円キャリートレードの解消の恩恵受けた人民元
7月末の日銀金融政策決定会合の結果や植田日銀総裁の会見を受けて円が急伸し、円キャリートレードの巻き戻しが話題になりました。円ショートポジションの解消は、円と同じく人民元を用いた資金調達のポジションが過去最大になっていることから人民元にも買い戻しが入り、「元キャリートレード」の解消も進みました。
ドル円 ドル/CNH
もっとも9月下旬に中国当局が一連の積極的な景気対策に踏み切り、景気期待の背景に人民元買いが見られ、オフショア市場で人民元(CNH)は対ドルで昨年5月以来の7元割れまでCNH高が進みました。
元キャリートレードの復活に注意
足もとでは中国の景気支援策が人民元の支えとなっているが、財政刺激策の具体的な規模やより詳しい内容は伝わっておらず、支援策が景気回復を後押しできないとの見方が強まれば、日米金利差を意識したドル買い・人民元売り圧力が強まる可能性があります。
変動幅制限の為替制度、元キャリーの温床に
中国人民銀行(中央銀行)が毎朝人民元の基準値を公表し、人民元の変動を基準値から上下2%の値動きしか許していません。中国当局は、人民元安を容認して輸出を後押しする一方で、通貨防衛にも神経を尖らせています。
キャリートレードにとって、相場変動によっては金利差を超える損失を回避するのは大きなポイントであり、人民元の変動制限は、メリットとなります。よって、人民元はキャリー取引の対象通貨としての魅力が高まっています。
元キャリーと円キャリーの違い
通常のキャリートレードでは、投資家は円やスイスフランといった低金利通貨で資金を借り入れ、高利回りの資産に投資します。投資先は大半が通貨だが、株式の信用取引に資金が使われることもあります。人民元キャリートレードも同様の仕組みだが、人民元は完全な兌換性がないため、制限があります。
人民元キャリートレードの大部分を占めるのは、ドルで現金をため込んでいる中国の輸出企業による取引です。次に、外国人が人民元を借りて中国本土に投資するパターンがあります。第3のパターンは、低金利のオフショア人民元を使ってドルや他通貨建ての債券に投資する取引です。
元キャリートレードの規模
人民元キャリートレードの規模を推計するのは困難だが、円の方が人民元より流動性が高く、円キャリートレードよりも規模は小さいです。
海外勢によるオンショア人民元債の保有高は22年末以降で9200億元(約1280億ドル)ほど増え、今年6月に過去最高を更新しました。これは「リバース人民元キャリートレード」が行われている証拠です。これは外国人投資家が為替ヘッジ付きのスワップ取引を介してドルを貸し出して人民元を借りた上で、人民元建て債に投資することで利益を稼ぐ取引を指します。