カナダの総選挙、与党が勝利
4月28日に行われたカナダ下院(定数343)総選挙は、カーニー首相率いる与党・自由党が第一党となり政権維持を確実にしました。年明けには野党保守党が支持率で与党自由党を20ポイントリードし、与党の敗北が確実視されていたが、「反トランプ」姿勢を鮮明にした金融の専門家で国際派のカーニー首相が支持を集めました。自由党が単独政権をつくるには過半数の172議席が必要だが、議席は過半数に届かない見通しとなっています。
カーニー首相は、カナダを「51番目の州」として併合するというトランプ米大統領の脅しや関税措置に「決して屈しない」と改めて表明し、国民に対しては「カナダを祖国と呼ぶ人を代表する」ことを約束し、結束を呼びかけました。多くのカナダ国民は米国との貿易戦争に対処するのにカーニー氏が適任だと考えています。
米加の関税合戦
トランプ氏が米大統領への返り咲き、関税の第1弾として中国、メキシコ、カナダへ追加関税を賦課しました。カナダ原産品に対しては、エネルギー・同資源に10%、それ以外の産品に25%の追加関税が課されました。また、カナダに限らないが、鉄鋼やアルミ、外国製自動車への輸入関税を賦課したことを受けて、カナダも米国から輸入する鉄鋼やアルミ、米国製自動車への報復関税を決めました。
また、トランプ米大統領はカナダが米国に巨額の貿易赤字をもたらしていると批判し、カナダは米国の51番目の州になるべきだという考えを改めて示しました。トランプ米大統領による高圧的な政策などを受け、カナダでは国民の反米感情が高まっています。
加中銀、4月会合で金利を据え置き
カナダ中銀(BOC)は4月の会合で米国の関税による不透明感を考慮し、追加利下げが見送り、政策金利を2.75%に据え置くことを決定しました。金利据え置きは8会合ぶりとなります。次回の会合は6月4日に予定されているが、米加の関税合戦への懸念の高まりや景気悪化が確認されると、利下げを再開するのではなく、大幅の利下げに踏み切る可能性もあります。
BOCは、貿易戦争が輸出、需要、投資、雇用に打撃を与えているとし、米通商政策と関税の影響という不確実性のため、経済と物価の先行きを予想することが難しいとの見解が示されました。また、関税に直面した状況で金融政策は物価安定に主眼を置きつつ、経済を支援するべきという点で一致したと指摘しました。
加ドルの買い戻しは続くか
カナダは米国と国境を接し、貿易・経済、エネルギー、安全保障など多くの分野で緊密 な関係にあります。米国はカナダへの最大投資国 であり、カナダは米国への投資国としては世界で第 3 位を占めています。 カナダは、米国に 対する最大のエネルギー供給国でもあります。
トランプ氏が大統領に就任し、友好国のカナダに攻撃を強めたことを受けて加ドルは急落しました。2月にドル/加ドルは1.48加ドル手前までの上昇と、大きく加ドル安が進みました。ただ、その後は市場で米国売りが高まったことで、1.37加ドル台まで加ドルの買い戻しが進み、トランプ米大統領が就任した後の下げを取り戻しています。トランプ関税の不確実性で今後、加ドルの買いが続くかどうかは不透明です。関税の着地点はトランプ氏本人も定かではないでしょう。
ドル/加ドル 月足
加ドル、米加首脳会談に注目
カナダの総選挙で与党が勝利を確実にしたことを受けて、トランプ米大統領は「カナダとは素晴らしい関係を築けると思う」「カーニー加首相と電話会談し、合意を結ぼうと言った」と述べました。また、来週にカーニー首相が米国を訪問すると明らかにし、米加首脳会談が注目されます。関税をめぐり会談がうまくいかないと、中国に対してと同じように関税を乱発し、脅かしに走る可能性もあります。