間で比較しているだけです。両国以外の世界中の国々の方がはるかに好景気になっていたような場合、世界全体で相対的に見れば日本はたいして好景気でないと考えることができます。
このように、日本と米国の2国間の名目為替レートを見ているだけでは、相対的な円の実力を把握することができません。そこで、ある通貨の相対的な実力を見るときは「実効為替レート」という指標を使います。