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第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ

金利と為替

金利の動きと為替には密接な関係があります。金利の変動が為替に影響し、逆に、為替の変動が金利に影響することもあります。

円の金利が低く、米国のドルの金利が高い場合、人々はより有利な金利を求めて円の資産の比率を減らして、ドルの資産の比率を増やそうとします。これにより、金利の高いドルを買うという動きが強まり、為替は「円安・ドル高」となります。

 

また、為替が「円安・ドル高」となった場合、米国からモノを輸入する時の物価が高くなります。輸入業者は、その物価上昇分を国内で販売する際の値段に反映させます。その結果、国内の物価が上昇しインフレの傾向が強まると、物価の上昇を押さえるために、日銀は金利を引き上げるという行動に出ます。

 

国によって預金金利は異なる

世界には預金金利が高い国があれば低い国もあり、各国の預金金利は差があります。それは銀行の預金金利のペースとなるのが政策金利で、その政策金利は国によって異なるからです。


政策金利は、各国の中央銀行が銀行にお金を貸す時の金利のことを指し、銀行はこの政策金利を基準に企業や個人の預金や融資の金利を決めます。

中央銀行は基本的に景気が過熱した時に政策金利を引き上げ、インフレや過度の投資を抑えます。逆に景気が悪化すると、政策金利を引き下げ、デフレーションを抑制しつつ投資を促し、景気回復を図ります。

 

主要国の政策金利(2023年4月20日現在

 

金利差が拡大するとお金は金利が高い国へ

各国預金の金利差は同国の政策金利の変動によって拡大したり縮小したりと変わります。例えば、日本と米国の預金金利差が拡大すれば、金利が低い円預金を解約して金利が高いドル預金に換える動きが強まります。つまり円を売ってドルを買う動きが高まるので、この金利差拡大は金利の低い国の通貨下落・金利の高い国の通貨上昇につながりやすいです。

 

高金利が魅力の新興国通貨、リスクも大きい

各国の政策金利を見てみると、基本的に新興国の金利が高いことが分かります。発展途上の新興国は将来にわたって期待される高成長の反映としての高金利もあり、これはポジティブに評価できますが、国内資本の蓄積がなく、経済発展のためには海外マネーを借り入れる必要があり、借金国ゆえの高金利になっている国もあり、この国の通貨は高いリスクを抱えることになります。


「リスクのないところにリターンはない」といい、新興国の高金利は非常に魅力的ですが、新興国のリスクも高く、新興国への投資や新興国通貨の取引には慎重になるべきです。コロナ禍でメキシコやブラジル、南アフリカ、トルコなど新興国通貨が軒並み下落したように、世界が危機に直面し投資家のリスクオフ志向が強まる時は新興国からは資本が流出し、その国の通貨は下落しやすいです。新興国通貨の流動性が主要国通貨に比べ相対的に低く、経済指標発表のみならず金融政策変更やその他政治的要因、さらには地政学的リスク等の要因による突発的な相場急変動が起こりやすい環境下にあります。

この連載の一覧
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
【FX、やるならお得に】第22回 米国と結びつきが深い通貨(加ドル)
【FX、やるならお得に】第21回 資源国通貨(豪ドル)
【FX、やるならお得に】第20回 変動幅が大きい通貨(ポンド)
【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
【FX、やるならお得に】第18回 取引量が第2位の通貨(ユーロ)
【FX、やるならお得に】第17回 取引量が最も多い通貨(ドル)
【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
【FX、やるならお得に】第15回 順張り・逆張り
【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
【FX、やるならお得に】第9回 外国為替市場と為替レート
【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
【FX、やるならお得に】第6回 FX、利益を得る仕組み
【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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