ドル円、上値警戒感が継続
ドル円は4月29日に34年ぶりの高値となる160.17円まで上昇した後、日本当局の円買い介入や米追加利上げ思惑の後退で一時151円台まで円の買い戻しが入りました。ただ、この先も日米の金利差は縮まらないとの見方が強いなか、ドル円は157円台まで切り返しています。
米4月消費者物価指数(CPI)が予想比下振れたことや、日本当局の円買い介入継続への警戒感でドル円は伸び悩んでいるものの、上値警戒感は払しょくされていません。引き続き日米金融政策の先行きに注目する展開ですが、米金利の高止まり観測が一段と強まると、仮に日銀が追加利上げを踏み切ったとしてもドル円の上昇トレンドに変化が見られるかどうかは疑問です。
恐ろしいのは日銀が早期に追加利上げを実施したにもかかわらず、円安が続くことです。日銀が金融政策の引き締めを加速させても円安を止められなかった場合、ドル円は180円、200円に向かった動きが警戒されるでしょう。
200円超えは1985年のプラザ合意前
ドル円が200円を上回っていたのは「プラザ合意」があった1985年までさかのぼります。この年、米国は「双子の赤字」と呼ばれる財政赤字と貿易赤字でニッチもサッチもいかず、日本に泣きついて為替の円高・ドル安を誘導しました。いわゆる、同年9月のプラザ合意のことです。
合意後、為替レートは1ドル=240円前後から翌86年には約168円(年平均レート)に急上昇しました。思惑通りに日本の輸出は減少したが、円が高くなった分、輸入額はそれ以上に減少し、貿易黒字は余計に拡大することになりました。やがて日本では金余りが起き、海外不動産を買いあさり、パリのエルメス本店でスカーフを爆買いする女子大生やOLが現れました。
200円になったら我らの生活は…
ドル円は年末までにはいったん円安は落ち着き、円高方向に切り返していくとの見方は依然として多いです。ただ、今後2、3年以内に1ドル200円時代が来る可能性があるとの声も少なくありません。
200円になったら150円からさらに33%の円安になることで、当然ながらほぼすべてのモノが値上がりするでしょう。特に資源はほぼすべてが輸入ですから、これらは企業努力の余地はなく、3割以上の値上げにある可能性が高いでしょう。原材料の輸入関連でラーメンなどの麺類やハンバーガー、焼き肉などは軒並み暴騰することが予想されます。また、企業は値上げ幅を抑えるために人件費や下請け中小企業への支払いを縮小し、価格転嫁の幅を抑えようとする可能性があります。
急激な円安は逆に賃金を下げる方向に働き、そうなれば人々が使えるお金が減るので、景気は悪化します。不景気下の物価上昇を「スタグフレーション」といい、これが国民の生活にとっては最悪のシナリオとなります。
一方で、円安は株高などにつながり、円安で生活が苦しくなる庶民と株式を持つ資産家との格差がいっそう広がる可能性があります。