スイスフラン(CHF)はスイスとリヒテンシュタイン公国、イタリアに属するカンピョーネ・ディターリアで用いられている通貨です。また、スイス領内に位置するドイツの飛地ビュージンゲンの非公式な通貨としても流通しています。
CHFの特徴
CHFは従来国際金融市場において、イギリス・ポンド、ドイツ・マルク、フランス・フランと並ぶ重要な通貨でありました。欧州連合(EU)統一通貨ユーロの誕生後はユーロ圏に浮いている存在となりましたが、今もなお国際社会における永世中立国スイスの地位により、「金(地金)よりも堅い」といわれるように、世界で最も安定した国際通貨として知られており、その重要性は変わっていません。
戦争などの有事や金融危機などの際には、円などと共に「安全資産」「避難通貨」とも呼ばれています。ドルへの信頼が揺らぎつつある現在では、有事の避難通貨として買われることが多くなってきています。外国為替市場における取引量は、ドル・ユーロ・円・ポンドに次ぐ取引規模を持っています。また、国際決済通貨のひとつであるため、自国の通貨が不安定な国家では、世界との貿易に、ドルに代わってCHFが使われることも多いです。
CHFは非常に低金利の通貨であり、大きな利益を出すことが難しいという特徴もありますが、その分リスクも低い通貨であり、豪ドルやNZドルと新興国通貨と組み合わせて取引する傾向があります。
CHFの変動要因
スイスは資源国でもなく、人口800万人程の小さな国であり、大きな値動きを見せることはあまりありません。ただ、近年はユーロのリスクヘッジを目的に買われることが多くなってきています。そのため、EU諸国の経済状況が急変した場合には、世界中の投資家がCHFの売買に注目を寄せる可能性があります。CHFが過度に買われると、スイス中央銀行(SNB)による「売り」の介入が行なわれることも過去にありました。
スイスフラン・ショック
2015年1月15日、SNBは2011年9月から1ユーロ=1.2スイスフランに設定していた対ユーロ上限を撤廃し、為替介入を廃止することを突然発表しました。これにより同日には一時1ユーロ=0.8517CHFの過去最高値を付け、ユーロに対して4割以上上昇しました。
このCHF暴騰に連鎖して、世界の株式市場の下落や外国為替証拠金取引の混乱が生じました。CHF円も当時、わずか数分の間に約53円の上昇から約30円の下落になるなど、相場が乱高下しました。
CHF取引のメリットとデメリット
メリットはやはりほかの通貨より落ち着いた動きであることや、有事の時に買われやすい通貨であることでしょう。デメリットは値動きが少なく、金利水準が低いことです。キャリートレードの際、ペアの通貨が乱高下している場合にはもちろん影響を受けますが、通常CHF自体は安定した取引を実現できる通貨です。
2022年のCHF
ドル/CHF
今年のドル/CHFは0.91CHF台でスタートし、1月につけた0.9092CHFを安値に米国とスイスの政策金利の格差からドル高・CHFが進み、10月には1.01CHF半ばまで上昇しました。ただ、11月に入り米引き締めペースが緩むとの見方からドル高に調整が入ったことを受けて、0.93CHF近辺までCHFの買い戻しが進み、方向感は限られました。
CHF円
今年は主要国が金融政策の引き締めを強める中、日銀は緩和策を維持し、円安が目立つ1年となり、CNH円は大幅に上昇しました。今年のCNH円は126円台でスタートし、9月には最高値の151円半ばまで上昇しました。ちなみに、CNH円の最安値は2000年9月につけた58.75円です。