円キャリートレード
円キャリー取引は「円借り取引」とも呼ばれ、円資金を借入れて相場商品や証券など一般には金融資産を保有し、一定期間後に資産を売却しその売却対価によって、資金を付利して返済し、差額により利益を得ようとすることであります。FXでは金利の高い通貨の買い・円売りでスワップポイントを狙う取引です。
円キャリートレードは依然活発
メキシコの選挙など新興国政治リスクで円キャリートレードの逆流が杞憂されたが、依然として円キャリートレードは人気です。今年に日銀の金融政策正常化が進むということで、円キャリートレードの巻き戻しを警戒する声も少なくなかったが、日本と海外との金利差は依然として大きく、外国為替市場で存在感が高い日本の個人投資家は円売りポジションを堅持しています。
日本の個人投資家は世界のFX取引のおよそ3割を占めるといわれています。円安・ドル高によってキャリートレードの魅力は増しており、過去1年間のトータルリターンは18%に達しています。当面は円キャリートレーダーと行き過ぎに見える円安進行に歯止めをかけようと躍起になっているとみられる日本当局との激しい攻防が続く可能性があります。
円キャリートレードは正念場
今週、米連邦公開市場委員会(FOMC)では年内の利下げ予想を3回から1回に修正され、日銀金融政策決定会合では政策金利を据え置きと国債購入の減額方針を決定しました。また、植田日銀総裁はデータ次第ではあるものの、「7月会合での利上げの可能性」を示唆しました。
米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げと日銀の追加利上げが今後のメインシナリオではあるが、どちらも不確実性が強いです。FRBの高い金利水準の長期化と日銀の追加利上げへの慎重さへの警戒感が根強く、円キャリートレードの活発化が続く可能性があります。ただ、FRBの利下げと日銀の追加利上げ観測が強まれば、円売りの勢いは鈍り、円キャリートレードの逆流が杞憂されます。円の先安観は根強いものの、円を取り巻く環境は不安定である点は意識しておきたいです。
金利差だけを目当てにすると大変
6月7日時点でFX業者が公表した、トルコリラ円の5月の1日当たりの平均スワップポイント(1万トルコリラの買い持ち)は3円-38円超と大きく差がついています。これはスワップポイントを売りにしている業者の戦略やトルコの不安定な金融環境などが背景にあります。
現時点でトルコの政策金利は50.0%であり、円との金利差は49.9%でもあり、トルコリラを買い持ちする場合、高い金利差を受け取れるわけです。この高いスワップポイントを売りに口座開設を歌うFX業者も少なくありませんが、政治・金融に不安定な新興国通貨の取引に安易に手を出すと大変なことになる可能性があります。
トルコリラ円は2015年1月に50円台だったのに今は4円台での取引になっており、10年弱でトルコリラの価値は10分の1以下に低下しています。つまり、2015年1月に1万トルコリラ円を買い持ち(トルコリラ買い・円売り)して現在に至ると、45万円以上の含み損が出るわけです。いくらスワップポイントが高いとはいえ、この含み損をカバーするには大きく及びません。高い金利だけを目当てに取引をすると大変なことになります。