米雇用統計、ドル相場に大きな影響
第30回で経済指標について言及しましたが、毎月第1週金曜日に発表される米雇用統計は注目度が高く、その結果はドル相場に大きな影響を与えています。米国雇用統計とは、アメリカの雇用の情勢(失業している人数や就業している人数など)を調査した統計で、最も重要な経済指標の一つです。
先週は米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果公表とパウエルFRB議長の会見を受けて、ドル売りが先行したが、週末に米雇用統計を受けてドルが急速に買い戻されました。1月米雇用統計で、非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に上回る51.7万人増となり、同失業率が3.4%と約53年ぶりの低水準となったことを受けて、FRBが早期に利上げを停止するとの思惑が後退し、ドルが買われました。ドル円は128円半ばから131円前半まで大きくドル高・円安に振れました。
米雇用統計の結果で、何がわかる?
米国雇用統計では10数項目が発表されますが、約16万の企業や政府機関の中から約40万件のサンプルを調査・集計し発表します。特に注目される数字は「非農業部門雇用者数」や「失業率」です。前者は、農業関連以外の産業で働く人の数や増減をまとめたデータです。後者は、米国内の失業者数を労働力人口(失業者数と就業者数の合計)で割った数値です。雇用統計は雇用サイドから見た米国の経済の状況が把握できる指標です。
米雇用統計と金利や為替との関係
雇用者数が市場予想を上回るときや、失業率が市場予想を下回るときは、景気が市場予想より良いことを意味します。株価は上がる可能性が高く、景気が好転すると個人や企業の間で資金需要が増えるため、長期金利が上昇する傾向にあります。金利の低い国の通貨を売り、金利が高い国の通貨を買った方が多くの金利を得られるため、相対的に金利の高くなったドルは買われやすくなります。
逆に雇用者数が市場予想を下回るときや失業率が予想を上回るときは、景気が市場の予想より悪いことを意味します。株価が下がる可能性が高く、需要の減退、長期金利の低下により、ドルが売られやすくなる傾向があります。
雇用統計が重要視される理由
米雇用統計ほどいつの時代でも注目されてきた統計はありません。雇用統計が重要視されているのは、米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が金融政策を決める上でとても重視している経済統計であるからです。FRBの役割として特に重要なのは、国民の雇用を最大化することと、物価を安定させることであり、米国雇用統計は、自国の金融政策の方向を左右するのです。
80年代くらいまでは失業率が重要視されたが、90年代以降は非農業部門雇用者数がもっとも注目されるようになりました。非農業部門雇用者数の方が景気動向を敏感に反映すると考えられているからです。
FX取引において経済指標は重要な情報
FXなど市場取引において情報が重要であることは言うまでもありません。この情報には、有力な市場参加者の動向、市場の需給見通し、政策担当者の意向や方向性、政治情勢の変化など多く含まれていますが、経済状況を表す経済指標は不可欠な情報の一つであります。
経済指標の結果を受けた為替レート