尹韓国大統領、「非常戒厳」を宣言
韓国の尹大統領が12月3日深夜に突然「非常戒厳」を宣言し、世界を驚かせました。戒厳司令部(陸軍本部)が発令した布告令では、自由大韓民国の内部に暗躍している反国家勢力による大韓民国体制転覆の脅威から自由民主主義、国民の安全を守るために大韓民国全域に以下の事項を布告するとしました。内容は尹大統領の意図を呈しており、命令の趣旨は「反国家勢力による体制転覆の脅威から自由民主主義、国民の安全を守る」にあります。
韓国の戒厳は、「非常戒厳」と「警備戒厳」があり、今回宣言した「非常戒厳」は、「大統領が戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態時、敵と交戦事態にあるとか、社会秩序が極度に撹乱され、行政及び司法の機能の遂行が顕著に混乱した場合に軍事上の必要に基づくとか、公共の安寧秩序を維持するために宣布する」とされています。
なぜ「非常戒厳」を宣言?
北朝鮮がウクライナ戦争に参戦したことにより、朝鮮半島情勢が緊迫化しているが、非常戒厳を宣布する状況にあったとは言い難いです。尹大統領は、なぜそのような情勢判断に至ったのでしょうか。
今年4月の総選挙で与党が大敗して少数与党になりました。これまで国会は韓国政府発足以来22件の政府官僚弾劾訴追を発議しており、6月22代国会発足以降も10人目の弾劾を進めています。また、最新の世論調査で大統領の支持率は20%を切るところまで下落し、こうした状況の事態打開を狙った一手として尹大統領が時代錯誤の「非常戒厳」を宣言したとの見方が多いです。
「非常戒厳」、わずか6時間で解除
韓国の国会は3日深夜、在籍議員190人が急きょ集まり、非常戒厳解除要請案を全員一致で可決し、4日午前4時過ぎに尹大統領は戒厳法の規定に従い戒厳を解除しました。45年ぶりとなった戒厳は、わずか6時間で解除されることになりますた。突然の「非常戒厳」は、支持率低迷と国会対策の失敗を戒厳令で乗り切ろうとした尹政権と保守派の信頼を一段と失墜させることになりました。
韓国ウォンは一時暴落
非常戒厳の宣言をめぐり、外国為替市場では政治の混乱への懸念から韓国ウォンは一時暴落し、対ドルでは1440ウォン台と2022年10月以来およそ2年ぶりのウォン安水準となりました。また、リスク回避の円買いの動きも見られました。
4日の韓国の株式市場は、取り引き開始から自動車や半導体、鉄鋼など幅広い銘柄に売り注文が広がり、韓国の代表的な株価指数KOSPIは、前日の終値と比べて一時2.3%の大幅安となりました。
野党は大統領の弾劾議案提出
最大野党「共に民主党」など野党6党は4日午後、尹大統領の弾劾を求める議案を国会に提出しました。可決には国会の在籍議員300人のうち3分の2以上の賛成が必要となり、野党6党や無所属の議員192人の賛成に加えて与党議員8人の造反が出れば可決されます。同案を7日に採決に付す方針を決めました。
大統領が罷免されたら
尹氏が罷免されるか辞任した場合、60日以内に大統領選挙が実施されなければなりません。
2017年3月、裁判所は共謀疑惑をめぐる当時の朴槿恵大統領の弾劾を承認し、同年5月に選挙が行われ、朴元大統領はその後、別の刑事裁判を経て服役しました。また、2004年には当時の盧武鉉大統領に対する弾劾訴追案が可決されたが、裁判所は弾劾訴追を棄却し、盧氏は大統領の職務に復帰しました。