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第132回 円と加ドル、IMMポジションの変化

IMMポジション

CFTC(全米先物取引委員会)は、各取引所にそれぞれの商品先物の建て玉の公表を義務付けています。各取引所は毎週火曜日の取引終了後の建て玉枚数をCFTCに報告し、CFTCはそれを集計して当該週の金曜日午後3時30分(米国東部時間)にホームページ上で公表しております。


ここで取り上げる円と加ドルは、シカゴのIMM(CMEの1部門)に上場されているものです。IMM通貨先物ポジションでは、ドルに対する各通貨のポジションが分かります。基本的に、持高が積み上がっている方向と為替レートには相関関係があります。為替の大きな方向性、特に投機筋の動向をチェックするのに向いています。

 

円ポジションの変化

2024年7月、161円まで米ドル高・円安が進んだ局面において、CFTC統計の投機筋のポジションで一際目立ったのは円売りの拡大でした。この頃、投機筋の円売り越しは過去最高規模の18万枚以上に拡大しています。2007年も円売り越しが18万枚以上に拡大した時がありましたが、ともに日米金利差拡大がメインテーマとなっています。

 

そして2024年7月末に日銀が追加利上げを決定した一方で、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月から利下げに踏み切りました。よって、9月に投機筋のポジションは円買い持ちに変化しました。ただ、11月の米大統領選挙でトランプ氏が勝利し、米長期金利の上昇とドル高が進み、円は再び売り越しとなりました。その後は日銀の追加利上げと米利下げペースに絡んでポジションは変化するも、2月1日に発表された1月28日時点の円のネット・ポジションは959枚のショートと売買が交錯しているのが分かります。

 ドル円週足

加ドルポジションの変化

CFTC統計の投機筋のポジションで円の次に大きな変化が見られたが加ドルです。加ドルのポジションは2024年2月ごろに売りと買いがほぼ拮抗していたが、徐々に売り越しが増えて、カナダ中銀(BOC)が利下げに踏み切った6月には14万枚超えとなり、追加利下げを実施した7月末には売り越しが20万枚弱まで増えました。9月にはFRBの利下げもあり、いったん売り越しが縮小するが、米大統領選で勝利したトランプ氏がカナダに対する関税を示唆し、再び拡大しました。


主要7カ国(G7)で一番積極的に利下げを実施しているBOCの姿勢とトランプ関税懸念で売り越しは再び18万枚超えまで拡大し、2月1日に発表された1月28日時点の加ドルのネット・ポジションは14万7601枚と依然として高い水準となっています。為替相場でドル/加ドルは今年に一時2003年以来の加ドル安水準となる1.47加ドル後半まで上昇しました。

 

トランプ米政権は1日、カナダとメキシコからの輸入品に25%の関税、中国からの輸入品に10%の追加関税を4日から課す大統領令に署名しまし、これに対しカナダは早速報復関税を示唆しました。ただ、その後はカナダとメキシコへの関税を1カ月延期すると発表し、加ドルに買い戻しが入っています。今後の交渉が注目されるが、米国の強硬策が米へのマイナス影響が懸念されることになれば、加ドルの買い戻しが一段と強まる可能性があります。また、BOCの利下げもいったん終盤戦に向かっている可能性もあることも、加ドル売りに一服感を強めそうです。

ドル/加ドル週足

この連載の一覧
第134回 リーダー不在のEU
第133回 各国中銀の利下げも、トランプ関税効果を薄めるか
第132回 円と加ドル、IMMポジションの変化
第131回 FX取引、投資詐欺に注意
第130回 FX、リスクも把握した上で取引を
第129回 トランプ氏VS中国
第128回 トランプトレードはいつまで続くか
第127回 ポジションの手仕舞い
第126回 今年最後の日米金融政策会合
第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動
第123回 ポジションの管理
第122回 ドル円、160円台復帰はあるか
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
【FX、やるならお得に】第22回 米国と結びつきが深い通貨(加ドル)
【FX、やるならお得に】第21回 資源国通貨(豪ドル)
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【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
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【FX、やるならお得に】第17回 取引量が最も多い通貨(ドル)
【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
【FX、やるならお得に】第15回 順張り・逆張り
【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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