来週、日米で政策金利発表予定
来週の30-31日に日米で金融政策イベントが予定されています。どちらも政策金利の据え置きがメインシナリオとなっていますが、一部では日銀が追加利上げに踏み切るとの見方が強まっており、日銀の金融政策決定会合を受けて円相場は値幅を伴った動きが見込まれます。
来週の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利の据え置きが完全に織り込まれています。6月FOMCでは年内3回を見込んでいた利下げ見通しを1回に修正する政策金利シナリオが公表されたが、この金利見通しに変化があるかどうかなど声明文やパウエルFRB議長の会見内容が注目されます。
日銀、追加利上げはあるか
日銀は今年の3月金融政策決定会合で、マイナス金利政策の解除を決めました。 17年ぶりに政策金利を引き上げ、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃も決めました。また、6月会合で長期国債の買い入れを減額する方針を決め、来週の7月会合で今後1-2年間の具体的な減額ペースを発表することを明らかにしました。
個人消費の弱さが続いており、7月会合での追加利上げは見送るとの見方が依然として多いです。日本経済の緩やかな回復基調が確認できていますが、長引く物価高に賃金上昇が追いつかず、実質賃金は2年以上マイナスです。消費者の節約志向が高まり、サービス業の景況感に影を落としています。個人消費が失速しないように政府・日銀は警戒を強める必要があります。
ただ、6 月消費者物価指数では生鮮食品とエネルギーを除いたいわゆるコアコアでもインフレ率の下げ止まりが確認され、日銀が発表した6月の基調的なインフレ率を捕捉するための指標は、3つのうち2つが前月より伸び率が拡大しました。
足元のインフレ動向が日銀のシナリオに沿って推移していることから、今会合での利上げに前向きな当局者もいる一方で、高水準の賃上げを背景に個人消費が想定通りに回復していくかを今後のデータや情報などで確認したいとし、今回会合では利上げ見送りが妥当な選択肢と考えている当局者もいます。足元で弱めの個人消費が追加利上げに踏み切るかどうかの判断を複雑化しているのは確かです。
来週の日銀金融政策決定会合で追加利上げを行うとの予想は約3割程度と6月会合後から大きくは変化せず、依然として10月会合での利上げ予想が最も多いです。ただ、9月会合での利上げ予想が徐々に増えており、市場が利上げ予想を前倒ししているのも確かであります。
有力議員らによる異例の発言
今月に入って河野デジタル相が日銀に利上げを要求したと伝わり、円買い要因の一つとなりました。同氏はその後の閣議後会見で政府による日銀への圧力と捉えかねない点について火消しに回ったが、今週に自民党の茂木敏充幹事長が「段階的な利上げの検討も含めて金融政策を正常化する方針をもっと明確に打ち出す必要がある」と述べたと伝わっています。自民党の次期総裁候補と言われる人たちの異例の発言は、輸入物価上昇の誘因とされる超低金利政策を続ける日銀への政治的不満が高まっていることや国民世論が円安対策として利上げを求めていることを示唆しています。
追加利上げ、円安阻止のいいタイミング
円安は日本経済にメリット・デメリット両方の影響を与えていますが、最近の歴史的な円安はデメリットの方が大きいです。「金融政策は為替対象としない」というのは正論でありますが、為替の過度な変動は金融政策の正常運営にも大きな影響を与えます。6月米消費者物価指数(CPI)の予想比下振れで米利下げ観測が高まり、ドル高・円安が一服している現在、日銀が基調的な物価データの上昇を根拠に7月会合で追加利上げと積極的な姿勢を示せば、円安を阻止するいいタイミングになる可能性があります。