近年の社会情勢によって様々な企業が業績圧迫された一方で、業績好調になった企業もあります。「川崎汽船」はコンテナ船の需要の急騰し、「三井松島HD」は石炭の価格高騰によって異例の好業績を出しました。業績が好調だったことから2社ともに高配当を出している銘柄です。今後も長期保有株としておすすめの銘柄になるのか紹介していきたいと思います。
川崎汽船(9107)
川崎汽船株式会社は、日本郵船・商船三井に次ぐ大手海運会社で、主に貨物船を運航しています。東京証券取引所プライム市場に上場しており、日経平均株価構成銘柄の一つでもあります。1919年に川崎造船所の船舶部から独立して設立され、製品物流(コンテナ船や自動車船等)とエネルギー資源、ドライバルク等の事業をしています。海外にも数多くの拠点を設けておりグローバルに事業展開している会社です。
2023年8月現在の株価は約4700円になっています。2020年以降、感染症の影響でコンテナの需要が高まり海運市況は上昇していきましたが、2022年には反落してしまい約2000円まで下落しました。しかし、ハイテク株からの資金シフト等の影響で2023年6月に急騰し、8月には5000円を超える高値をつけました。
川崎汽船の利回り
配当金がもらえる基準日は3月と9月の年2回です。前期の9月の中間配当は300円、3月の期末配当も300円で年間600円となっていました。2022年10月以降に株式が3分割されたので、前期3月期末配当以降は株式分割後換算となり、実質1200円の配当でした。今期の中間配当は100円と予想されており、期末も同様の額となるため、年間200円の減配になる見込みです。
例えば1株4700円で100株購入した場合、投資資金は47万円ほど必要となり年間で受け取れる配当金は20000円になり、配当利回りは約4.25%になります。減配はしましたが、4%を超える高利回りな銘柄です。今後も1株利益が400円‐500円で横這いが続く見込みなので、1株200円の高配当が続くと予想されています。
川崎汽船の将来性
川崎汽船は、2017年から2021年まで株主への配当がないなど、株主還元に積極的ではありませんでした。ところが、2022年に株主還元の強化を始め、2022年は1株配当600円の実績を上げています。無配からの高配当というギャップが高評価を得たのも株価急騰の理由の一つとなりました。
今期予想では年間200円に減配したものの、高配当に値します。また、今後は自社株買いも毎年行う予定とのことで、株価の上昇に繋がる材料となりそうです。これから先も業績が安定し、高配当が続けば人気銘柄として期待できそうです。
三井松島HD(1518)
三井松島ホールディングス株式会社は、石炭の生産・販売事業を100年以上に渡り展開している会社です。近年では、世界的な脱炭素の風潮を背景に非石炭事業をメインにM&Aを推進し、飲料用資材や電子部品、ペットフード等幅広く事業を拡充しています。
2023年8月現在の株価は約2600円になっています。過去1年間の推移を見てみると、2022年10月にストップ安になり一時2235円の安値になりましたが、直ぐに3000円台まで回復し2023年2月に4105円の高値を付けました。それ以降は下降していき、現在は2500円から3000円の範囲で変動しています。
三井松島HDの株主優待
株主優待の内容は変更される可能性もありますが、3月の年1回の権利確定月になっています。100株以上保有している株主に、グループ会社のオーダースーツ専門店HANABISHI18店舗で利用できる商品優待券、グループ会社ケイエムティのプレミアムペットフード優待券、株式会社エムアンドエムサービスが運営する18施設等で利用できる施設優待割引券が保有株数によって贈呈されます。詳しくは下記のイラストをご覧ください。
商品ご優待券はスーツに限らず全ての商品にご利用できます。プレミアムペットフードご優待券は2500円相当の犬、猫用ペットフードの3つの商品の中から選べます。施設優待割引券は、株式会社エムアンドエムサービスが運営する18施設と三井港倶楽部、ラ・ロシェル3店舗で利用できます。
株主優待利用時の注意点
各株主優待には1年間の有効期限がありますので、期限内に利用しましょう。
三井松島HDの利回り
配当金がもらえる基準日は3月と9月の年2回です。前期は創業110周年の記念配当があり、9月の中間配当は80円(通常配当40円、記念配当40円)、3月の期末配当は240円(通常配当40円、記念配当200円)で年間320円となっていました。今期は通常配当のみに戻り、中間配当は40円と予想されており、期末も同様で年間80円になる見込みです。
例えば1株2600円で100株購入した場合、投資資金は26万円ほど必要となり年間で受け取れる配当金は8000円になるので、配当利回りは約3.07%になります。商品優待券10000円分、プレミアムペットフード2500円分、施設優待割引券6000円分を合わせた優待総額は18500円で、これによる優待利回りは7.11%になります。総利回りでは10.18%となり、10%を超える高利回りな銘柄です。
三井松島HDの将来性
石炭の価格が高騰したことで、前期が過去最高の660億円の売上利益になりました。今期は石炭価格が下がったことにより売上利益も110億円と下がりましたが、近年の数字と比較すると良い業績となっている印象です。
脱炭素として事業を進めているものの、売上利益は石炭生産が大幅に占めているので、石炭価格によって業績が左右される可能性が今後もありそうです。石炭事業に並ぶ中核事業ができれば利益も安定するので、石炭以外の事業の成長を見守りながら投資を考えるのも良いかもしれません。
まとめ
どちらの銘柄も、現在の社会情勢の影響によって業績が好調になっています。今後の社会の動きで下落する可能性もありますが、高配当と自社株買いで株主還元に積極的な川崎汽船と石炭事業に依存しないように事業を多角的に展開している三井松島HD、どちらの銘柄もこれからの伸び代が期待でき、長期保有に値すると思います。どの銘柄に投資するかは、市況の動きを見極めて慎重にタイミングを見て行いましょう。