高金利通貨の代表
トルコリラ(TRY)はトルコの通貨です。トルコは若い人口が多く、将来にかけて労働力人口の増加が予想されます。また、地理的に欧州とアジアにまたがり、中東にも隣接した要衝にある新興国です。トルコリラの最大の魅力は、政策金利の高さです。南アフリカランド、ブラジルレアルなどと並ぶ高金利通貨のひとつとして知られ、より大きなインカムゲインを求める投資家から人気の高い通貨です。ただ、近年はトルコリラの急落により、その魅力が低下しています。金利の高さは、一方でインフレ率が高いということでもあり、そのコントロールのための金融政策の動向はトルコリラの値動きを考えるには欠かせません。
経常赤字国のトルコ
トルコは慢性的な経常赤字国であり、国内の資金需要を満たすために、外国からの資金流入に依存しています。そのため、先進国の金融政策の変化など、グローバルな資金流れに影響を与える要因によって、相場変動が大きくなる傾向があります。
他の新興国通貨と同じく取引量が少ないことから、短期的に相場が急激に変動することもあります。また、内政リスクや中東方面の混乱がトルコリラ相場に大きな影響を与えることもありますので、中東問題に関するニュースも注意深くウオッチする必要があります。
トルコの政策金利
トルコ経済の最大の問題はインフレです。11月の消費者物価指数(CPI)は前年比+84.39%と、猛烈なインフレ高が続いています。インフレ下では「モノ」の価値が高まるので、相対的に通貨価値の下落を招きます。そんな通貨価値の下落を回避するためには、利上げにより金利面の魅力を高めるというのが基本の政策ですが、エルドアン大統領が利上げに強く反対し、トルコリラは長期に渡り大幅下落しました。エルドアン大統領は中央銀行総裁の解任し、金融政策の変更に強権を行使し、中央銀行の独立性という意味で他国からの信用を失っています。
トルコ中銀は2021年9月会合から利下げを実施。当時の19.00%から今年の11月会合では9.00%まで引き下げられました。エルドアン大統領の目標にしていた「年内に金利が1桁まで下げる」ことを達成し、中銀は当面、追加の利下げを行わないことを明確にしています。
トルコリラ円の動き
2008年9月のリーマンショックを受けて、トルコリラの対円相場は90円台から50円台に急落しました。その後も米国との関係悪化でトルコリラの売りが継続し、2018年に15円台まで急落しました。エルドアン大統領が市場からの信認の厚いシムシェキ氏を財務相に再任せず、中央銀行総裁と副総裁を指名する権限を自身に与えたことなどから、金融政策への介入強化が不安視されたことも理由のひとつです。
その後は利上げや介入でいったん戻す場面がありましたが、2021年にはインフレが深刻化する中で利下げを行い、コロナ禍で経済悪化懸念が高まり、年末にかけては6円台まで急落しました。今年はドル円の急騰も支えに下げ渋るも、トルコ中銀が世界の中銀とは逆に利下げを続けてきたことが重しとなり、戻りは限られました。