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第52回 FX相場の軸足

FX取引のアプローチとして、為替相場の全体像を掴むことはとても重要です。全体像を把握し、「相場の軸足」をどこに置かれているかを見極めること、つまり現在と近い将来の相場動向で焦点やテーマになる、最もインパクトが強いイベントや材料の選別に力を入れることです。

 

そして、その材料に最も敏感な通貨ペアを選択し、「相場の軸足」にそって売買を仕掛けるという流れにつなげば、リスクを減らし利益を上げる確率をグンと高めることができます。

 

軸足を見極める必要性

なぜ相場の軸足を見極める必要があるかと言えば、それは軸足を定めることができれば自分が今後の取引でどういう風に売買を仕掛けていいのかが明確になってくるからです。注目のテーマは何か、市場の焦点はどこにあるのかも把握できない状況ではそもそもどの通貨ペアに売買を仕掛けていいのかもわかりません。

 

なので、市場の焦点やテーマを掴み切り、「相場の軸足」を見極めることはFX取引へのアプローチの重要なポイントとなります。

 

軸足を定める時のポイント

・圧倒的なドル相場

昔に比べてドルの影響力が落ちましたが、まだ「為替相場=ドル相場」という強い感覚が染み付いています。相場全体の動きにドルは圧倒的な影響力を持っており、ドル相場の変動に「相場の軸足」が置かれた局面ではわりと取引が仕掛けやすいです。ドル以外の通貨ペアを仕掛ける時もドルの変動要因を把握して置けば、プラス材料になります。

 

・投機筋の動き

為替市場の取引は投機勢による投機的な売買が大きな部分を示しています。よって、投機筋の売買動向が相場の動きや方向感に極めて重要な影響を与えています。投機筋の目的は、為替市場で思惑や相場観を基に投機的なポジションを保有し、大儲けを狙っており、そのポジション状況にも要注意です。

 

・軸足に影響を与えるイベントや材料

相場に大きな影響を与える、インパクトが強いイベントや市場の焦点が集まる材料などには要注意です。特に自分が定めた軸足に影響を与えそうな材料は見逃してはいけません。材料次第では決め込んでいた軸足の見直しを検討する必要もあります。

 

現在のFX取引の軸足

現在の為替相場の軸足は「金融政策」です。金融政策もいつも為替相場に大きな影響を与えていますが、インフレ対策として世界の中銀が引き締め姿勢を強めているこの1、2年は特にインパクトが強く、「政策相場」が続いています。

 

ドル円で見てみると、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げに踏み切った2022年3月から上昇トレンドを形成しました。ドル円は2022年2月の115円台から2022年10月には151.95円と1990年以来の高値を更新しました。その後は米引き締めサイクルの終焉・日銀の金融正常化観測でいったん調整の売りが入ったものの、金融政策の違いは変わらず、緩和策を継続する日銀との「金融政策の格差」からその流れは続いています。

 

いずれFRBは利上げを終了し利下げに転じ、日銀は長く続いている超緩和策を終了し金融政策の正常化に向かうとの見方が主なコンセンサスとなっていますが、この「いずれ」がいつになるかが問題です。世界の多くの中銀が頭を抱えているインフレ高が政策関係者らの予想通りに近いうちに収束に向かうかどうかがポイントになります。インフレ高が予想より長引けば、世界で高金利時代が続く可能性もあります。日米金融政策の格差が縮小し、ドル高・円安が変わるこの「いずれの日」を見極めることが大事です。

 

不透明なインフレ見通しと共にもう一つ注意しないといけないのは、各中銀の相次ぐ利上げによる経済への悪影響が徐々に深刻化することです。世界経済の鈍化が鮮明になると、株価の下落に伴いリスクオフの動きが強まる可能性があります。

この連載の一覧
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
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第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
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第60回 プロと素人
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第57回 外貨預金にも使えるFX取引
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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