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第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響

米SVBの経営破綻で金融システム不安が高まる

今週は銀行セクターの不安に振り回される一週間となりました。10日に米シリコンバレーバンク(SVB)が経営破綻したことを受けて金融システム不安への警戒感が高まり、13日週明け早朝から為替相場ではドル売りが先行しました。これに対し、米金融当局が月曜日の米金融市場が始まる前に、SVB預金者に対する全額アクセス可能と緊急融資プログラムの創設と迅速な対応を見せ、ダウ先物は大幅に買い戻され、ドル売りもいったん巻き戻されました。


ただ、ニューヨーク市場に入ると、米SVBに続きシグネチャー・バンクの経営破綻も確認されたことで金融システム不安が再燃し、複数の銀行株が記録的な大幅安に見舞われ、取引停止が続出するなど、業界全体に混乱が広がりました。


なお、15日にはスイス金融大手クレディ・スイス・グループを巡り、「筆頭株主のサウジ・ナショナル・バンクは追加投資をする意向がない」と報じられ、クレディ・スイスの経営不安が広がり、米金融セクターの波乱が欧州にも波及することへの懸念が高まりました。

 

SVB破綻はリーマンショック以来の最大規模

米SVBの経営破綻はリーマンショックが起きた2008年以来、最大規模だということでもあり、市場では米金融システムに対する疑心暗鬼が広がりました。市場では米当局が銀行システムを支えるため介入しても、今後も銀行破綻が増える可能性に警戒感が強まり、投資家のリスクオフ志向が高まりました。米株を中心に世界の株式市場は売りに押され、米中長期金利は急低下しました。

 

2行の米銀行破綻と米政府による預金者救済が、経済から米金利の見通しにまで、市場でさまざまな観測を呼んでいますが、その後は金融不安を強めるニュースは伝わらず、市場はいったん落ち着きを戻していますが、当面警戒感は続きそうです。

 

金融リスクを背景にドル円は軟調

米SVBの経営破綻による金融システム不安を背景に全般ドル売りが優勢となるなか、週明け早朝からリスクオフの円買いも見られ、ドル円は135円近辺から一時132円前半までドル売り・円買いが急速に進みました。米当局の迅速な対応でいったん買い戻しが入るも、シグネチャー・バンクの経営破綻が伝わると、ドル円は再び135円超え水準で上値が抑えられ、132円前半に売り込まれました。


また、クレディ・スイスの経営不安を受けて、16日は一時131円後半まで約1カ月ぶりの安値を更新しました。大手銀行の米地銀支援報道を背景にリスクオフの動きはいったん緩んだが、金融リスクへの不安は根強く、ドル円は神経質な動きながら下方向への警戒感は当面続きそうです。


米シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻やクレディ・スイスを巡る市場の混乱などを受けて、ドルや欧州通貨の魅力が後退し、円が再び安全資産と見なされつつある。足もとではリスクオン・オフでマーケットが動いており、当面は円が選好されやすい相場展開が続きそうだ。

 

米債利回り

今回の騒動で大きな値動きを見せたのは米債券市場です。特に米2年債利回りは13日一日で60bpを超える急低下と、歴史的な踏み上げ相場に遭遇しました。この異常事態になったのは、市場がパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の議会証言を受けて3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で0.50%の利上げを織り込んでいた矢先に、米SVBの経営破綻が市場に動揺を与え、FRBは利上げする場合ではないと3月会合での利上げ見送り思惑が急速に強まったことが要因となります。

 

今回の騒動とFRB

FRBは来週にFOMCを控えています。金融リスクへの懸念が台頭し、足もとでは来週の金利決定をめぐり、見通しは目まぐるしく変化しています。SVB破綻の一要因として、FRBが急速に引き締めを進めたとの見方があれば、コロナ禍であまりにも長く低金利政策を続けたとの説もあります。要因は定かではないが、今回の騒動でFRBの利上げ幅拡大や利上げペース長期化観測が後退したのは間違いありません。


