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第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる

中国11月の経済指標結果

11月製造業PMI 50.3、前回 50.1

11月Caixin製造業PMI 51.5、前回 50.3

11月Caixinサービス部門PMI 51.5、前回 52.0

11月消費者物価指数(CPI、前年比)+0.2%、前回 +0.3%

11月生産者物価指数(PPI、前年比)-2.5%、前回 -2.9%

11月輸出(前年比)+6.7%、前回 +12.7%

11月輸入(前年比)-3.9%、前回 -2.3%

 

中国、内需の回復が鈍い

中国は11月製造業PMIが上昇するなど、中国政府の景気刺激策の一定効果が見られています。また、中国の民間不動産調査会社の中国指数研究院の発表によると、11月の中国国内100都市の新築住宅平均価格は前月比+0.36%と伸び率が前月から加速しています。まだ、2024 年の成長率は前年比+4.8%と「+5%前後」の成長目標の下限にとどまる見通しです。

 

中国政府が11月に発表した今後 5 年で 10 兆元の地方政府の隠れ債務を地方政府債務に置き換える政策を発表したが、市場では景気押し上げの効果は限定的であり、景気支援策を強化する必要があるとの見方が根強かったです。特に内需の回復が鈍くデフレ懸念が払しょくされず、トランプ氏の米大統領への返り咲きは中国経済に大きな懸念材料となるなか、9日の中国の中央政治局会議では2025年に「さらに積極的な財政政策と適度に緩和的な金融政策を実施する」と発表しました。これまでの「積極的な財政政策と金融政策」から表現を強めており、2011年以来の大幅なスタンス変更となります。市場は強力な財政拡大や大幅利下げを示唆しているとし、来月にトランプ次期米政権の発足を控え、米国との第2次貿易戦争に備えているとの見方が強まっています。

 

2025年は不動産市場の調整が続くなか、トランプ新政権の対中関税引き上げによる輸出下押しが見込まれ、中国の経済成長率は+4.2%程度に減速すると見込まれています。中国も対米追加関税で対抗、景気失速回避のため他国への輸出増やインフラ・製造業投資強化を図るとみられるが、トランプ政権の対中政策に左右され、先行き不透明性の高い状況が続きそうです。


トランプリスクの高まりが人民元の重し

来年、2025年は中国政府の5 年毎の経済運営方針である「第 14 次5カ年計画」の最終年となります。節目の年であり、当局は人民元相場も含めて「安定」が重要視されやすいですが、人民元相場にとってもトランプリスクが大きな上値圧迫要因となります。

 

第1次トランプ政権下の2018 年に実施された第 1-3 弾の対中関税賦課の前後には、人民元が対ドルで約6%下落しました。今回も、大幅な関税率引き上げが決定された場合、同程度の下落圧力がかかる可能性があります。2016年終盤から 2017 年にかけてドル安・人民元高が続いてきていたこともあり、当時の中国人民銀行(中央銀行)は輸出競争力低下の配慮からも人民元安を事実上容認しました。最近も中国当局が人民元安を容認するのではないかとの報道が出ていますが、当時に比べると現状では人民元安が進んでおり、人民銀は「人民元相場の安定」を重視し、過度な人民元安に至らないように介入姿勢を強化する可能性があります。

この連載の一覧
第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動
第123回 ポジションの管理
第122回 ドル円、160円台復帰はあるか
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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