花王(4452)は洗剤や化粧品などを扱う日用品メーカーを中心に事業を展開し、トイレタリー部門では日本シェア1位を獲得しています。また、連続増配としても知名度が高く、長期保有銘柄としても人気です。
しかし、足元の業績は悪化しており配当の原資となる営業利益は減少しており、2020年以降は大きく株価を下げていました。そこで本記事では花王の株価が下落した要因と、改善策・配当金の推移・将来性について解説します。
花王の株価が下落した2つの理由はとは?要因と背景を徹底解説
花王の株価がピークを記録したのは2019年頃であり、一時は一株9,000円を付けました。しかし、2020年以降は急速に株価が下落して一時は5,000円台で推移しています。
参照:Traging View
大きな要因としては「業績の悪化」要因です。2021年以降の売上高は堅調に推移していますが、以下グラフの通り営業利益は大幅に悪化しました。
画像引用元:マネックス証券
2020年以降は営業利益が減少し続けているため、株価も値下げ圧力が強く働いています。花王の営業利益が悪化した要因は、大きく分けると以下2つの通りです。
・コロナ禍による世界的な需要減少と大幅な売上減
・原材料高騰に伴う製造コスト増と利益率悪化
要因1:コロナ禍による売り上げの減少
2020年に発生した新型コロナウイルスの影響により、世界的に製品需要は大きく減少しました。その結果、2020年度における売上高は減少して、業績に影響を与えています。
コロナ禍で外出の機会が減り、マスク着用の推奨により化粧品部門を中心に業績が落ち込んだ結果、2020年度の売上高は前年から8%マイナスを記録しています。コロナ禍による売上高の減少は、2021年まで続きました。
要因2:原材料価格高騰に伴う製造コスト増と利益率悪化
2つ目の要因として業績にもっともインパクトを与えたのが、原材料価格の高騰による利益率の悪化が挙げられます。海外ではロシアウクライナ紛争やアフターコロナを背景とした急激な需要の増加により、エネルギーや原材料価格の高騰が見られました。
また2022年以降には日本と各国の中央銀行の金利差を背景に円安圧力が働き、輸入物価を引き上げる要因となっています。2024年に入りドル円ベースで一時160円を記録しており、現在も150円台で推移しているのも数年前と比べて円安が進んだ結果です。
そこで、花王の製造コストの増加により収益性はここ数年で悪化しており、2023年度の営業利益率は3.9%を記録しました。花王の扱う商品ラインナップには石油製品も多く、年々利益を圧迫した形です。
花王の業績改善へ向けた対策とは?
2020年以降の業績悪化を受け、花王は2021年から継続的な値上げを行い、収益率の改善を目指しています。2022年は商品の値上げが原材料価格の高騰に追いつかず、業績を悪化させていましたが、2023年度も継続的に値上げを実施しています。その結果、2023年度末の決算では原材料価格の上昇分を相殺できたと発表しました。
今後はさらに収益性の改善に向け、非効率部門を見直したうえで一部ブランド(ニャンとも清潔トイレ・茶カテキン「ヘルシア」)の譲渡すると発表しています。
画像引用元:2023年12月期 連結決算の概要|花王
花王の配当金の推移と権利確定日
直近5年間における一株あたりの配当金は、以下の通りです。
・2019年:130円
・2020年:140円
・2021年:144円
・2022年:148円
・2023年:150円
・2024年:152円(予想)
花王は34年連続で増配を続けており、2024年6月の中間配当は76円、12月の期末配当も76円で年間152円を支給する見込みです。
配当金が受け取れるのは「6月30日」と「12月31日」です。権利付最終日は、権利確定日の2営業日前で、この日までに買付すると配当金や株主優待などの株主権利を取得できます。
なお、2024年5月29日の株価は6,975円を記録しているため、配当金による利回りは約2.2%です。2022~2023年にかけて5,000円台前半を記録したときは3%近い利回りでしたが、投資するタイミングとしては旨みが少なくなった印象を受けます。
花王の株価急騰!その要因は海外ファンドの要請
業績の低迷が続いている花王ですが、2024年4月に株価が急騰を続けて現在は7,000円に迫る勢いを見せています。その要因としては香港の投資ファンドであるオアシス・マネジメントが、化粧品とスキンケアブランドの国際的な成長に重点を置くよう要請したことが挙げられます。
投資ファンドの見立てでは、化粧品部門のマーケティングが改善されれば、株価は1万円を超えるとの試算を打ち出しました。
画像引用元:事業分野|花王
花王の化粧品事業は全体の15.6%であり、マーケティング活動が上手くいけば売上高はさらに伸びるかもしれません。ただし、現状は海外展開がどこまで上手くいくか不透明であり、今後の業績を注意深く見守る必要がありそうです。