来週のFOMCで米政策金利の織り込みは、0.50%利上げから金利据え置きを織り込みかけたところを経て、現時点では0.25%利上げを見込む状態となっています。


今週、欧州中央銀行(ECB)は0.50%の利上げに踏み切りました。クレディ・スイスの経営不安から利上げ幅を縮小する観測も出ていたが、根強いインフレを抑制するため、大幅利上げを継続することにしました。これを受けて、市場では来週のFOMCでの金利据え置き見通しが後退し、0.25%の利上げを実施する公算が大きくなりました。ECBが基本シナリオであった0.50%の利上げを実施したのは「計画の0.50%利上げ」と異なる決定を下せば、投資家にパニックを引き起こす可能性も警戒されたもようです。

 

リーマンショック

米国の住宅市場の悪化による住宅ローン問題がきっかけとなり、投資銀行であるリーマン・ブラザーズ・ホールディングスが2008年9月15日に経営破綻しました。これを連鎖的に1929年に起きた世界恐慌以来の世界的な大不況となりました。ちなみに、ドル円は2008年8月の110円半ばから同年12月には87円前半までドル安・円高が進みました。また、日経平均はリーマンショック発生から約1カ月で4割超の下落率を記録しました。

この連載の一覧
第104回 イベント・材料の認識から消化まで
第103回 経済指標の基本知識
第102回 勝つために情報本質の見極めは大事
第101回 押し目買いの罠
第100回 円安・円高の影響
第99回 円キャリートレードは正念場
第98回 ドル・ブル=ドル買いではない
第97回 ドル円 200円になったら
第96回 デイトレードの基本は順張り
第95回 ドル円、どこに向かうのか
第94回 FX、初心者に多い失敗例
第93回 本間宗久が残した相場の極意
第92回 基軸通貨のドル、強い
第91回 外国為替相場制度
第90回 米長期金利とドル円
第89回 RBNZ政策金利とNZドル円
第88回 日銀、利上げに踏み切るも円安
第87回 日本、「金利のある世界」に向かう
第86回 豪中銀と政策金利
第85回 トランプ氏の再選リスク
第84回 加中銀とその金融政策
第83回 英中銀とMPC
第82回 ECBと理事会
第81回 FRB 、FOMC
第80回 人民元の基準値
第79回 円キャリートレード
第78回 日銀、1月会合でマイナス金利解除を見送るか
第77回 ドル円 ゆく年くる年(2)
第76回 ドル円 ゆく年くる年(1)
第75回 ポジションの偏り
第74回 ユーロ圏、厳しい財政ルール
第73回 米国の双子の赤字、ドル相場への影響は?
第72回 日本の貿易収支
第71回 国際収支と為替(2)
第70回 国際収支と為替(1)
第69回 円買い介入警戒感が続く
第68回 FXにも山・谷がある
第67回 FX、時間軸視点も大切
第66回 PPPよりかなりの円安
第65回 購買力平価説
第64回 米大統領選とドル相場
第63回 円の実質実効為替レート、50年ぶりの低水準
第62回 実質実効為替レート、通貨の強弱が分かる
第61回 FX取引には時間・季節も影響
第60回 プロと素人
第59回 相場に入る・離れるタイミング
第58回 FX、成功する人・失敗する人
第57回 外貨預金にも使えるFX取引
第56回 FXトレードスタイル(3)
第55回 FXトレードスタイル(2)
第54回 FXトレードスタイル(1)
第53回 近年の相場の軸足
第52回 FX相場の軸足
【第51回 ドル・ユーロ・円、3大通貨に注目】
【第50回 FX、取り組みのタイミング】
【第49回 大局観下でのアプローチ】
【第48回】大局観、身につけよう
【第47回】FX取引の投資資金
第46回 相場と真摯に付き合う
第45回 金相場と為替
第44回 うわさで買って、事実で売る
第43回 原油相場と為替
第42回 金利差拡大ならお金は金利の高い国へ
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第40回 米国、なぜドル高にこだわるのか?
第39回 景気と為替相場
第38回 先物市場で投機筋の動きを把握
第37回 米SVB経営破綻の為替相場への影響
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為替情報部 アナリスト

金 星

中国出身。横浜国立大学大学院卒業後、国内商品先物会社に入社。 外国為替証拠金取引会社へ出向し、カバーディール業務に携わりながら市況サービスも担当。 2013年にDZHフィナンシャルリサーチに入社。

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