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第54回 FXトレードスタイル(1)

FXのトレードスタイルは様々です。テクニカル分析を頼る手法や、ファンダメンタルズを重視する手法、レンジ相場を狙う取引、トレンドに沿った取引、順張り・逆張りを得意とする取引などいろいろあります。当然ながらそれぞれメリットとデメリットがあり、一番良いトレードは「自分に合うスタイル」としか言いようがありません。自分に合った無理のないトレードスタイルを確立することも大切といえます。

 

取引時間で考えた場合、短期売買の代表的なトレードスタイルは「スキャルピング」と「デイトレード」があげられます。中長期売買の取引は「スイングトレード」や「ポジショントレード」などがあります。

 

スキャルピング

スキャルピングとは、1回の取引を数秒から数分までという短期間で取引を完了させるスタイルです。1回で狙う値幅が少ないので1日に何度も取引をし、小さな利益をコツコツと積み重ねます。

 

メリット:ポジションの保有時間は数秒-数分程度と短く、トレードの拘束時間が短縮され、仕事や日常生活の大きな邪魔にはなりません。空いている時間に集中してトレードを行うことができ、相場の変動幅が小さくてもコツコツと利益を上げることができます。資金の効率が良く、ポジションを翌日に持ち越さないので、深夜帯に相場が急変することを心配せず眠りにつくことができます。短期売買で価格変動リスクが抑えられ、精神的な負担が軽減されます。

 

デメリット:一度に大きな利益は期待できず、トレード中は相場に張り付く必要があります。短期間で取引を繰り返すので、スプレッド分のコストが大きく意識され、スプレッドが広いか狭いかが一つの大きなポイントとなります。

 

スキャルピングは短時間で何回も取引を繰り返すので、瞬時の判断力が必要な取引スタイルです。エントリーに躊躇すれば、機会損失を引き起こす可能性があります。また損切りができなければ、大きな損失を出す可能性もあります。エントリーや損切りなどを瞬時に行うのは、簡単そうで実は難しいものです。ある程度の取引経験を積み、精神的な強さも必要な取引スタイルといえます。

 

スキャルピングの注意点

 

利食いと損切りの判断を即時に

 

スキャルピングは新規注文・決済の判断を瞬時に行えるかどうかが大きなポイントとなります。チャートは1・3・5分足など短い時間足を参考に素早く取引を行い、できるだけ利益確定や損切りのタイミングを逃がさないのが大事です。値動きが早く躊躇しているとエントリーできなかったり予定外の損失を出したりする可能性があります。

 

まだ、取引の時間帯にも要注意です。特段の手がかりや突発的なニュースがなければ、わりと動きが鈍い東京市場でリスクを抑える取引をするか、それとも値動きが活発なロンドン市場やニューヨーク市場で効率よく利益を狙うかもしっかり考えないといけません。

 

スキャルピングのコスト

スキャルピングは何度も取引を繰り返し、取引コストを抑えられれば効率よく利益を得ることができますが、スプレッドが大きなコストとなります。また、値動きが早い時はスリッページが発生し、その分取引コストとなりますので要注意です。相場が大きく動く可能性がある指標発表やイベントの時はいったん手控えた方が良いでしょう。

 

自分の取引ルールを決め、しっかり守る

 

これはすべての取引に共通しますが、エントリー・利食い・損切りのポイントを決めるなど、自分の資金状況に照らし合わせてしっかりと取引ルールを決めて、尚且つこのルールを絶対守ることが重要です。取引ルールは後でもっと良いと思う方向で修正してもいいですが、修正する前は「決めたルールをしっかり守る」ことは大事です。

 

スキャルピングに向く、向かない人

 

短時間しか取引できない人、気持ちの切り替えが早い人、決断力がある人はスキャルピングに向いていると言えます。逆に集中力、判断力、決断力に自信がない人はスキャルピングを避けた方がいいかも知れません。

この連載の一覧
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
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第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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