FX やるならお得に

第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動

尹韓国大統領、「非常戒厳」を宣言

韓国の尹大統領が12月3日深夜に突然「非常戒厳」を宣言し、世界を驚かせました。戒厳司令部(陸軍本部)が発令した布告令では、自由大韓民国の内部に暗躍している反国家勢力による大韓民国体制転覆の脅威から自由民主主義、国民の安全を守るために大韓民国全域に以下の事項を布告するとしました。内容は尹大統領の意図を呈しており、命令の趣旨は「反国家勢力による体制転覆の脅威から自由民主主義、国民の安全を守る」にあります。

 

韓国の戒厳は、「非常戒厳」と「警備戒厳」があり、今回宣言した「非常戒厳」は、「大統領が戦時・事変またはこれに準ずる国家非常事態時、敵と交戦事態にあるとか、社会秩序が極度に撹乱され、行政及び司法の機能の遂行が顕著に混乱した場合に軍事上の必要に基づくとか、公共の安寧秩序を維持するために宣布する」とされています。

 

なぜ「非常戒厳」を宣言?

北朝鮮がウクライナ戦争に参戦したことにより、朝鮮半島情勢が緊迫化しているが、非常戒厳を宣布する状況にあったとは言い難いです。尹大統領は、なぜそのような情勢判断に至ったのでしょうか。


今年4月の総選挙で与党が大敗して少数与党になりました。これまで国会は韓国政府発足以来22件の政府官僚弾劾訴追を発議しており、6月22代国会発足以降も10人目の弾劾を進めています。また、最新の世論調査で大統領の支持率は20%を切るところまで下落し、こうした状況の事態打開を狙った一手として尹大統領が時代錯誤の「非常戒厳」を宣言したとの見方が多いです。

 

「非常戒厳」、わずか6時間で解除

韓国の国会は3日深夜、在籍議員190人が急きょ集まり、非常戒厳解除要請案を全員一致で可決し、4日午前4時過ぎに尹大統領は戒厳法の規定に従い戒厳を解除しました。45年ぶりとなった戒厳は、わずか6時間で解除されることになりますた。突然の「非常戒厳」は、支持率低迷と国会対策の失敗を戒厳令で乗り切ろうとした尹政権と保守派の信頼を一段と失墜させることになりました。

 

韓国ウォンは一時暴落

非常戒厳の宣言をめぐり、外国為替市場では政治の混乱への懸念から韓国ウォンは一時暴落し、対ドルでは1440ウォン台と2022年10月以来およそ2年ぶりのウォン安水準となりました。また、リスク回避の円買いの動きも見られました。

 

4日の韓国の株式市場は、取り引き開始から自動車や半導体、鉄鋼など幅広い銘柄に売り注文が広がり、韓国の代表的な株価指数KOSPIは、前日の終値と比べて一時2.3%の大幅安となりました。

 

野党は大統領の弾劾議案提出

最大野党「共に民主党」など野党6党は4日午後、尹大統領の弾劾を求める議案を国会に提出しました。可決には国会の在籍議員300人のうち3分の2以上の賛成が必要となり、野党6党や無所属の議員192人の賛成に加えて与党議員8人の造反が出れば可決されます。同案を7日に採決に付す方針を決めました。

 

大統領が罷免されたら

尹氏が罷免されるか辞任した場合、60日以内に大統領選挙が実施されなければなりません。

 

2017年3月、裁判所は共謀疑惑をめぐる当時の朴槿恵大統領の弾劾を承認し、同年5月に選挙が行われ、朴元大統領はその後、別の刑事裁判を経て服役しました。また、2004年には当時の盧武鉉大統領に対する弾劾訴追案が可決されたが、裁判所は弾劾訴追を棄却し、盧氏は大統領の職務に復帰しました。

この連載の一覧
第125回 中国景気、改善傾向もトランプリスク高まる
第124回 尹韓国大統領の戒厳令騒動
第123回 ポジションの管理
第122回 ドル円、160円台復帰はあるか
第121回 AI・FX取引
第120回 FX取引はギャンブルなのか
第119回 FXの確定申告
第118回 元キャリートレードの復活に注意
第117回 ドル円 8/1以来の150円台
第116回 ポンド、雇用・物価データの見極め
第115回 中国、景気支援策を強化
第114回 自民党総裁選、サプライズの結果に
第113回 景気回復が鈍いままの中国経済
第112回 最近の円相場、スキャルピング手法が有利か
第111回 最近主要国の金融政策(4)
第110回 最近主要国の金融政策(3)
第109回 最近主要国の金融政策(2)
第108回 最近主要国の金融政策(1)
第107回 投機筋、2週間以内での勝負多い
第106回 トランプVSハリス
第105回 来週の日銀会合、利上げは?
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
第41回 貿易収支と為替相場
第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
第36回 インフレと為替
第35回 FX、最強の参加者は?
第34回 為替レートの安定は為替ディーラーに不利なのか?
第33回 FXの自動売買取引
第32回 注目度の高い米雇用統計
第31回 リスクオン・リスクオフ取引
第30回 注目度の高い経済指標
第29回 アフリカの人気通貨 南アフリカ・ランド
第28回 安全資産・逃避通貨のCHF
第27回 2023年の為替相場
【FX、やるならお得に】第26回 年末年始の取引に注意
【FX、やるならお得に】第25回 急落で魅力低下の高金利通貨(トルコリラ)
【FX、やるならお得に】第24回 多難も地位が上がりつつある通貨(人民元)
【FX、やるならお得に】第23回 NZドル、豪ドルに似た動き
【FX、やるならお得に】第22回 米国と結びつきが深い通貨(加ドル)
【FX、やるならお得に】第21回 資源国通貨(豪ドル)
【FX、やるならお得に】第20回 変動幅が大きい通貨(ポンド)
【FX、やるならお得に】第19回 取引量第3位(円)
【FX、やるならお得に】第18回 取引量が第2位の通貨(ユーロ)
【FX、やるならお得に】第17回 取引量が最も多い通貨(ドル)
【FX、やるならお得に】第16回 ファンダメンタルズ
【FX、やるならお得に】第15回 順張り・逆張り
【FX、やるならお得に】第14回 為替レートはテーマで動く
【FX、やるならお得に】第13回 為替の変動要因
【FX、やるならお得に】第12回 FXはゼロサムゲーム?
【FX、やるならお得に】第11回 FX取引の注文方法
【FX、やるならお得に】第10回 外国為替取引の中心はドル
【FX、やるならお得に】第9回 外国為替市場と為替レート
【FX、やるならお得に】第8回 FX取引で大事なこと
【FX、やるならお得に】第7回 スワップポイント
【FX、やるならお得に】第6回 FX、利益を得る仕組み
【FX、やるならお得に】第5回 買値、売値とスプレッド
【FX、やるならお得に】第4回 FXの「レバレッジ」
【FX、やるならお得に】第3回 まず「FX」のこと、ちゃんと理解しましょう
【FX、やるならお得に】第2回 そもそも為替って何?
【FX、やるならお得に】第1回 敵知らずして勝利なし!

為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

金 星の別の記事を読む

人気ランキング

人気ランキングを見る

連載

連載を見る

話題のタグ

公式SNSでも最新情報をお届けしております