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第144回 加ドル、米加首脳会談に注目

カナダの総選挙、与党が勝利

4月28日に行われたカナダ下院(定数343)総選挙は、カーニー首相率いる与党・自由党が第一党となり政権維持を確実にしました。年明けには野党保守党が支持率で与党自由党を20ポイントリードし、与党の敗北が確実視されていたが、「反トランプ」姿勢を鮮明にした金融の専門家で国際派のカーニー首相が支持を集めました。自由党が単独政権をつくるには過半数の172議席が必要だが、議席は過半数に届かない見通しとなっています。

 

カーニー首相は、カナダを「51番目の州」として併合するというトランプ米大統領の脅しや関税措置に「決して屈しない」と改めて表明し、国民に対しては「カナダを祖国と呼ぶ人を代表する」ことを約束し、結束を呼びかけました。多くのカナダ国民は米国との貿易戦争に対処するのにカーニー氏が適任だと考えています。

 

米加の関税合戦

トランプ氏が米大統領への返り咲き、関税の第1弾として中国、メキシコ、カナダへ追加関税を賦課しました。カナダ原産品に対しては、エネルギー・同資源に10%、それ以外の産品に25%の追加関税が課されました。また、カナダに限らないが、鉄鋼やアルミ、外国製自動車への輸入関税を賦課したことを受けて、カナダも米国から輸入する鉄鋼やアルミ、米国製自動車への報復関税を決めました。

 

また、トランプ米大統領はカナダが米国に巨額の貿易赤字をもたらしていると批判し、カナダは米国の51番目の州になるべきだという考えを改めて示しました。トランプ米大統領による高圧的な政策などを受け、カナダでは国民の反米感情が高まっています。

 

加中銀、4月会合で金利を据え置き

カナダ中銀(BOC)は4月の会合で米国の関税による不透明感を考慮し、追加利下げが見送り、政策金利を2.75%に据え置くことを決定しました。金利据え置きは8会合ぶりとなります。次回の会合は6月4日に予定されているが、米加の関税合戦への懸念の高まりや景気悪化が確認されると、利下げを再開するのではなく、大幅の利下げに踏み切る可能性もあります。

 

BOCは、貿易戦争が輸出、需要、投資、雇用に打撃を与えているとし、米通商政策と関税の影響という不確実性のため、経済と物価の先行きを予想することが難しいとの見解が示されました。また、関税に直面した状況で金融政策は物価安定に主眼を置きつつ、経済を支援するべきという点で一致したと指摘しました。

 

加ドルの買い戻しは続くか

カナダは米国と国境を接し、貿易・経済、エネルギー、安全保障など多くの分野で緊密 な関係にあります。米国はカナダへの最大投資国 であり、カナダは米国への投資国としては世界で第 3 位を占めています。 カナダは、米国に 対する最大のエネルギー供給国でもあります。

 

トランプ氏が大統領に就任し、友好国のカナダに攻撃を強めたことを受けて加ドルは急落しました。2月にドル/加ドルは1.48加ドル手前までの上昇と、大きく加ドル安が進みました。ただ、その後は市場で米国売りが高まったことで、1.37加ドル台まで加ドルの買い戻しが進み、トランプ米大統領が就任した後の下げを取り戻しています。トランプ関税の不確実性で今後、加ドルの買いが続くかどうかは不透明です。関税の着地点はトランプ氏本人も定かではないでしょう。


ドル/加ドル 月足 


加ドル、米加首脳会談に注目

カナダの総選挙で与党が勝利を確実にしたことを受けて、トランプ米大統領は「カナダとは素晴らしい関係を築けると思う」「カーニー加首相と電話会談し、合意を結ぼうと言った」と述べました。また、来週にカーニー首相が米国を訪問すると明らかにし、米加首脳会談が注目されます。関税をめぐり会談がうまくいかないと、中国に対してと同じように関税を乱発し、脅かしに走る可能性もあります。

この連載の一覧
第144回 加ドル、米加首脳会談に注目
第143回 日米協議、円安是正に一安心も警戒残る
第142回 関税方針、トランプ氏の正念場
第141回 トランプ氏の脅かし、中国には通用しない
第140回 トランプ関税、ポンド相場への影響
第139回 RBA、追加利下げは5月か
第138回 英中銀、慎重な利下げペース維持
第137回 ドイツの大規模な財政拡大策
第136回 中国、今年GDP成長目標を5%前後に
第135回 米消費者信頼感指数、消費鈍化を示唆
第134回 リーダー不在のEU
第133回 各国中銀の利下げも、トランプ関税効果を薄めるか
第132回 円と加ドル、IMMポジションの変化
第131回 FX取引、投資詐欺に注意
第130回 FX、リスクも把握した上で取引を
第129回 トランプ氏VS中国
第128回 トランプトレードはいつまで続くか
第127回 ポジションの手仕舞い
第126回 今年最後の日米金融政策会合
第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動
第123回 ポジションの管理
第122回 ドル円、160円台復帰はあるか
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
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【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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