「投資先に医薬系の銘柄を選んでおけば、安心!」そんな言葉を聞かれたことはないでしょうか?一言で医薬系や医療系と言っても、様々な企業があり絞っていくのは一筋縄ではいかないものです。今回は長期保有におすすめと言われる2つの銘柄を紹介し、その価値があるのか解説していきたいと思います。
アステラス製薬(4503)
アステラス製薬は、日本国内では製薬会社のランキングで常に上位ポジションにおり、例年第2位から第3位の間で位置づけられています。2005年に山之内製薬と藤沢薬品工業が合併して設立され、特に高レベルの医療サービスが必要とされるスペシャリティケア領域やがん関連領域の医薬品を製造・販売しています。
主力製品は前立腺がん治療薬の「イクスタンジ」というもので、22年度は5300億円以上の売上をあげています。また国内だけでなく、海外市場へもバランスが取れた営業展開を行っている企業です
2023年6月現在の株価は約2200円になっています。今年の年初は約1900円でしたが、現在に至るまで約16%の株価上昇をみせています。前期の2022年は急落したタイミングもありましたが、上下変動を繰り返しながら、5月より株価を押し上げてきています。
アステラス製薬の株主優待
個人投資家にとってはささやかな楽しみである株主優待ですがアステラス製薬では行っていません。
アステラス製薬の利回り
配当金がもらえる基準日は3月と9月の年2回です。前期の2022年には9月の中間配当は30円、3月の期末配当も30円で年間60円となっていました。今期の中間配当は35円と予想されており、期末も同様で年間70円になる見込みになります。
例えば1株2200円で100株購入した場合、投資資金は22万円ほど必要となり年間で受け取れる配当金は7000円になります。株主優待制度はないので、配当金による利回りは約3.2%になります。
アステラス製薬の将来性
国内事業では、過去6年から10年の間、主力製品の特許が切れたことで国内の売上が下がっていました。しかしながら昨年より国内の収益が回復傾向となり、2023年3月期では予想を上回る収益(プラス48億円) の結果を残しています。
特にアステラス製薬は泌尿器科に強みを持っていますが、今後は眼科領域に展開すべく約8000億円で「アイベリック・バイオ」という会社を買収しています。これにより2027年に特許切れが控えている「イクスタンジ」ロスでの業績悪化を防ぐリスクヘッジが計られています。他にも新薬の研究開発が進められていますが、配当の面でもこのアステラス製薬は、過去10年以上連続で増配を繰り返している銘柄となります。
国内売上収益の下げ止まりと、新分野への展望、そして連続増配の面からも長期保有に値する株式の印象です。
大塚ホールディングス(4578)
大塚ホールディングス株式会社は大塚製薬を子会社に持ち、アステラス製薬と国内2位と3位を拮抗している徳島県発祥の大手製薬会社です。医薬品や栄養補給食品など幅広い製品を取り扱っており、特に「ポカリスエット」や「カロリーメイト」は、国内外で高い認知度を得ています。また観光で人気の大塚国際美術館(徳島県鳴門市)は、大塚グループが設立した施設になっています。
2023年6月現在の株価は約5400円になっています。今年の年初は約4000円台を推移していましたが、3月以降、急激に高騰し現在に至ります。新薬開発の遅延や特許切れが懸念される状況で一時的な下落が見られましたが、既存製品の販売も堅調であったことから株価は安定的に上昇を続け、現在では年初来高値を更新し続けています。
大塚ホールディングスの株主優待
株主優待の内容は変更される可能性もありますが、例年12月の年1回、権利確定月が設定されています。100株以上を保有している株主へ3000円相当の「自社グループ商品」が贈呈されます。中身は、オロナミンC 、ファイブミニ 、ポカリスエットなどが各1本、ソイジョイの各種が各1本、他にはボンカレー1箱など、嬉しい12種類以上の商品が送られてきます。
大塚ホールディングスの利回り
大塚ホールディングスでは、毎年6月末と12月末の年2回、配当が支払われます。前期の2022年の6月中間配当は50円、12月の期末配当も50円で年間100円でした。ここ数年間の配当は同額を維持しており、2023年の中間配当も50円、期末配当も50円で年間100円となる見通しです。
例えば1株5400円で100株購入した場合、投資資金は54万円ほど必要となります。配当利回りでは約1.9%となり、3000円分の優待を合わせると年間のリターンは約2.4%になります。
大塚ホールディングスの将来性
今期は売上高や利益ベースの点では、増収と増益の予想がされています。新薬開発で治験の有効性が確認されなかった事などが原因で、一時的な株価下落を起こしていましたが、現在は有効性が確認されたフェーズの開発が進んでいます。ただ2025年以降は現在、主力製品の4つの医薬品で特許切れを起こしてしまいます。この4製品だけで5000億から6000億円の売上減少が見込まれているため、現在研究開発中の新薬が実用化しこの売上分をカバーできるかがポイントとなります。
医薬品業界特有の不安要素もありますが、長期的に見ても売上高の推移や、海外展開の面で業績は安定しており、長期保有するには安心材料が揃っている印象になります。ただし現在の株価高騰で利回りが悪化している点は否めませんので、購入のタイミングは慎重になる必要があるかもしれません。
まとめ
今回は日本の大手医薬品メーカーの2銘柄を紹介しましたが、いかがだったでしょうか?医薬品業界は、他の業種と異なり”特許切れ”や”新薬開発”など、少し先の投資要素が見えることが特徴になっています。長期的な視点で投資計画を練ることができますので、配当の傾向や現在の株価のバランスを見ながら検討してみてはどうでしょうか?