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第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール

欧州連合(EU)

EUは欧州域内の経済的統合を目指して発展してきた欧州共同体(European Community:EC)を基礎に、1993年11月、「マーストリヒト条約」に従って創立されました。加盟国間の経済・通貨の統合、共通外交・安全保障政策の実施、欧州市民権の導入、司法・内務協力の発展等が創立目的として挙げられています。

 

EUの加盟国は27カ国あります。2016年6月23日、英国ではEU離脱の是非を問う国民投票で離脱が残留を上回り、国は2017年3月29日にEUに対して正式に離脱を通告し、2020年1月にEUと英国がそれぞれ離脱協定に署名し、同年2月1日より英国はEU加盟国でなくなりました。

 

EU加盟国のうち、ドイツ・フランス・イタリアなど11カ国が1999年にユーロを導入し、2010年代にバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、23年にはクロアチアが加盟し、ユーロ導入国は現在20カ国となっています。

 

欧州債務危機

2009年10月、ギリシャの政権交代によって、ギリシャの財政赤字がそれまで公表されていた数字よりもはるかに大きいことが明らかにされたことにありました。このギリシャ危機(ギリシャショック)によって生じた信用懸念がポルトガルやアイルランドに飛び火し、さらにはユーロ圏で一定の経済規模を誇るスペインやイタリアにまで波及し、ユーロが大きく下落しました。


最終的には、イタリアを除く4カ国が、EUとIMF(国際通貨基金)の金融支援を受けることになり、イタリアでも市場からの圧力で政権が崩壊するなど、欧州全体を揺るがす事態へと発展した出来事として金融市場に記憶されています。

 

欧州債務危機を背景に、欧州ではEU加盟国の合意で金融支援を目的としたEFSF(欧州金融安定基金)が2010年6月に設立され、その後、EFSFの業務を引き継ぐかたちで2012年12月にESM(欧州安定メカニズム)が始動するなど、欧州各国の安定化に向けた対応が行われました。

 

そして、2013年12月にアイルランド、2014年1月にスペイン、2014年5月にポルトガルがEUとIMFによる金融支援から脱却。その後、残るギリシャで緊縮財政策が盛り込まれた法案が可決し、追加融資によって財政危機が回避された2017年6月ごろに、欧州債務危機は一通り終息しました。


ユーロ圏、厳しい財政ルール

EUは、加盟国に対する財政規律要件として、

(1)予算年次ごとの財政赤字をGDP比3%以内に抑えること

(2)債務残高がGDP比60%を超えないことを定めています。


また、2007年後半からの金融危機を契機に財政規律を強化しました。債務残高がGDP比で60%を超える部分につき、毎年5%を削減し、債務残高を20年間でGDP比60%の水準に戻すことを求める債務残高削減基準を導入しました。


2020年3月以降は、新型コロナウイルス感染拡大を受けて、財政規律要件の適用を一時的に停止しました。現状では多くの加盟国の債務残高がGDP比で60~90%の水準にあり、一部の加盟国では150%を超えています。


こうした中で、欧州委は、加盟国への債務残高削減基準の一律適用は加盟国の財政政策に過剰な負担をかけるとともに、経済成長への悪影響が大きいとして、リスクに基づく監視枠組みの導入を提案しています。

 

財政規律の実施プロセスに関しては、加盟国は、欧州委が設定した道筋に基づき、財政政策や改革投資案を含む中期財政構造計画を策定します。欧州委は、加盟国が独自に同計画を策定することで、政策設計やその結果に関して加盟国の自律性を高めることができるとしています。加盟国は調整期間中、同計画に沿った国家予算の編成が求められ、原則として4年間は同計画を改定することはできません。


また、加盟国は同計画の実施状況を毎年報告することが求められ、国家予算が同計画で承認された歳出額を超えた場合、過剰財政赤字是正手続きが発動され、加盟国が効果的な是正措置を講じない場合は、財政上の制裁措置が科されます。

 

財政ルールの見直し

EUの安定成長協定では、加盟国に財政赤字が対国内総生産(GDP)比で3%を超えず、債務が対GDP比で60%を超えないことを求めています。しかし、新型コロナウイルス禍やエネルギー価格高騰への対応で大半の国が協定違反の状態となり、公平性を担保しつつも個別の国の事情を勘案する方向でルールの見直しが議論されています。EUは財政ルール改革の年内合意を目指していますが、現状では遅れる可能性があります。

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第93回 本間宗久が残した相場の極意
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第57回 外貨預金にも使えるFX取引
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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