円キャリートレード
円キャリートレードとは、金利が低い円建てで資金を借り入れ、その円資金を外貨に換えて運用する取引です。この外貨資金を投資家は外国債券や外国株式、商品先物、海外不動産などで運用します。
この運用方法では投資商品の値動きだけではなく、借入れ通貨である円の金利と、投資通貨である外貨との金利差が収益に影響を与えます。
日本の金利が上昇・海外の金利が低下する場合には、借り入れコストが上昇する一方で、円高に傾きやすく、収益要因が減少するために円キャリートレードは減少します。逆に日本の金利が低下・海外の金利が上昇する場合には、借り入れコストが低下し円安にもなりやすく、円キャリートレードが増加します。
円キャリートレードの巻き戻し
円のキャリートレードを行なっていた投資家が、何らかの理由で取引を解消(反対売買)する必要に迫られることがあります。その時は外貨を円に換える必要があるので、為替市場では一時的に円高になる可能性があります。
円を借りて投資した商品(多くが日本以外の市場)を処分した後、外貨を一旦円に換えます。円金利に魅力がない場合でも、次の有力な投資先が見当たらなければ、円のまま保有することになるので、円売りにつながらず円の価値が高止まりしてしまうことがあります。
円キャリートレードが活発
円キャリートレードは2003-07年頃に活発に行われたことがあります。この時は、日銀がゼロ金利政策にしている一方、他の主要国では金利を引き上げていました。その金利差のため、円キャリートレードが多く行われ、当時の円安の一因にもなりました。
その後2010年代は日本だけではなく、世界的な低金利の時代となりました。また、多くの国が量的緩和も実施し、この時期には円キャリートレードはあまり行われませんでした。
2020年代に入り、コロナ対策の影響から世界的にインフレ高が進み、インフレ抑制のために各国が金利を大きく引き上げました。一方で、日銀は緩和策を継続し、金利差の拡大が進み、円キャリートレードが増えました。
円キャリートレードは終わりに近いか
これまで主要国の中銀が進めた積極的な利上げは終了し、今年は利下げに政策転換すると見込まれています。一方で、日銀はマイナス金利を解除し、金融政策の正常化を目指すと予想されており、好調だった外国為替戦略の一つである円キャリートレードは終わりが近づきつつあるとの認識が高まっています。主要中銀が金融政策の緩和に備えることから世界の利回りは急低下し、高利回り債が最も大幅に下がると予想され、そのプロセスにおいてキャリートレードのリターンが妨げられるとのことです。
円キャリートレードは増えるとの見方も
今年、米国が利下げに踏み切ったとしても利下げが限定的にとどまり、高金利を続ける可能性があります。一方で、日銀はマイナス金利を解除しても継続して利上げ体制に入ると判断するのは現時点では厳しいでしょう。この場合は、日米の金利差は大きく縮小する可能性は低く、円キャリートレードは増えつつある可能性があります。