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第41回 貿易収支と為替相場

為替相場の変動に短期的には経済、政治、地政学リスクなどいろいろな要因が絡んでいますが、中長期トレンドは実需が大きな影響を与えているとの認識が一般的です。その実需の変化に大きな役割を果たしているのが貿易収支です。

 

貿易収支

輸出額から輸入額を差し引いた額を表します。輸出額が輸入額を上回る輸出超過を貿易黒字、逆に輸入超過を貿易赤字といいます。貿易収支は内外の景気動向および外国為替相場の値動きで変動します。

 

貿易収支と為替

貿易収支が黒字の国は、外貨を自国通貨に交換する需要が高い(外貨売り・自国通貨買いが継続的に発生する)ため、一般にその通貨は高くなります。一方、貿易収支が赤字の国は、自国通貨を外貨に交換する需要が高いため、その通貨は安くなります。


また、貿易黒字が長期にわたって拡大し、大量の商品が貿易相手国に流れ込むと、相手国の産業に深刻な打撃を与えます。そのような場合、貿易黒字を縮小するため、輸出が好調な国に対する、通貨の引上げ要請が強まることがあります。1985年のプラザ合意による円レートの大幅な引上げや、最近では、中国の通貨・人民元の引上げ圧力などが良い例です。また、貿易黒字の拡大が続くと、貿易摩擦と通貨引上げ圧力を先取りした投機的な買いを呼び、通貨高が加速することもあります。

 

為替レート変化の貿易収支への影響

為替レートの変化は、輸出数量・輸入数量に影響を与えるが、この影響が現れるまでには時間がかかることが知られています。一般的に輸出や輸入の契約は取引の数ヶ月前に行われており、為替レートの変化は数量にすぐさま影響を与えません。つまり円安になっても輸出・輸入数量はすぐには変化しません。他方、輸入価格は上昇するので貿易収支は悪化します。しばらくすると為替レート変化後の相対価格で輸出・輸入契約を行うことになるので、貿易収支が徐々に改善していきます。

 

日本の貿易赤字

日本の1月貿易収支は3兆1818億円の赤字と、単月として比較可能な1979年以降で最大の赤字幅となりました。2022年の貿易収支がやはり過去最大の赤字を記録して大きな話題を呼びました。日本の貿易赤字は2年連続で、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰に円安が重なり、輸入額が大きく膨らみました。

 

かつて日本は「輸出大国」として巨額の貿易黒字を積み上げ、米国との間で激しい貿易摩擦が生じたこともありました。黒字を稼いだ自動車や電機は海外生産が進んだ一方で、2011年の東日本大震災を契機とした火力発電回帰でLNGや原油の輸入が急増し、資源価格と為替次第で貿易赤字が膨らむ苦しい環境に立たされています。

 

貿易赤字が円安加速の要因に

貿易赤字が続くと、円安に拍車をかける要因にもなります。

日本はエネルギーや食料品の多くを輸入に頼っていますが、その代金はドルでの支払いが中心です。つまり、円安が進めば進むほど、輸入代金を支払うためにより多くの円をドルに両替しなければなりません。円がよりたくさん市場に出ることになり、そのことがさらなる円安につながるのです。円安の時に輸入すれば貿易赤字になりやすいですが、円安そのものを加速させることにもなるのです。これは日本経済が今抱えている構造的な課題とも言えるので、どう向き合っていくか考えていかなければなりません。

この連載の一覧
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
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第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
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【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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