米大統領選
今年の11月5日に行われる米大統領選は世界の注目が集まっています。また、当選大統領の政治方針や政策が株式・債券市場や為替などに大きな影響を与えるだけに選挙まで候補者の奮闘ぶりによって金融市場も神経質な動きとなります。
今年の米大統領選は共和党のトランプ前大統領VS民主党のバイデン現大統領の闘いとされ、世論調査では常にトランプ氏がややリードしていましたが、バイデン米大統領は7月21日に再選を断念し、選挙戦から撤退する考えを表明しました。
トランプ氏は共和党の候補に決定され、民主党はこれから候補者選びが行われますが、バイデン氏が支持するとしたハリス副大統領が有力視されています。ハリス氏は、民主党上院トップのシューマー院内総務と下院トップのジェフェリーズ院内総務や、クリントン・オバマ前大統領らが支持を表明するなど、民主党の結束を高めており、民主党の候補者指名を確実にしています。
トランプVSハリス
ハリス氏が最近、日に日にその影響力や知名度、支持率を高めており、最近の世論調査ではトランプ氏と互角か若干リードの結果が出ており、ハリス氏が新たな支持を獲得する兆候も見て取れます。特に無党派層の支持が増えているのは大きなポイントになりそうです。民主党の候補交代劇でトランプ氏陣営は不意を突かれた格好となりました。
民主党がハリス氏に候補を替えた効果は明らかで、激戦区や民主党の伝統的な支持層と関連しても期待を生む結果となり、支持率の改善が続いています。当然と言えば当然だが、黒人のハリス氏への黒人層の支持率アップは鮮明です。ハリス氏の支持率アップは反射効果によるものとの指摘もあり、長続きできるかどうかに疑問の声もあります。
副大統領候補の影響
トランプ氏が副大統領候補に選んだバンス氏がハリス氏を「子無し猫好き女」と呼び、多くの女性を敵に回しました。一方、民主党ではハリス氏がペンシルベニア州のシャピロ知事やアリゾナ州選出のケリー上院議員、ノースカロライナ州のクーパー知事のいずれかを副大統領候補に選ぶ可能性があり、彼らが副大統領候補に決まれば、激戦州でさらに支持が集まると期待されています。
ハリス氏の強みと弱み
ハリス氏の最大の強みは若さです。また、女性であること、黒人・アジア系(非白人)であることやサンフランシスコ市郡地方検事、カリフォルニア州司法長官という経歴も彼女の強みとなり得ます。
一方で、自らの政策についての考えを明確に打ち出せていないことが弱みです。今後、現在のバイデン政権の路線を多く引き継ぎながら自分の色を出してくると思われますが、中低所得者支援の姿勢を強める政策が期待されそうです。
すべては「ラスト3カ月」の勝負で、これまで約3年半に副大統領として実績に乏しいハリス氏が、11月までに自らの「成長」をアピールできるかがポイントになります。
トランプ氏、米国第一主義は変わらず
トランプ氏は2016年に米大統領選の時と米国第一の保護主義の基本路線は変わらず、国内の自動車産業やエネルギー産業を保護する方針を打ち出し、通商政策では、関税引き上げや対中政策強化が予想されます。また、外交政策については、ウクライナ紛争の停止、ウクライナ向け備蓄品費用の欧州への払い戻し請求など、米国第一の外交政策の復活を主張すると思われます。トランプ氏が当選すれば、物価高の再燃が警戒されます。
対中政策でハリス氏のこれまでの発言からははっきりしたものは見えず、反中でも親中でもない印象です。彼女のこれからの対中政策にも注目です。