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第38回 先物市場で投機筋の動きを把握

外貨の売買を契約した時から、実際に外貨の受け渡し(売買の実行)が行われるまでの期間の長さによって、外国為替取引は直物為替(spot exchange)取引と先物為替(forward exchange)取引の二つに分けることができます。

 

直物為替取引

直物為替取引とは外国為替の売買契約成立と同時に、もしくは成立後2営業日以内に、実際に為替の受け渡しが行われる取引です。外貨現金の両替、外貨預金の入出金、外貨建て海外送金において依頼者が銀行に自国通貨建ての相当額を払い、銀行が外貨を送金することなどが挙げられます。

 

先物為替取引

先物為替取引とは将来の特定日ないし一定期間後に、契約時に定めた一定条件(為替の受渡場所、通貨種類と金額、為替相場、受渡期日など)で為替の受け渡しを行う取引のことです。先物取引が行われる理由は、為替相場の変動に伴う危険を回避するためです。

通貨オプション取引は、外国通貨を将来の一定時期(行使期間)にある価格(行使価格)で売買する権利を売買する取引のことを言います。

       

「先物為替予約」とは、将来の一定の期日または期間を予約の実行日または期間と定めて、銀行と外貨の決済を行う為替レートをあらかじめ取り決めておく為替売買取引です。「予約」との語句がありますが、銀行との外国為替取引上では、「外国為替予約取引約定書」により、「売買取引」と規定しています。銀行と顧客との間であらかじめ売買価格(先物為替相場)を決めて約定します。一度予約すると原則、取消はできず、期日に受け渡し(予約の実行)の義務が生じます。このため銀行にとっては与信取引として取り扱われます。これに対して、「通貨オプション取引」とは、外国通貨を将来の一定時期(行使期間)にある価格(行使価格)で売買する権利を売買する取引のことを言います。

 

通貨オプション取引

通貨オプション取引には以下の4通りの取引があります。

 

A.コール・オプション(外貨を買う権利)の「買い」

B.コール・オプション(外貨を買う権利)の「売り」

C.プット・オプション(外貨を売る権利)の「買い」

D.プット・オプション(外貨を売る権利)の「売り」

 

これらに対し、FX取引は差金決済による取引です。差金決済とは、一般の外国為替取引とは異なり、通貨の現物売買を伴わず、買い付け通貨の対価とその通貨の売り付け対価の差額の授受により決済することをいいます。FX取引では、証拠金を事前に入金してから取引する仕組みとなっています。

 

先物取引所の建玉は相場を読む一つのポイント

前も為替の動向に影響を与える機関投資家に言及しましたが、先物取引所の建玉を見ればヘッジファンドなど投機筋の方向性がある程度把握できます。米国先物取引所の建玉で売り・買いのどちらが多いかを見れば、投機筋が今後の相場をどう見ているのかをある程度方向感がわかります。

米国商品先物取引委員会(CFTC)は毎週金曜日にその週の火曜日時点の建玉を公表します。上場されている商品ごとに商業ペースの取引と投機筋の取引の建玉を見ることができます。

 

シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)では円やユーロ、スイスフラン(CHF)、オーストラリアドル(豪ドル)などの対ドル相場の先物も取引されています。例えば、円の買い持ちが売り持ちより多ければ、投機筋は今後円高の見方が優勢であると判断できます。ただ、2008年9月のリーマン・ショックでヘッジファンドは大きな損失を被り、シカゴの先物市場で為替の建玉が減っているだけではなく、一方向に大きく傾くことが少なくなり、注目度は低下しています。

この連載の一覧
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
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【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
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【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
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【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
【FX、やるならお得に】第6回 FX、利益を得る仕組み
【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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