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【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く

美人投票

 

為替市場の1日取引量は何兆円と非常に大きく、政府や中銀でも思うように為替レートを動かすことはできません。

前回、為替需要について説明しましたが、その為替需要や為替レートを決めるのは結局、市場参加者の多くの一致した意見や総意であります。つまり、ケインズの「美人投票」理論が為替相場の変動にも当てはまるということです。

「美時投票」とは、英国の有名な経済学者が玄人筋の行う投資は「100枚の写真の中から最も美人だと思う人に投票してもらい、最も投票が多かった人に投票した人達に賞品を与える新聞投票」に見立てることができるとし、この場合「投票者は自分自身が美人だと思う人へ投票するのではなく、平均的に美人だと思われる人へ投票するようになる」としたことです。

これを金融市場に当てはめると、基本的にはファンダメンタルズが反映され適正な値段として反映されるはずだが、その時々の投資対象に対する風評や先行きの期待感・失望感、あるいは需給関係などによって動く要素が多いです。すなわち、自分以外の多くの人々の人気投票の結果が価格であるという意味であります。

為替取引では、為替レートの先行きを当てるという賞品を得るためには、自分の考えを押し通すのではなく、ほかの多くの参加者(大勢力)がどのように考え、どのように行動するかを推測することが大事であることを意味します。

多くの参加者の動きが重要で、その参加者達が注目する内容や情報が非常に大きなポイントとなり、為替レートの「テーマ」であります。

 

テーマは時代とともに変わる

テーマはその時と場合によって大きく異なります。

●1970年代後半は米国の貿易収支が最大のテーマ

米国の貿易赤字拡大がドル安につながるとの見方が強かったです。それで、カーター米大統領は政策金利の引き上げや協調介入の強化などのドル防衛策を発表し、ドルが大きく買い戻されました。

●1980年代は米国の貿易赤字と財政赤字という「双子の赤字」がテーマ

1985年に先進5カ国 (G5) 蔵相・中央銀行総裁による為替レートの安定化を図る「プラザ合意」が行われました。主な合意内容は、各国の外国為替市場の協調介入によりドル高を是正し米国の貿易赤字を削減することで、米国の輸出競争力を高める狙いもありました。ドル円は230円台から「プラザ合意」1年後には150円台まで下落しました。

●1990年代は欧州、中南米、アジア、ロシアなどで通貨危機

1997年のアジア通貨危機は、タイの銀行破綻をきっかけに東南アジアや韓国の自国通貨が暴落しました。介入で外貨準備が底をつき、国際通貨基金(IMF)から資金の援助を受けました。

●2000年代に入り、各国の金融政策がテーマに

2008年リーマンショック後、米国が日本に先んじて量的金融緩和を積極化させ、2011年10月にドル円は過去最安値となる75.32円まで下落し増しました。

今年に入っては米国を筆頭に世界各国が金融引き締めを強める中、日銀は金融緩和策を維持し、ドル円は24年ぶりの高値となる145円手前まで上昇しています。

 

※同じテーマが半年-1年ぐらい続くと、市場参加者は別のテーマを探し出そうとします。別のテーマとして何が有力候補になるかを考えるのは為替レートの先行きを考える上で重要です。

この連載の一覧
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
【FX、やるならお得に】第22回 米国と結びつきが深い通貨(加ドル)
【FX、やるならお得に】第21回 資源国通貨(豪ドル)
【FX、やるならお得に】第20回 変動幅が大きい通貨(ポンド)
【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
【FX、やるならお得に】第18回 取引量が第2位の通貨(ユーロ)
【FX、やるならお得に】第17回 取引量が最も多い通貨(ドル)
【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
【FX、やるならお得に】第15回 順張り・逆張り
【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
【FX、やるならお得に】第9回 外国為替市場と為替レート
【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
【FX、やるならお得に】第6回 FX、利益を得る仕組み
【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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