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第101回 押し目買いの罠

「押し目買い」「戻り売り」

FX関連の概況とかを見ると、よく「押し目買い」や「戻り売り」などを目にするがあります。改めて「押し目買い」「戻り売り」が何かを説明すると、

押し買いは、上昇トレンド中に、一時的に下落したタイミングで買いを入れる方法です。その逆となる戻り売りは、下降トレンド中に一時的に上昇したタイミングで売りを入れる方法になります。手法としては同じなので、ここでは「押し目買い」を取り上げようと思います。

 

押し目買い、ポピュラーな手法

押し目買いは見かけも良く、実際投機筋が売買を執行する際に意表にポピュラーな手法であります。押し目買いの最大のメリットは、相場が一時的に下落した時点で購入すれば、適正価格よりかなり安く購入できて、再び上昇した際に売却すれば、大きな利益を得られる点です。 また、大局的に上昇トレンドが続く可能性が高いなかで買いでの参戦は売りから入るよりリスクは少ないと言えるでしょう。よって、FX取引の「王道手法」と言っている人も少なくありません。

 

しかし、当然デメリットも存在します。 押し目と見るべき局面の判断が難しく、判断を誤ると損失を被る可能性があります。

 

押し目買いの罠

・底値を捉えるのは難しい

上昇トレンドも一本調子でずっと右肩上がりで上がるわけではありません。相場は色々な思惑で動いており、利益確定売りや調整などで一時的に相場が下がるタイミングがあります。押し目買いはその一時的な下げを狙っているわけだが、その押し目買いのタイミングを見極めることが重要となります。

 

タイミングを見極めるには、一時下落を招いた材料の強弱の判断やチャートを見ながらのテクニカル分析などいろいろありますが、押し目買いのタイミングかどうか判断できない場合は、無理に買いを入れずに様子を見ることも大切になります。また、自分が買いを入れた時が底値と期待しないことも大事です。


・含み損を抱えるなかでの不安

底値を捉えるのは至難の業であり、ほとんどの場合はポジションを作った一定期間は含み損を抱えることになります。含み損を抱え、心理的な不安も出てくる可能性がありますが、上でも言及したように自分が執行した押し目買い水準がその調整局面の「底値のはずがない」という認識をしっかり持つべきことです。

 

自分が執行した押し目買いは一つのポイント水準であることをしっかりと認識すれば、その後もう一段の下げがあっても慌てることなく買い増しをするとか、冷静にストップ水準を決めるとかの判断ができます。

 

・トレンドが変った時は素直に損切り

調整局面と思って押し目買いを執行したのに、その場面が本当に調整局面なのかどうかを見極めるのはとても大事です。調整局面だと思ったのにその後の動きや分析で「トレンドが変った可能性が高い」との見方が強まった時は素直に損切りをすることは取引を継続するために絶対に必要なことです。

 

押し目待ちに押し目なし

「押し目待ちに押し目なし」とは、強い上昇相場でありながらも少しでも安く買いたいと思う人が、値が下がるのを待つ心理状態を表した言葉となります。押し目とは、上昇相場において一旦手仕舞いする売りに押されて値が下がる動きを意味するものです。そしてその後に再び上昇する前の一時的な下げという意味合いを持つものですが、非常に強い相場においては手仕舞いする人がいないために、この押し目と呼ばれる動きはなかなか見られないものです。

 

結局「押目待ちの押目なし」となり、相当高くなってから買うとか、あるいはついに買いを諦めざるを得ないことがあります。

この連載の一覧
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
【FX、やるならお得に】第22回 米国と結びつきが深い通貨(加ドル)
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【FX、やるならお得に】第20回 変動幅が大きい通貨(ポンド)
【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
【FX、やるならお得に】第18回 取引量が第2位の通貨(ユーロ)
【FX、やるならお得に】第17回 取引量が最も多い通貨(ドル)
【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
【FX、やるならお得に】第15回 順張り・逆張り
【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
【FX、やるならお得に】第9回 外国為替市場と為替レート
【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
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【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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